時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

ディア・ドクター

2009-07-02 | 映画
山間の小さな村から
ひとりの医師が消えた



無医村だったこの村にやって来て
献身的な働きぶりで
村人たちから信頼されてきたその男
だが
警察が捜査を進める中で
誰も知らなかった
ある事実が浮かび上がってくる…



夏の終わり
山間の小さな村
普段は平凡な日々が
過ぎていくはずのこの村に
異変が起こっていた

診療所の医師・伊野が
いなくなってしまったのだ



村人たちが不安がる中
刑事の波多野と岡安が捜査に派遣されてくる
当初
波多野が田舎暮らしに嫌気がさして
トンズラしただけでは?
と高をくくっいた波多野と岡安



やがて見つかる
田んぼに脱ぎ捨てられた伊野の白衣
研修医の相馬は
そのそばの田んぼを
必死になって探し回っていた



その約2ヶ月前
相馬啓介は
真っ赤なオープンカーを走らせていた

東京の医大を卒業し
都会から遠く離れた神和田村で
研修をつとめることになったのだ

ところが
慣れない田舎道で
事故を起こしてしまった相馬は
気がつくと
診療所のベッドの上



目を覚ました相馬に
白衣を着た関西弁の中年男が
「伊野でございます」
と微笑む

これが
伊野と相馬の出会いだった



小さな診療所で
ひっきりなしに訪れる
老人たちの診察をし
連絡があれば
夜中であっても往診に駆け
独居老人の家を訪問し
健康チェックもおこなう

看護師の大竹朱美とふたりだけで
村の健康を一手に引き受ける伊野



村人たちは
伊野を心から信頼し
村長は無医村だったこの村に
伊野を連れてきたことが
なによりの自慢だ

最初は
都会とはあまりに違った生活に
戸惑っていた相馬も
伊野とともに診療をおこなう中で
村に馴染んでいき
伊野に心酔していく



そんなある日
村に住む鳥飼かづ子が倒れてしまった
駆けつけた伊野は診察をすると
暑さのせいだろうとあっさりと席を立つ
ところがその夜
伊野は
相馬や大竹に知らせず
ひとりだけでかづ子の家を訪ねた…

                「CINEMA TOPICS ONLINE」より引用



高齢化の進む
山村の医師不足をテーマにした
作品ではありますが

家族の絆・人間の尊厳
医師のあり方
人間の心理etc.
正と負の両方面を描いた
質の高い作品となっています



蘇生を試みる伊野に
『このまま死なせてくれ!』
と無言の視線を送る家族
その言葉にならない思いを
受け入れる伊野
ですが
この後のほくそ笑む展開があったり

娘に癌である事を
黙っていて欲しいという
鳥飼かづ子の思いを受け止めつつも
娘・りつ子が仕事を理由に
来年の今頃まで
田舎にはこれないと言う言葉に
伊野が取った行動…

内視鏡の写真や検査資料を渡す
プロパーの斎門正芳経由でりつ子に渡すよう指示
そして
田んぼを隔てかづ子と対峙した伊野が
目の前で白衣を脱ぎ捨て
逃げるように村から去っていく



伊野に
医師としての理想を投影し
個人病院を経営する父を非難する
研修医・相馬と
そんな相馬の言葉に
『俺は医者じゃないよ』
と呟く伊野…

ゴミ箱で見つけた
タケプロンやフェロミアの錠剤容器をみつけ
母親の症状を問うりつ子に対し
ガチンコで対応する伊野のやり取り
そして
それをじっと見守る看護師・大竹

どれもこれも
沢山心に響く印象的なシーンでした



伊野の正体を聞かされた村人たちは
一応には非難するも
捜査を進める刑事たちに
自分達の真意を語ろうとはしない
大竹さんや相馬くんもそう
特にかづ子さん…

ある朝
りつ子さんが勤務する病院に
入院しているかづ子さんの病室に
『おはよ~ございます』
と配膳係りがお茶を配りにやってくる

その配膳係りの声に
ふと顔を上げたかづ子さん
見る見るうちに
表情が明るくなって満面の笑みを浮かべます
あの菩薩のごとき笑みは

世間の一般常識やものさしでは
決して測ることの出来ない
その村での‘真意’があることを
物語っていました



看護士を大竹朱美を演じた余貴美子さん
プロパーの斎門正芳を演じた香川照之さん
伊野の命を託す鳥飼かづ子を演じた八千草薫さん
鳥飼かづ子の娘であり医師でもあるりつ子を演じた井川遥さん
地域医療に目覚める研修医を演じた瑛太さん
そして
綱渡り的な危うい診療を続ける医師・伊野治を演じた笑福亭鶴瓶
それぞれのキャラクターを
期待以上に魅力的に演じておられました

今年見た邦画では
この作品が
σ(^^;) のThe best oneかな~