ごっとさんのブログ

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   薬と猫と時々時事

精子の数が現代男性は祖父世代の半分以下に

2024-07-15 10:38:14 | 自然
私は27歳で結婚し、しばらく子供は作らずにということで、30歳の時長男が次の年次男が生まれましたので、子作りには全く問題はありませんでした。

男性不妊の原因として、精子形成に必須となる機能を持つ遺伝子を備えているY染色体の減少が原因と考えられていました。しかし最新の研究データからは世界規模で精子数が減少していることが明らかになっています。

Y染色体上の遺伝子には、性決定遺伝子の他に精子形成に必須な機能を持つ遺伝子が存在しています。Y染色体上の遺伝子は、男性になることすなわち精巣を作ることを決め、作られた精巣の中で精子をつくるという男性にとってはなくてはならない働きを持つのです。

Y染色体上に欠失が起きると、精子形成がうまく進まず無精子症や乏精子症という男性不妊症となることが知られています。しかし2000年代に入り男性不妊の研究が進むと、無精子症の男性のうちY染色体に原因がある人は7%程度と報告されています。

2021年の調査では、不妊の検査・治療を受けたことのある夫婦は22.7%であり、2015年の調査結果の18.2%から増加傾向にあることが分っています。不妊が増加傾向にある中さらに追い打ちをかけるような事実があります。

現代男性の精子の数が減少しているというのです。2017年、衝撃的な論文が報告されました。イスラエル、アメリカなどの共同研究チームは、不妊ではない男性の精子濃度と総精子数が報告されている膨大な数の研究論文を精査し、これら論文に記載された大量のデータを解析しました。

このメタ解析に用いたデータは、1973年から2011年にかけて収集されたもので、50か国4万2935人の男性を対象としています。研究チームが38年間での男性の精子濃度と精子数の推移を調べたところ、アメリカ、ヨーロッパなどで、50~60%も精子数が減少していたのです。

この研究グループは継続的にメタ解析を実施し、2023年に新しい研究論文を報告しています。新しい論文では調査地域が広がりより最近の精子数を解析することができました。2000年までは1年ごとに1.6%ずつ減少していました。

しかし2000年以降はその減少スピードが加速しており、1年ごとに2.64%も減少していることが分りました。日本人男性の精子数を調査した研究報告もありますが、各国と比較したところ日本人男性の精子数は少なく、最も多かったフィンランド男性のおよそ3分の2となっています。

この原因については、睡眠不足や栄養状態などの生活習慣によるものなどいくつか考えられていますが、はっきりしたことは分かっていないようです。

少子化が取りあげられている現在、この男性の精子減少は早急に対応すべき問題のような気がします。

カタツムリはなぜ殻を捨ててナメクジになったのか

2024-07-11 10:36:29 | 自然
昔は自宅の植木等に小さなカタツムリがいましたが、最近はあまり見かけなくなってしまいました。

かみさんは野良ネコ用に餌をやっていますが、この時ナメクジ対策が大変なようです。ナメクジは、カタツムリが殻を捨てて進化した生物といわれています。

ナメクジも貝類で、海にいる巻貝、ウミウシ、陸生のカタツムリと同じ仲間でカタツムリとナメクジは約3万種類が確認されています。カタツムリが、自らの殻をなくし、体内に埋め込んだ生物がナメクジという事になります。

完全に身体を隠せないほど小さな殻をもった半ナメクジのような生物もいるようです。カタツムリの殻の中には胃、肝臓、肺などの重要な臓器が入っていて、カタツムリの殻をとると死んでしまいます。

カタツムリとナメクジは共通の祖先をもっていて、カタツムリが殻を捨てて殻が無くても大丈夫なナメクジになったという事になります。カタツムリが殻を捨てた理由はいくつかありますが、この変化、進化が世界のあちこちでバラバラに起きていたのです。

貝類の弱点は乾燥ですが、カタツムリは乾燥した地域にも生息しています。乾燥した環境になると、カタツムリは殻に引っ込んで雨が降ったり湿度が高くなるのを待ちます。

カタツムリは、軟体動物が持つ体を覆う外套膜という器官を殻の入り口に集め、呼吸や体内の水分保持のために使うようになりました。殻があった方が乾燥にも強いのですが、外敵に発見されやすくなり、狭い場所へ逃げ込むことが難しくなります。

さらに殻を背負っていることによるエネルギー負荷や殻を作り出すためのコストも大変です。殻には大量のカルシウムが必要で、カルシウムの摂取が難しい環境の場合、殻の強度も脆弱になります。

