庭戸を出でずして(Nature seldom hurries)

日々の出来事や思いつきを書き連ねています。訳文は基本的に管理人の拙訳。好みの選択は記事カテゴリーからどうぞ。

バカの話 その2

2019-05-29 20:39:00 | 海と風

塵積もりて山となる。まず小さな話から始め、少し大きめの話に続けようと思う。海や風の世界でも、余計なことで不愉快な思いをする人がなるべく少なくなるように、一つの記録として書き残しておきたい。

今治市・菊間の浜は、まだ別府の浜を知らなかった頃、35年前のウィンドサーフィンの時代から、石油コンビナートを挟んで東隣にある亀岡の浜が面白くない時など、たまに仲間と来ていた浜で、海の様子は良く知っている。真冬の大西風を狙い、細長いガンタイプの板で広島の柳井港近くの海岸から、瀬戸内海を突っ走って到着したのもこの浜だった。

昨年夏は一度カイトとの相性を見てみようと思ってフォイルで30分ほど走ってみた。北向きの浜はさして広くもなく、タンカー止めの柱が何本か目の前にある。風が南に振れたら別府以上にどうしようもない。使えないこともないがカイトには不向きだな・・・というのが私の感想だった。

その時、たまたま来ていたのが10年以上前から知るカイト好きの男で、車の置き場所について「ここは私有地で、自分は地元の住人を良く知っているから良いが・・・」などと言うので、「私はウィンドの時代からこの辺りに停めて何の問題もなかったがなぁ。何ならその所有者やらに一言挨拶しておこうか?」と尋ねると、「いや、道の端の方なら問題ない」・・・などと言葉を濁した。

どうやら歓迎されてないらしい。若干不愉快だったが、まあ人は誰でも一人になりたいことがある。彼も何かの事情で一人カイトを楽しみたいのだろう。私がこの浜にカイト関係で来ることはもうないだろうから、そっとしておいてやろう・・・などと思ったことがあった。

そして、昨年秋の別府海岸だ。西風微風の沖で落としたカイトで風に吹かれながら浜に付くと、しばらく見かけなかった先の男が私を待っていた。何かの手伝いにでも来たのかと親しく声をかけたら、ちょっとした世間話の後、いくぶん唐突に「菊間の海岸でカイトをやったか?先日、カイトの人間が浜を荒らしたと言って地元の住民が非常に怒っている」などということを言い始めた。

着岸したばかりで道具の処理に忙しいのに、うるさい奴だ。「海岸は公共の場所だ。誰でも自由に利用できるのが大原則で、カイトしたくらいで浜が荒れるわけはない。しかし、あんな所でカイトするのは君と私くらいしか居ないはずだし、私は君もいた夏の一度きりだ。それで、そのカイトの人は一体どういうことをしたの?」と聞くと、「よく知らないが、ともかく住民が怒っていて・・・中にはヤーさんみたいな人もいるから・・・」と言う。

彼の意図するところはすでに明白だった。要するに、近隣住人の取るに足りない言動に乗っかって、浜のカイト利用を独占したいわけだ。凡そ伸びやかで広々とした心を育む海のスポーツを楽しむ者には珍しいタイプの病気だろう。これは夏より症状が悪化している。ちょっとお灸を据えておくのも良いかもしれない。

「お前はチンピラバカか?それともチンピラの提灯持ちか!」と口に出かけたが、少し押さえて、「知らないことは知らないと言っておけば良いではないか。つまらんことで怒るのは人の勝手だが、筋の通らない怒りを私のような人間にぶつけると、ちょっとやっかいなことになるよ!」と強めに言うと、彼は「そういうことだから・・・」と逃げるように帰って行った。

当たり前のことだが、公道や河川などと同様、海岸は公共の財産であり、よほど正当な事由でもない限り「占有」はできない。だから海岸管理者(多くは地方公共団体の長)が占有許可を出すときは、公共の自由利用に充分な配慮をしなければならないし公示の必要もある。海岸に興味があって詳細を知りたい方は、関係法令をちょっと眺めてみるのも良いかもしれない。たぶん眠たくなるだろうけど・・・。

その後、彼が私の前に姿を現すことはない。(その3につづく)

コメント
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