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「建築家、走る」 隅研吾

2017-08-23 | 読書

2008年6月、ロンドン、リッツホテル前で。

ヨーロッパの大きい都市の旧市街は、建築様式が統一されている。新しく建ててもたぶん合わせるのだと思う。

日本人はそれがうらやましいが、様式がごちゃ混ぜの東アジアの大都市の、混沌の由来を考えるのも比較文化論になって面白いと思う。


新国立競技場のやり直しの設計案に選ばれたのがこの人。(突貫工事でもう始まっているらしい。現場のあまりのきつさに先日自殺者が出たのでは?痛ましいことである)

これは建築雑誌か何かに連載されたロングインタビューをまとめたものらしい。話題は多岐にわたるけれど、自伝的建築論という感じ。そして建築家の仕事の内容が私のような素人にもよくわかるようになっている。

大変に面白かった。この人の筆力は文壇デビュー作「10宅論」で楽しませていただいたけど、あちらが皮肉を交えた傍観者の立場としたら、こちらは建築のただなかで日々格闘するその奮闘ぶりが面白かった。

建築家って、自分の頭の中で考えたことに巨額の予算が付き、目の前に現れ、長い年月、人目にさらされて、表現者としてはとても満足感を得られる仕事だと思う。芸術、工学、歴史、文化、いろいろなことが複合した総合芸術。そして何よりも実用も兼ね備えてなければならない。すごいなあと思うばかり。

育った家はよく増改築する家庭で、子供も自分の案を出して話に参加する。期せずして建築家を養成する環境。そして小学校の時、代々木の国立競技場に足を一歩踏み入れた時の感動から、将来建築家になろうと決めたという。こういう話はいいなあと思う。建築の持つ力。

一つ怖かったのは自作のガラステーブルに右手をついたとたんガラスが割れ、骨が見えるほどの大けがをして手術をし、いまだに手が不自由だということ。

ガラステーブル、一時流行りましたけど、いくら強化ガラスとは言えガラスはガラス。まして自分で作ったテーブルなんて怖い。

事故は何処にあるか分からない。私も気を付けたいと思う。


 

何の脈絡もないけれど、1998年7月ころ、瓶ヶ森の登山道から石鎚を見る。

上山7時間、下山5時間の深い森。一番きつい登山だった。とはいえ、若かったなあと。

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