一方ナメクジは食べると不快な味がし、保護色を発達させ、毒性を持ち派手な警戒色のある種もいます。軟体動物は化石化することがほとんどないため、分子生物学的手法でカタツムリからナメクジへの過去の分岐が次第に分かってきました。

確かなのは、世界のナメクジは単一の祖先から進化したのではなく、いくつかの祖先のグループから別々に進化したことが分っています。

これまでカタツムリが、殻を小さくして半ナメクジになったり、体の中に埋め込んだりしてナメクジになった進化が別々の地域で何度も起きた可能性があるようです。殻の中の臓器を身体にしまい込み、水分を確保し紫外線などから身を守らなければなりません。

そのためナメクジは殻と一緒に臓器を格納し、外套膜で身体全体を覆って保護するようになりました。

どうもこの辺りの進化は、遺伝的な影響とともに、短期的には後天的な遺伝子修飾(エピジェネティクス)によって起きているのかもしれません。

蚊の吸血止める分子を発見

2024-07-10 10:35:48 | 自然
蚊に刺されやすい人とそうでない人がいるようで、私は昔から刺されにくい体質のようです。

子供のころ2歳年上の従妹とよく遊んでいましたが、夏の季節になると自宅によくいたいわゆるやぶ蚊に従妹は出ているところ中刺されていましたが、私はほとんど刺されることがありませんでした。

血液型で刺されやすさが変わるという説もあり、最も刺されやすいのがO型で、AB型、B型、刺されにくいのがA型となっています。私はO型ですので、この説には当てはまらないようです。

これは今でも続いており、夜のテニスに行くときはかみさんは防虫スプレーで予防していますが、それでも刺されているようです。当然私は何もしていなくても、刺されたことはありません。

蚊には人間や動物の皮膚で血を吸う時間が長引くと攻撃される危険があるため、満腹になる前に吸血を止める習性があるようです。理化学研究所と東京慈恵会医科大学の研究チームは、血液中の分子が蚊に「腹八分目」で吸血を止めさせるシグナルになっていることを突き止めました。

蚊の吸血行動を制御する仕組みの解明は、感染症抑制などへの応用が期待できるとしています。研究チームはヤブカの仲間のネッタイシマカを使い、マウスからの直接吸血と、赤血球に含まれるアデノシン三リン酸(ATP)のみを取り出した溶液を吸わせた場合を比較したところ、マウスからの吸血の方が摂取量が少なくなりました。

次に血液から赤血球などを除去した血清成分をATP溶液に加えると、ATP溶液のみのときより満腹になる蚊が少なく、血清中に吸血を止める物質があることが分りました。

血清の成分を細かく分けて調べたところ、怪我などで血液が凝固する際に最初に生じる分子「フィブリノペプチドA」(FPA)が吸血停止に関連していることが分りました。FPAは、蚊が血管に針を刺したことをきっかけに血中で産生されます。

吸血を続けると蚊の体内でも濃度が次第に高まり、これを検知して吸血を止めることが分りました。研究チームは、FPAを取り込ませることができれば、人為的に吸血を阻害できるのではないかと述べています。

どうもこの研究の意義がよく分かりませんが、蚊にもなかなか面白い習性があるという事かもしれません。今回の結果と蚊に刺されにくいことの関連はないのかもしれませんが、蚊に刺されないための予防につながる成果といえるのかもしれません。

ただこのFPAのような物質が安価にできるとは思えませんので、何らかの工夫が必要であるのは確かなようです。 

冬眠中のハムスターの爪は伸びなくても綺麗

2024-07-03 10:37:55 | 自然
このブログでもギターの話は時々書いていますが、学生時代から始めたクラシックギターを今でもたまに弾いています。

このための爪の手入れをかなりやっていました。左手は弦を抑えるためギリギリまで短くし、右手は良い音を出すために少し長めになっています。これを長年続けていたため、現在でも右手と左手の爪の長さが少し異なっています。

さて爪の話ですが、北海道大学などの研究グループが、冬眠中のシリアンハムスターは爪の伸びが止まる一方、爪自体に異常は生じず綺麗に保たれていることを発見しました。哺乳類の爪は根元にある幹細胞が分裂と分化を繰り返すことで伸びていきます。

冬眠の極端な体温変化では細胞分裂が停止するにもかかわらず組織構造を維持する仕組みを調べることで、ヒトの爪の健康にもつながる知見が得られる可能性があるようです。哺乳類の爪は、病期や栄養不足といった過度のストレスがかかると変色や変形が起きることが多いようです。

