こんにちは。
販促経営コンサルタント、藤田です。
本日は2回目の投稿です。
このカテゴリーは基本的にフィクションです。
販促経営コンサルタントの本田というわたしの分身を登場させて、様々な経営再生の様子を描写していきます。
内容はフィクションですので、モデルそのものはありませんが、実際に自分が経験したことも混じっていますので、これを読むあなたにもずいぶんと参考になることが出てくると思います。
あなたの経営改善のヒントにご自由にお使いください。
(なお配信は原則毎週1回水曜日にと思っていますが、基本的にランダム配信です)
「ある地方商店街の小さな一歩」<その8>
「え、なんだ、そんなことかっ!」
集まった役員は全員がっかりした。
そんなことは言われなくても分ってる! という怒気が、説明を始めた本田にも、まともに伝わってきた。
しかしそれは想定内だったので、本田は慌てず、臆せずに話を進めた。
「いいですか。みなさんは今そんなことはとっくに分ってるって怒りましたよね。じゃあ聞きますが、あなたたちはそういう基本的なことを、個店としてきちんとやってきたのですか?」
「………」
「きちんとやってきたのなら、こんなことにはなっていないはずじゃないんですか?」
「………」
「まあみんな、一応本田さんの言うことを全部聞いてみようじゃないか。それから言いたいことを言い合おうよ」
理事長の田島が責任上、取りなした。
「いくら商店街全体の問題だからといっても、ひとつひとつの個店に魅力がなければ、いくら素晴らしいイベントをやって、そのときはいっぱいお客様がやって来ても、結局あなた方の固定客にはなっていないわけでしょう?」
本田は田島理事長の目配せを受けて、話を続けた。
もっと怒らせてやろうと思った。
「ですから今までやったイベントは結局無駄だったわけです。まあそれでお客様がそのときは喜んだんですから、無駄とは言い過ぎですけど、みなさんのお店の役にはあまり立たなかったわけです。にもかかわらず、相変わらずイベントに頼った集客では、一向に埒があかなかったわけです。違いますか。はっきりって、あなた方はかつてのよかったとき、たくさんものが売れたときのことが胸に残っていて、結局それに縛られてしまっているんじゃないでしょうか。あのときはよかった、あのときは飛ぶように売れた、あのときは、あのときは…………。まず認識をあらためて、今一度冷めた目で自分が所属している商店街、満天通り商店街を見てみてください。私は田島理事長に最初ここに連れてこられたときは、正直驚きました。もう無理だと思いました。ここを再生させるなんてことはどんなに資金を投入しても無理だなって感じました」
ここで一拍おくように、本田は口を閉じ、集まっている理事たちを見回した。
全員の口がねじ曲がっているように見えた。
「一番最悪だったのは、私は冷え性でトイレが近いので、こういったところに行くと最初に確認するのがトイレなんですね。ここ満天通り商店街でも確認しながら歩きました。でもどこにもないんです。公衆トイレさえないんです」
「町の駐車場にあるさ」
誰かがぼそっと呟いた。
「じゃあトイレに行きたくなったら駐車場まで戻れというんですか。不親切ですねえ。それじゃそれで帰ってしまいますよ。いいですか。これからはここも高齢者に向けた買物支援に取り組んでいくんでしょ。なのに、肝心のトイレがない。ハードさえ揃っていないのに、ソフトばかりじゃお客様にそっぽを向かれてしまいます。まずハードを充実させなければ」
「今からどこに、公衆トイレ作れってんだ」
「別に作れってひとことも言ってませんよ。ちゃんとあるじゃないですか」
「どこに?」
「みなさんのお店の中に。みなさんだって自分の店のトイレは利用しているんでしょ。だったらそのトイレを少しきれいにして、お客様にも気軽にお貸しするようにすればいいんですよ。そうしたら、トイレを借りにきたお客様とちょっとでもコミュニケーションがとれるじゃないですか。店の商品も見てもらえますよね」
「………」
「まずそういったところから始めないと駄目だと思いますよ。みなさんは活性化ということを考えると、すぐにイベントとかそういったソフト面を考えがちですが、もっと基本的なところのハード面とそれに伴うインフラが整備されていないので、そこから改善していった方が、私はいいんじゃないかと思います」
本田は続けた。
