発症してから5日間自宅療養でほぼ一日中ベットの上で過ごした。食事は部屋ドアの前に
置かれて隔離されていた。40.5度の高熱でフラフラだったが意外と食欲は落ちずに、少し
は痩せられるかなと思ったけれど、1kgほど減っただけで期待したほどではなかった。
喪が明けて出社後の変化と言えば腰の痛みが酷くなった事。車を降りるのも少し注意が必
要なくらいに張りがでた。いつものように週中の休みが取れなかったので、今日休みをと
ってリハビリで近場を歩くことにした。
以前に『さぬき市合併10周年記念事業』として、東讃里山ボランティアガイドの人たち
が、さぬき市内の里山の30座を選んで、期間中に10・20・30座を回ると記念品が
もらえるというイベントがあった。その時期にはそういったイベントがある事を知らなか
ったが、それぞれの山の山頂には山名標識が設置されているのは以前から見かけていた。
後になってその30座を調べて見ると知らないうちに24座まで廻っているのが分かった。
そのうち30座を登ってみたいと思っていたので、今回いい機会なので近場でぐるっと周
回すると3座が回れる長尾の山を歩くことにした。
先ずはスタート地点になる東部溶融クリーンセンターへと車を走らせる途中で、カメラと
スマホを玄関に忘れて来たのに気づき引き返す。この辺りは独り歩きの里山歩きの気楽な
ところで、多少の時間のロスは気にならない。
クリーンセンターの手前にトイレのある駐車場に車を停め支度をしていると、近所の人だ
ろうか、年配のご夫婦のご主人に声を掛けられた。『どこまで行くんな?』と聞かれたの
で、『ここから南に登ってぐるっと一周してきます』と言うと、『それはそれはすごいな』
『イノシシも猿もよおけおるけん気をつけてな!』と言われた。
駐車場から南に背の高いクリーンセンターのエントツに向かって舗装路を歩いて行くと、
右手に再資源化センターの入り口がある、その脇を左に進んで行くとクリーンセンターを
回り込むようにして、センターの南側に着いた。ここから左に見えるフェンスに沿って登
って行く。
山を切り崩して造られたクリーンセンター。その切り崩した斜面に沿ってフェンスで囲わ
れている。これがなかなかの急登。しかも積もった落ち葉で登山靴のグリップも効かず、
滑るは滑る。場所によっては横のフェンスに掴まりながらよじ登って行く。
フェンスが終わり急登が終わると尾根に出た。ただホッとしたのもつかの間すぐにまた急
登が始まる。気温は10度を下回っていたけれどザックの下の背中が汗で濡れ始めた。
しばらくして立ち止まって上着を一枚脱ぐ。止まっているとやはり少し肌寒いが、歩き始
めるとまたすぐに汗が出る。道に花崗岩がゴロゴロし始めると標高が上がってきた証拠だ。
この周回コースは途中で何ヵ所か尾根が分かれているヶ所があるが、赤テープが結構な間
隔で付けられているので、都度確認しながら歩いて行けば迷うことは無い。
すると東のほうからズド~ンと大きな発砲音が聞こえてきた。『おいおい勘弁してくれよ』
今しがた脱いだ上着は黄色と緑の派手な色だったが、脱いだ下のシャッは地味な色。間違
っても撃たれはしないか。そう言えば昔大滝山を灰色の上着を着て歩いていた時に猟師さ
んに『そんな地味な色では間違って撃たれるぞ』と脅かされたのを思い出した。発砲音が
した方向は今から歩く方向だ。何となくイヤな感じがしたが、取りあえずこんぴら山まで
は歩いて行くことにした。
尾根道から小さなピークの様な場所に出た。すると広場の様な場所の中央に石積みの上を
何か木で蓋をしたように見えたので『井戸?』と思ったが、直ぐ横に倒れた祠があった。
石積みはその祠の台座だった。何年か前まではこの台座の上に祠が載っている写真がネッ
トにはアップされていた。
祠の南側にはこちらも傾いた鳥居と片方の石灯篭の笠も落ちていて、まったく人の手が入
らなくなってしまったようだ。この神社に参拝していたのは西側の星越の集落の人達だろ
うか、それとも東側の小倉の集落の方達だろうか?一応こんぴら神社とはなっているが、
その記述がネットで調べてみても全くない。
こんぴら神社から少し歩くと 四等三角点 星越 322.08m 今回のルート上にある二つ
の三角点の内のひとつ。花崗岩が風化した尾根を過ぎ、自然林の中を歩いて行くと今度は
尾根を境に左手が自然林、右側が植林の桧の林になった。
しばらくは快適な尾根道が続いて行く。先ほどと同じように尾根が二股に分かれる場所が
あるが赤テープを目印進んで行く。
スタートしてから1時間15分ほどで今日二つ目のYAMAPのポイントで、チャレンジ
30の内のひとつの羽細山に着いた。以前は素地の木の札に山名が書かれていたが、今は
黒く塗られた木の札に白い文字で山名が書かれている。羽細山からは右に続く尾根を進ん
で行く。
477mのピークが近づいてくると道には羊歯が現れる。尾根上にある石柱には寒川と彫
られている。
そしてピークの手前にはほぼ消えかかってはいるがつちが山と書かれた木札が掛けられて
いた。今度は造田・下高岡と彫られている石柱。寒川は境界杭としても、造田・下高岡は場
所も離れているし、何か別の意味がある石柱なのかな?
