初心者の老人です

75才になって初めてVISTAを始めました。

食堂の名人

2008年12月20日 15時38分52秒 | Weblog
 テレビで名人芸を披露する番組があります。
可愛い小学生の女の子が暗算するし、そろばんのうまいこもいます。

 新幹線も無事に開通して、東京オリンピック開会式はカラーで放送されて大成功、世の中は右肩上がりの成長期のころの話です。
 繁華街の中にあった、わが社は地上四階、地下一階でした。昼になると社員が集まるのは地下食堂で、A定食、B定食など種類も少なく、値段もきまっていました。
 手狭になった社屋を新しくすることになりました。
 新社屋は、周りが倉庫街の中にできました。
 新社屋の前は、未舗装で長雨が降ると、ガード下は水がたまり、靴を脱いで出勤するえらいところでした。近所の住人は別におどろきもせず水の中をぼやきながらあるいています。
 しかし、新社屋は大きくて広く、地下二階、地上八階のビル、地下にあった食堂は見晴らしの良い六階フロア全部になりました。
 食事のメニューも多彩になり、焼き魚、フライ物、小鉢ものや、煮しめ、思い思いトレーに乗せて、行列を作ってレジに並びます。レジには一人座っていて、目で計算しています。
 いつからか、計算のずばぬけて速いおばさんが座りました。目の前のトレーの合計を言いながら、後ろの人は△△△円、三番目の人は×××円など…。
 その人の計算のすごさに、社内ではもちろん、遠く東京のほうまで評判になりました。
 そのおばさんが、用事か風邪などで休んだら大変なことになります。
レジに若い賢そうな女の子が二人並んでも、列は大渋滞になり、誰も代役はいやがりました。
 一度、面と向かって暇なときにどうしてそんなに速いのかと、失礼ながら聞いたことがありました。別にどうてことないよ、とおばさんはいいます。

 新社屋の移転をきっかけに、社屋の周りに食堂や、うどんや、喫茶店などがいつの間にかできています。
 いつも社員食堂よりたまに雰囲気を変えてみようと、外食に出向きます。
 そのなかに大衆食堂がありました。焼き魚やおでんや、色々あります。味もまあまあでした。小鉢ものなどあれこれみつくろって、レジに行きますと、ニックネーム“はっちゃん”という女性がいます。合計六百円と言います。後ろの客もやはり六百円、つぎつぎと六百円。客は首を傾げます。
 だんだん周りで評判になって、ついにおやじさんが気がつきました。
おやじさんは、はっちゃんをレジから離して、厨房で働かせました。何事もなかったように、元気に働き続けました。
 おやじさんエライ。

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