冬眠をする小動物は、体温が外気温近くに下がります。研究グループは、この低体温というストレス下で、爪に何か変化が起こるかどうかを調べることにしました。

シリアンハムスターの飼育環境を気温23〜25度、光で昼の時間を長くして夏を模した条件から、気温5度、夜が長い冬のような条件に切り替え、冬眠を促しました。

実際に冬眠したハムスターと冬眠しなかったハムスター共に爪の根元に青い色で線を引き、一定時間後にまた線を引いてどれだけ爪が伸びたかを計測しました。その結果、冬眠していないシリアンハムスターの爪は1日当たり約70マイクロメートル伸びていたが、冬眠中だと10マイクロしか伸びませんでした。

爪の幹細胞集団の分裂能力を表わす指標を調べると、冬眠のハムスターでは細胞分裂する細胞数が減少していました。またシリアンハムスターでは、何日かおきに冬眠中に体温が上がって餌を食べるなどの活動をする中途覚醒が起きるが、中途覚醒時には爪が伸びることも分かりました。

冬眠中に爪の幹細胞の分裂が止まって爪が伸びなくなると、横縞が入ったり、爪の一部がへこんだりする異常が起きる可能性がありますが、ハムスターの爪に異常はなく、冬眠後も冬眠中と同様に伸びるようになっていました。

理由は不明ですが、中途覚醒の際の活動時に爪が正常に維持されているのは利点がありそうだとしています。

どうもこの研究の意義が分かりませんが、自然の動物にとっては爪はかなり重要な部位なのかもしれません。

競争に負けるミジンコは休眠卵で生き残る

2024-06-26 10:31:20 | 自然
動物性プランクトンであるミジンコは面白い生き残り戦略を持っているようです。

東北大学などの研究グループが、異なるミジンコが共存している場合、飼育下では負けて絶滅する側の集団が、休眠卵を早めに産むことで長期に生き残る戦略をとっていることを明らかにしました。

9年にわたる観測で休眠卵が不適な環境を乗り越えるだけでなく、競争による絶滅の回避や共存にも重要であることが分りました。ミジンコ類は湖沼に生息する代表的な動物プランクトンで、日本にいるミジンコは北米大陸からの侵入種です。

オスとメスが交尾して子供ができることはなく、単為生殖によってクローンを生産し続けます。水温20度下では約3日のペースで全く同じ遺伝子を持つ卵を育房に産み、脱皮時にクローンである子供が外に出ます。

子供は約1週間で成熟して卵を産むようになります。温度が低く餌となる植物プランクトンが取れない冬は、体外に産み出した乾燥にも耐えることができる休眠卵が湖沼の底に沈んだまま春を待ちます。

東北大学の研究グループは、山形県にある広さ約19ヘクタール、最深部約8メートルの畑谷大沼に、見た目や住む場所、食べる餌はほぼ同じだが遺伝子型は異なるミジンコ2集団(JPN1とJPN2)がいることに気づきました。

研究グループは2009年から2018年まで1カ月に1度調査に通い、2集団の個体数を記録しました。調査時にはミジンコを捕まえて1匹ごとにDNAを取り出して遺伝子配列を読み取り、JNP1かJNP2を特定しました。

それぞれの個体密度と割合を求めると、おおむねJNP1の方がJNP2より多くなっていました。室内で水層に同じ数のJNP1とJNP2を入れて育てる実験をすると、JNP1が競争に勝って数を増やし、JNP2は絶滅することから2集団ではJNP1が競争優位集団でJNP2は劣位集団となります。

室内飼育だとJNP2は絶滅しますが、野外では毎年生き残っています。これは休眠卵の数自体が多いためではないかと考え、湖底にある休眠卵を数えると差はありませんでした。

個体数はJNP2の方が少ないのにもかかわらず、休眠卵数に差がないのは、JNP2の個体あたりの休眠卵数が多いことを示しています。

JNP1とJNP2をべつべつの水槽に入れて高密度で飼育してから、この飼育水を用意して実験を行うと、JNP1を高密度で育てた飼育水に入れられたJNP2は即座に休眠卵を産み始めました。一方JNP1では同様の環境で休眠卵の増加はみられませんでした。

野外観察と室内実験の結果から、競争では劣位なJNP2集団が優位なJNP1集団と長期にわたって共存しているのは、JNP2が競争者の増加を察知し、排除される前に休眠卵を産むことで翌年以後の個体群を形成できるからだと分かりました。

この休眠卵を用いた自然の生き残り戦略は、なかなか優れたものと感じました。