里山悠々録

里山の家と暮らし、田んぼや畑、そして水墨画のことなどを記録していきます

おやこささぎ~蔓ありサヤインゲンが僅かに復活

2023年09月25日 | 畑:豆類

「おやこささぎ」は「おやこうこうささぎ」とも言われます。
これは当地方の方言で、一言で言うと「丸莢の蔓ありサヤインゲン」のことです。
さらに言うと「おやこ」あるいは「おやこうこう」だけで「丸莢の蔓ありサヤインゲン」です。
ちなみに蔓なしサヤインゲンは「手なしささぎ」です。
これは8月上旬のもの。


過日、野菜の様々な料理をはじめ興味ある投稿をされている野菜ソムリエのume724さんが山形の「長ささぎ」について投稿されていました。
「ささぎ」と言う言葉を初めて聞き、調べてみると山形ではいんげん豆全般を「ささぎ」と呼んでいることが分ったと書かれています。
当地方でも類似のことがあり、以前から少々記しておこうと思っていました。
そもそも当地方では、昔からインゲンと言う言葉を使ってきませんでした。
インゲンのことを「ささぎ」としか言ってこなかったのです。
「ささぎ」はササゲの方言と考えられます。
植物学的にはインゲンとササゲは違うとされますが、実際場面で区別するのは難しい。
特に我々より上の世代の方は、当地ではインゲンもササゲも全てが「ささぎ」です。
しかし、東京に出荷するのに「ささぎ」では意味が通じないのでインゲンが一般化してきました。
若い方ほどインゲンという言葉が浸透してきたので、今は逆に「ささぎ」が分らない人もいるでしょう。
インゲンでも未成熟の莢を食するのがサヤインゲン、成熟した豆を食すればインゲン豆となるでしょうか。
当地方では未成熟でも成熟でも「ささぎ」なのでますます分りにくい。
ところが、丸莢の蔓ありサヤインゲンのことは別に「おやこ」あるいは「おやこうこう」と言ってきました。
これも8月上旬のもの。


「おやこ」「おやこうこう」 は美味しいサヤインゲンの代名詞みたいなものです。平莢には使いません。
大昔からそう言われてきたのですが、謂われは分りません。
すでに両親なく、近隣にも詳しそうな人はいないので、以下は小生の推測です。
「おやこ」「おやこうこう」は多分親子、親孝行でしょう。
小生は普段「おやこ」ですが、助っ人はむしろ「おやこうこう」。母はどちらも言っていたような記憶があります。
親孝行が詰まって親子になった可能性もあるかもしれません。
何故そのように言うのかです。
サヤインゲンの莢は通常1カ所に2個着きます。微妙ながら大きさが僅かにずれがあります。これが親子ではないか。
蔓ありサヤインゲンのケンタッキーワンダー(尺五寸)は少しオーバーに言うと無限に蔓を伸ばし莢を着け続けます。(育ての)親孝行の極みではないか。
かつて仙台市場では「おやこ」でごく普通に通っていました。セリ人も当たり前のように「ハイ、おやこナンボ」で競っていました。
しかし、丸莢のサヤインゲンも製品になると蔓ありか蔓なしかの判別は難しい。
蔓ありか蔓なしは関係なく丸莢のサヤインゲンを「おやこ」で競ることもあったのではないでしょうか。
さすがに今は市場も世代交代が進んだと思うので「おやこ」も死語になりつつあるかもしれません。

ところで肝腎の我が家の「おやこ」、蔓ありサヤインゲンはと言うと8月半ばから全く穫れなくなりました
品種はカネコ種苗の「いちず」。
蔓なしから蔓ありへとスムーズに移行。8月上旬に一気に成り込みました。
しかし、続く莢や花が見えなくなり、花が咲いても殆ど莢が留まりません。
異常な高温、そして乾燥が半端でなかったためです。
特に8月は平均気温が平年を4℃余りも上回り、雨も殆ど振らなかったため全て落花。
お盆中に降った雨でも結局駄目でした。
この品種を半蔓性に分類することもあるらしいのですが、今年は蔓の摘芯を全くしていません。
そもそもこの「いちず」は集中的に成り込む特徴があるため長期の収穫は難しいと思っていました。
しかし、莢が留まらなかったためか、茎葉は思いのほか長持ちしています。
9月になって一転雨が多くなり、気温も多少下がって、少し復活してきたようです。


通常ならこちらの畝は終わっている頃です。


少々役に立つ程度に成っています。


こちらが1ヵ月ほどずらして播いている畝。


7月10日に種播き。
本来なら今頃盛んに穫れているはずですが。勢いがありません。
これが「いちず」。


こちらの方は比較的ましな方でした。
殆ど莢が留まりませんでしたが、ようやく姿が見えます。
これが「ケンタッキーカンサス」。


従来は主にこちらを作っていました。
事前の予想ではこちらの方が強いと思っていましたが逆。発芽も生育もハッキリ悪い。
せめて今咲いている花は留まってほしいもの。
辛うじて役に立つ程度に穫れています。助っ人が半分置いていきました。


後はピンチすることもなく放任します。少しは穫れるでしょう。
「おやこささぎ」については、調べたことはないものの当地だけでなく東北南部では共通点があるかも知れません。