「まだあります。この商店街は歩行者用通路の幅が広いですよね。それに商店街そのものが長いようです。なのに、見たところちょっと休めるベンチが見当たらなかったですね。ベンチがあればお客様の滞留時間が少しは長くなります。別にお年寄りじゃなくても、ベンチがあればそこで休む人がけっこういるとは思うんですが。こういった基本的なハードがまだまだ不足していると思えませんか。みなさんが一度この商店街のお客様になった気で歩いてみてください。きっといろいろなハードが不足していることが分るはずです。それでも分らないという人ははっきり言って商売人失格でしょうね」
商売人失格とまで本田に言われた数人の理事たちは立ち上がり、怒りに本田に向けた指先をふるわせながら、怒鳴った。
「何言ってやがるっ! お前なんかの口先三寸野郎に、俺たちの商売の苦労が分ってたまるか、馬鹿やろう!」
本田はしゃあしゃあと答えた。
「そうですよ。私は商売人のあなたのこと何か分りませんよ」
「帰れ! 馬鹿やろう! 理事長、こんな奴に金を払う必要なないぞ!」
「あなた本気でそれを言ってるんですか? 私はお客様としてあなた方に申し上げてるんですよ。それがお客様に対する態度ですか? お客様はみんなそう思ってるんですよ。あなたみたいな人が商売をしているから、お客様は敬遠するんですよ。それが分らないですか」
「言わせておきゃ、勝手なことばっかりぬかしやがって!」
本田も少し口調を荒げた。
「以前私がまだ広告会社に勤めていたときに、あるスーパーマーケットの販促をしていました。そのスーパーの社長の言い草が“このど素人が”でした。企画を提出しても、お前たちは商売が分っていない、このど素人がって。でもね、商品を買うのはそのど素人なんですよ。お客様は商売のど素人ですけど、消費のプロですよ。あなた方よりももっともっとシビアな消費のプロですよ。今あなたが私に、商売の何が分るんだっていいましたけど、お客さんが商品を買うとき、商売のことなんか考えませんよ。自分のことを考えているんです。あなたは逆に消費者の何が分ってるんですか? お客様の何が分ってるんですか? この際言わせてもらいますけど、分っていたらもっと繁盛しているんじゃないですか? こんなに寂れてることもないんじゃないですか? そういうことなんです。わかります?」
場内が静かになった。
そうして一人の理事が、おもむろに立ち上がった。
つづく
<9>へつづく。
(このストーリーは、リアル体験を元にしたフィクションです)
それでは今日はこれで。
あなたの一日が今日もいい一日でありますように。
藤田販促計画事務所、お客様力(ぢから)プロデューサの藤田でした。
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藤田販促計画事務所
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TEL.027-261-6671(FAX.同様)
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「え、なんだ、そんなことかっ!」
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そんなことは言われなくても分ってる! という怒気が、説明を始めた本田にも、まともに伝わってきた。
しかしそれは想定内だったので、本田は慌てず、臆せずに話を進めた。
「いいですか。みなさんは今そんなことはとっくに分ってるって怒りましたよね。じゃあ聞きますが、あなたたちはそういう基本的なことを、個店としてきちんとやってきたのですか?」
「………」
「きちんとやってきたのなら、こんなことにはなっていないはずじゃないんですか?」
「………」
「まあみんな、一応本田さんの言うことを全部聞いてみようじゃないか。それから言いたいことを言い合おうよ」
理事長の田島が責任上、取りなした。
「いくら商店街全体の問題だからといっても、ひとつひとつの個店に魅力がなければ、いくら素晴らしいイベントをやって、そのときはいっぱいお客様がやって来ても、結局あなた方の固定客にはなっていないわけでしょう?」
本田は田島理事長の目配せを受けて、話を続けた。
もっと怒らせてやろうと思った。
「ですから今までやったイベントは結局無駄だったわけです。まあそれでお客様がそのときは喜んだんですから、無駄とは言い過ぎですけど、みなさんのお店の役にはあまり立たなかったわけです。にもかかわらず、相変わらずイベントに頼った集客では、一向に埒があかなかったわけです。違いますか。はっきりって、あなた方はかつてのよかったとき、たくさんものが売れたときのことが胸に残っていて、結局それに縛られてしまっているんじゃないでしょうか。あのときはよかった、あのときは飛ぶように売れた、あのときは、あのときは…………。まず認識をあらためて、今一度冷めた目で自分が所属している商店街、満天通り商店街を見てみてください。私は田島理事長に最初ここに連れてこられたときは、正直驚きました。もう無理だと思いました。ここを再生させるなんてことはどんなに資金を投入しても無理だなって感じました」