477mのピークからもテープを目印に進んで行くと、次第に尾根の灌木の背が低くなり、
南側が乾いた花崗土の斜面になり視界が広がった。左手には東女体山へと続く鉄塔が見え
西には多和方面が見えた。
更に進んで行くと尾根の南側に少し幅のある道があり、その道から尾根に上がると今度は北
側の眺望が開けた。先ほどの477mのピークの肩越しには五剣山。その手前には雲附山。
正面には霞んではいるが小豆島が随分近くに見える。
ここで小休止。水筒から熱いお湯を注いでインスタントのカフェオレを淹れ、菓子パンを頬
張る。県外の山では積雪の情報が入っているが、里山では今が紅葉のピークのようだ。
西を見ると前山ダムから続いている、県道3号線の大多和辺りの工事現場が見える。
行動食を口に入れカフェオレで喉を潤し次の592mのピークへと向かって行く。休憩場
所からは、小倉の集落から南側の長尾谷へと続く峠へと一旦下って行く。花崗岩が風化し
た斜面を下って行くと一本の白骨樹。落ち葉の積もった斜面よりはまだマシだが、それで
も足を滑らせないように注意深く下って行く。
すると峠の切通になった場所に出た。そこから北に少し下って、今度は東に谷筋へと取り
付いて行く。取付きから上流に砂防ダムがあったので、そのダムの作業道の様な道が続い
ていた。落石で荒れてはいたがその道を登って行くと砂防ダムの横に出た。
砂防ダムは既に土砂で埋まっていて、そのダムの上流へと歩いて行く。
この間も赤テープが木の幹に巻かれているので、それを目印に進んで行くと今度は谷筋か
ら、右手の斜面に取り付いて行く。ここからは兎に角急登。ストックだけではなかなか登
れず木の枝や幹を掴んで身体を持ち上げて行く。
この間が一番しんどく、鼻づまりもあってだが兎に角息が苦しく、10歩あるいて立ち止
まっては大きく深呼吸をしながら登って行く。峠からはわずか600mほどの距離だった
が40分以上かかってやっと592mのピークに着いた。今日のコースの最高地点だ。
ピークの手前で丁度12時のチャイムの音が聞こえてきた。このピークからはほぼ下り基
調。道は明瞭で登りで時間がかかった分を取り戻そうと少しスピードを上げる。
途中で一ヵ所間違えそうな尾根が二手に分かれている場所があった。丁度真ん中に黄色と
赤色のテープが木の幹に巻かれて注意喚起をしていた。間違わないように左の支尾根へと
進んで行く。ここからは大きな露岩が続いていく。
592mのピークから30分ほどで今日3座目の焼刈山に着いた。ここにも真新しい山名標
が掛けられていた。足元には 三等三角点 宇都見 444.75m。
焼刈山から少し下って行くと最後の露岩。そして今度は幅の広い明瞭な尾根道の下り。
ここまでの周回ルート、眺望はほとんどなく一ヵ所だけだったが、里山らしい植生と
花崗土と花崗岩の道で変化があって楽しめる。
最後はもう参る人のいない取り残された墓を右手に見ながら下って行くと、小倉の集落か
ら、門入ダムへと続く林道に飛び出した。
門入ダムと大窪寺への赤い標識の少し上手のカーブミラーのある場所からが、国見山への
取りつきになる。車が通れそうな山道を歩いて行くと目の前を1m以上はある黒い物体が
道を横切った。『ブヒー!』『イノシシだ!』。ここからはストックをカンカンと打ち鳴
らしながら、恐る恐る歩いて行く。
さらに進んで行くと少し広場になった場所の左奥にピンクのテープが見えた。ここから山
の中へと入って行く。カーブミラーの取付きからは10分ほどで国見山。
今日最後のピークとなる。YAMAPのポイントは4座。さぬき市チャレンジ30では
3座をゲットしたことになる。
時間は13時過ぎ。途中で行動食を摂ったがそろそろお腹が空いてきた。今日は弁当も持
たず、下山後にどこかでお昼にする予定だったので、さっそく国見山をあとにする。
しばらく下って行くと尾根の少し先にまた何やら物体が・・・・。『またもしかして?』
と思ったが、よくよく見て見ると青いジャンバーを着た老人だった。
近づいて少し話をすると『ここは初めて来たけど道が分かりづらい』と仰る。『どこか
ら来たん』と聞かれたので、『クリーンセンターの南からぐるっと回ってきました』と
答えた。あまり様子が分っていないようだったが『山頂は近い?』と聞かれたので、『
もうすぐそこですよ』と言って別れた。ザックも背をっていない様子だし、こんなマイナ
ーな山に独りで登ろうなんて・・・・と思いながら下って行くと、テープは所々にあるも
のの、確かに道はわかりづらかった。あの老人、地図もGPS(恐らく)も持たずによく
登って来たなと感心をする。
最後に杉林を抜けると小倉の集落の最上部に近い道に飛び出した。
ここからは舗装路を道なりに下って行く。途中で大きな楠の下に祠があり、その前の広場に
なった場所に車が数台停まっていた。先ほどの老人はここに車を停めて登って行ったのかも
しれない。広場の川を挟んで向かいの民家には、今はあまり見かけなくなったタバコの乾燥
小屋のベーハ小屋が残っていた。振り返ると先ほど歩いた592mのピークだろうか。
道筋に点在する民家。道の横を流れる川の水の音だけが聞こえてくる。
最後にクリーンセンターへと西に向かってひと山越える途中で、トラクターに乗って農作業
をするおじいちゃん、そしてその傍らで野焼きをするおばあちゃんの姿があった。まわりの
木々の色付きはピークだったが、この山間部の里ではそろそろ冬支度。秋の終わりを感じな
がら駐車場へと戻って行った。
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