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一輪車に挑戦 3. 意外な発見、 ぐい飲みの手と聴勁(ちょうけい)、兆しを感じ取る。

2015-02-13 20:53:28 | 圓功禅拳、古武術


およそ、伝統的な武術は、相手と接触した瞬間から、相手からの次の動きやその兆(きざ)しを聴くことができるようにならなければいけません。
太極拳、詠春拳、円功禅拳なども、相手と接触した瞬間から攻防が始まります。そして、相手からの兆しをいち早く察知した方が相手を制することになります。
この一連の動きを系統立てて説明して、手を取って教えてくださったのが大東流合気柔術の岡本眞師匠です。

一輪車の稽古は、師匠のおっしゃっていた深層筋、特に腸腰筋群を使いこなす稽古になるということで始めました。これができるようになると、一見同じような動きで相手を押したり引いたり、打撃をしているように見えますが、相手はその動きに逆らえなくなるという現象を起こすことが可能になります。人のもつ防御反応が裏目に出て、体が硬直して居付いてしまったり、腰やひざのチカラが抜けてしまってひざまついてしまったり、指一本で吹っ飛ばされてしまったりする現象が起こります。

一輪車の稽古は独りでフェンスなどに寄りかかって行う方法と、相方に支えてもらって行う方法があります。
この相方に補助になってもらう方法を行っている中で、相手の体からの兆しを聴く稽古が成立していることに気が付きました。これは大変素晴らしい副産物といえます。


相手とうまく繋がって、こちらのエネルギーを十分に伝えるためには、相手の腕をぎゅっと握りしめてしまってはそこで伝達が止ってしまいます。そして、そこからリキミが入るので、バランスを保てずに倒れてしまいます。そこで使われるの「ぐい飲みの手」という技術です。これは以前にお話した通りです。

参考記事です。
ぐい飲みの手①
ぐい飲みの手②
ぐい飲みの手③ 


にぎりはあくまでもふわりと柔かく保ちます。この場合、一輪車に乗った体のバランスが崩れて、そのぐい飲みの手のにぎりに圧力がかかった場合、写真の様にクシャリとにぎりが自然にひしゃげるくらい柔かく保ちます。
とにかく手首はやわらかいままでいることが重要です。


これは同じ「ぐい飲みの手」で、相手の手首をパクッと挟むように保持している状態です。見てのとおり、手首はやわらかく保たれています。




反対側から見たところです。


これは相手と繋がった状態です。この状態で一輪車の稽古が行われます。
これは岡本師匠のおっしゃる、相手とパラレルにつながった状態です。この場合のパラレルは、平行とか、並列という意味合いです。
相手とのつながりの中で、手と手、肩と肩、首と首、腰と腰、膝と膝が微妙にリンクしあった状態です。

この時、ぐい飲みの手で相手と繋がって、手首はやわらかく固まっていません。腕は肘も含めて完全に捨ててしまって、一切のチカラは入れていません。
こういう状態を作って初めて、相手と完全にパラレルに繋がった状態を作ることができます。

1.補助をする人は、相手の動きをよむことができます。「あ、一輪車に乗っている人は、肩が力んでるな、、お、、次は腰から崩れるぞ、バランスがいいが平常心が揺らいでいるな。」などと感じ取ることができるのです。

2.例えば「お、、相手の腰が崩れてきたぞ」と感じた時に、補助の人が自分の腰をうまく操作することによって、乗っている人の腰のバランスを引きもどしてあげることができたりします。
これが、武術の稽古として、意識的に相手とパラレルに繋がるようにして、膝や腰など自分の体のパーツを操作して、相手の同じ部分を制御する身体操作の稽古となることに気づきました。

3.一輪車に乗っている人は、とにかく重心を保ち、軸をしっかりと立てて、力まずに静止したやじろべえの状態を作ります。その状態のままそろりそろりとペダルをこぎます。このときに、補助の人との接点となっているぐい飲みの手を通して、自分の体内のアンバランスや心の焦りを補助の人に読まれないように、平常心と平衡を保つ訓練が、武術の稽古として活きてまいります。

このように、腸腰筋群を操作する稽古のために始めた一輪車が、期せずして、相手の体の中の動きや兆しを聴く稽古ともなりました。これは中国拳法で言う「聴勁」という技術の習得につながります。


一輪車にはまだまだ乗れるようになっていないのですが、うれしい副産物であります。
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