ここで一拍おくように、本田は口を閉じ、集まっている理事たちを見回した。
全員の口がねじ曲がっているように見えた。
「一番最悪だったのは、私は冷え性でトイレが近いので、こういったところに行くと最初に確認するのがトイレなんですね。ここ満天通り商店街でも確認しながら歩きました。でもどこにもないんです。公衆トイレさえないんです」
「町の駐車場にあるさ」
誰かがぼそっと呟いた。
「じゃあトイレに行きたくなったら駐車場まで戻れというんですか。不親切ですねえ。それじゃそれで帰ってしまいますよ。いいですか。これからはここも高齢者に向けた買物支援に取り組んでいくんでしょ。なのに、肝心のトイレがない。ハードさえ揃っていないのに、ソフトばかりじゃお客様にそっぽを向かれてしまいます。まずハードを充実させなければ」
「今からどこに、公衆トイレ作れってんだ」
「別に作れってひとことも言ってませんよ。ちゃんとあるじゃないですか」
「どこに?」
「みなさんのお店の中に。みなさんだって自分の店のトイレは利用しているんでしょ。だったらそのトイレを少しきれいにして、お客様にも気軽にお貸しするようにすればいいんですよ。そうしたら、トイレを借りにきたお客様とちょっとでもコミュニケーションがとれるじゃないですか。店の商品も見てもらえますよね」
「………」
「まずそういったところから始めないと駄目だと思いますよ。みなさんは活性化ということを考えると、すぐにイベントとかそういったソフト面を考えがちですが、もっと基本的なところのハード面とそれに伴うインフラが整備されていないので、そこから改善していった方が、私はいいんじゃないかと思います」
本田は続けた。
「まだあります。この商店街は歩行者用通路の幅が広いですよね。それに商店街そのものが長いようです。なのに、見たところちょっと休めるベンチが見当たらなかったですね。ベンチがあればお客様の滞留時間が少しは長くなります。別にお年寄りじゃなくても、ベンチがあればそこで休む人がけっこういるとは思うんですが。こういった基本的なハードがまだまだ不足していると思えませんか。みなさんが一度この商店街のお客様になった気で歩いてみてください。きっといろいろなハードが不足していることが分るはずです。それでも分らないという人ははっきり言って商売人失格でしょうね」
商売人失格とまで本田に言われた数人の理事たちは立ち上がり、怒りに本田に向けた指先をふるわせながら、怒鳴った。
「何言ってやがるっ! お前なんかの口先三寸野郎に、俺たちの商売の苦労が分ってたまるか、馬鹿やろう!」
本田はしゃあしゃあと答えた。
「そうですよ。私は商売人のあなたのこと何か分りませんよ」
「帰れ! 馬鹿やろう! 理事長、こんな奴に金を払う必要なないぞ!」
「あなた本気でそれを言ってるんですか? 私はお客様としてあなた方に申し上げてるんですよ。それがお客様に対する態度ですか? お客様はみんなそう思ってるんですよ。あなたみたいな人が商売をしているから、お客様は敬遠するんですよ。それが分らないですか」
「言わせておきゃ、勝手なことばっかりぬかしやがって!」
本田も少し口調を荒げた。
「以前私がまだ広告会社に勤めていたときに、あるスーパーマーケットの販促をしていました。そのスーパーの社長の言い草が“このど素人が”でした。企画を提出しても、お前たちは商売が分っていない、このど素人がって。でもね、商品を買うのはそのど素人なんですよ。お客様は商売のど素人ですけど、消費のプロですよ。あなた方よりももっともっとシビアな消費のプロですよ。今あなたが私に、商売の何が分るんだっていいましたけど、お客さんが商品を買うとき、商売のことなんか考えませんよ。自分のことを考えているんです。あなたは逆に消費者の何が分ってるんですか? お客様の何が分ってるんですか? この際言わせてもらいますけど、分っていたらもっと繁盛しているんじゃないですか? こんなに寂れてることもないんじゃないですか? そういうことなんです。わかります?」
場内が静かになった。
そうして一人の理事が、おもむろに立ち上がった。
つづく
<9>へつづく。
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