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元気がないときの漢方医学的な考え方 気虚(ききょ)を補う。

2019-12-26 10:45:44 | 東洋医学全般


漢方医学では、基本病態という考え方で、病が起きている体の状態を考察し、処方が決められます。
これに、陰陽、五行などの、東洋的な自然科学ともいうべき観点で人体を観察し、同時に現代医学の生理、病理、解剖的な観点から処方を決めたり、どの経絡やツボを選定するかを考察するのです。

ヒトはいつか死ぬるようにできております。生まれたての赤ちゃんは、どんどん成長して成人いたします。
そのあとは、少しずつ体が虚していって(弱ったり、気が不足したり、どこかが脆くなったり)いつかは終ります。
古典的な東洋医学は、この考え方から、どんな病気も赤ちゃんでさえも、その背景に「虚がなければ病気にはならない」という考えで出発しています。
東洋的な言い方をいたしますと、陰陽の複合体として観た人体の、陰に当たる部分や、臓器や、気血の弱いところを補って大本を回復させるようにして、、それでも収まらない陽的な症状がある場合はそれを対症療法として解決する。これを「陰主陽従」と表現しております。

西洋医学は、目に見える症状を止めることを目標に置いていますので、東洋的にみると、いわゆる陽的なものといいますか、根本ではないことを治療する医学です。よって、熱や痛みが止まったり、出ている症状は止まっても根治はできてないということになります。
しかし、目の前で死にそうになっている患者を救うことは東洋医学では不可能なことが多いのも事実です。この点では西洋医学は素晴らしい医学であるとおもいます。

体質改善と、根治を目指すのが東洋医学といえましょう。

簡単に、漢方薬を選ぶ時の基本病態は大きく分けて8種類といたします。
気虚(ききょ)、気滞(きたい)、気鬱(きうつ)、血虚(けっきょ)、瘀血(おけつ)、水湿(すいしつ)、裏寒(りかん)、実熱(じつねつ)の8種類です。

今回は気虚(ききょ)についてのお話です。
気血(きけつ)という言葉は単純に気と血のことではなく、東洋哲学的にみて、血を人体の見える部分ととらえ、気を見えないが存在するものとらえます。ここでは気は人体の「機能」と考えましょう。
この気の異常を気虚(ききょ)、気滞(きたい)として病態を把握いたします。

気虚は「元気がない」、「病的な弛緩やゆるみ」と考えてよろしいでしょう。人体のどこかの機能が弱っているという意味です。
先天的な要素もありますが、現代人の多くは後天的な要素、特にストレスや飲食物などで気虚をおこしていることが多いようです。

肺気虚と脾気虚が気虚として考察されます。
1.気というエネルギーを全身に巡らせる東洋的な意味合いでの肺の気の虚。(肺気虚)
少し動くと息切れをしてしまう。くよくよとネガティブなことを考えてしまう。などの症状が起きます。

2.飲食物からきちんとエネルギーを得るための臓器である東洋的な意味合いでの脾の気の虚。(脾気虚)
食欲不振、体のどこかが緩んで起こる、子宮脱、内臓下垂、消化不良、考え込みすぎてしまうなどの症状が起きます。

これらの気虚を補うために使われるのが、補気剤と呼ばれる漢方薬のグループです。
東洋的な意味合いでの肺や脾の気を補って
(肺臓や脾臓と表現しないのは、単に解剖的な臓器のことを指すのではなく、東洋的な広くて深い意味合いを表すためです。)

ここで出てくる漢方薬が気虚を補う作用の六君子湯(りっくんしとう)です。
薬用ニンジンが主となり、元気を回復し体内の水分を補う作用を発揮して気力を増します。
白朮、茯苓、甘草が消化吸収を助ける作用を増強いたします。
そして、陳皮と半夏が健胃作用と胃カタルや気管支カタルを治療予防する作用を発揮します。
「カタル」というのは粘膜の炎症で大量の粘液を分泌する状態を意味します。

これらの作用が結果的に脾虚、肺虚を主とする気虚の状態を補って、消化吸収をよくして元気が出てくるように仕向けるのが、六君子湯の作用です。
病名、症状名を列挙いたします。
元気がない、食欲不振、疲れやすい、貧血症で手足が冷えやすい、胃下垂、消化不良、不安感が強くみぞおちのあたりがつかえる感じがするなどです。

元気がないときは、レッドブルとかリポビタンとかの栄養剤でも一時的にはしのげます。
しかし、これは体の基本となるところが改善されていないので、やせ馬に鞭を打って働かせている状態です。いつか壊れてしまいます。
どうしても徹夜で仕上げなくてはならない仕事の時だけに頼りましょう。

今回の気虚についての考え方と、その漢方薬のお話をいたしました。
次回は、同じ気虚でも別の漢方薬を使用するお話をさせていただきたいと思います。




漢方アメリカOnline
http://www.kanpouamerica.com/

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