ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

カタツムリはなぜ殻を捨ててナメクジになったのか

2024-07-11 10:36:29 | 自然
昔は自宅の植木等に小さなカタツムリがいましたが、最近はあまり見かけなくなってしまいました。

かみさんは野良ネコ用に餌をやっていますが、この時ナメクジ対策が大変なようです。ナメクジは、カタツムリが殻を捨てて進化した生物といわれています。

ナメクジも貝類で、海にいる巻貝、ウミウシ、陸生のカタツムリと同じ仲間でカタツムリとナメクジは約3万種類が確認されています。カタツムリが、自らの殻をなくし、体内に埋め込んだ生物がナメクジという事になります。

完全に身体を隠せないほど小さな殻をもった半ナメクジのような生物もいるようです。カタツムリの殻の中には胃、肝臓、肺などの重要な臓器が入っていて、カタツムリの殻をとると死んでしまいます。

カタツムリとナメクジは共通の祖先をもっていて、カタツムリが殻を捨てて殻が無くても大丈夫なナメクジになったという事になります。カタツムリが殻を捨てた理由はいくつかありますが、この変化、進化が世界のあちこちでバラバラに起きていたのです。

貝類の弱点は乾燥ですが、カタツムリは乾燥した地域にも生息しています。乾燥した環境になると、カタツムリは殻に引っ込んで雨が降ったり湿度が高くなるのを待ちます。

カタツムリは、軟体動物が持つ体を覆う外套膜という器官を殻の入り口に集め、呼吸や体内の水分保持のために使うようになりました。殻があった方が乾燥にも強いのですが、外敵に発見されやすくなり、狭い場所へ逃げ込むことが難しくなります。

さらに殻を背負っていることによるエネルギー負荷や殻を作り出すためのコストも大変です。殻には大量のカルシウムが必要で、カルシウムの摂取が難しい環境の場合、殻の強度も脆弱になります。

一方ナメクジは食べると不快な味がし、保護色を発達させ、毒性を持ち派手な警戒色のある種もいます。軟体動物は化石化することがほとんどないため、分子生物学的手法でカタツムリからナメクジへの過去の分岐が次第に分かってきました。

確かなのは、世界のナメクジは単一の祖先から進化したのではなく、いくつかの祖先のグループから別々に進化したことが分っています。

これまでカタツムリが、殻を小さくして半ナメクジになったり、体の中に埋め込んだりしてナメクジになった進化が別々の地域で何度も起きた可能性があるようです。殻の中の臓器を身体にしまい込み、水分を確保し紫外線などから身を守らなければなりません。

そのためナメクジは殻と一緒に臓器を格納し、外套膜で身体全体を覆って保護するようになりました。

どうもこの辺りの進化は、遺伝的な影響とともに、短期的には後天的な遺伝子修飾(エピジェネティクス)によって起きているのかもしれません。

蚊の吸血止める分子を発見

2024-07-10 10:35:48 | 自然
蚊に刺されやすい人とそうでない人がいるようで、私は昔から刺されにくい体質のようです。

子供のころ2歳年上の従妹とよく遊んでいましたが、夏の季節になると自宅によくいたいわゆるやぶ蚊に従妹は出ているところ中刺されていましたが、私はほとんど刺されることがありませんでした。

血液型で刺されやすさが変わるという説もあり、最も刺されやすいのがO型で、AB型、B型、刺されにくいのがA型となっています。私はO型ですので、この説には当てはまらないようです。

これは今でも続いており、夜のテニスに行くときはかみさんは防虫スプレーで予防していますが、それでも刺されているようです。当然私は何もしていなくても、刺されたことはありません。

蚊には人間や動物の皮膚で血を吸う時間が長引くと攻撃される危険があるため、満腹になる前に吸血を止める習性があるようです。理化学研究所と東京慈恵会医科大学の研究チームは、血液中の分子が蚊に「腹八分目」で吸血を止めさせるシグナルになっていることを突き止めました。

蚊の吸血行動を制御する仕組みの解明は、感染症抑制などへの応用が期待できるとしています。研究チームはヤブカの仲間のネッタイシマカを使い、マウスからの直接吸血と、赤血球に含まれるアデノシン三リン酸(ATP)のみを取り出した溶液を吸わせた場合を比較したところ、マウスからの吸血の方が摂取量が少なくなりました。

次に血液から赤血球などを除去した血清成分をATP溶液に加えると、ATP溶液のみのときより満腹になる蚊が少なく、血清中に吸血を止める物質があることが分りました。

血清の成分を細かく分けて調べたところ、怪我などで血液が凝固する際に最初に生じる分子「フィブリノペプチドA」(FPA)が吸血停止に関連していることが分りました。FPAは、蚊が血管に針を刺したことをきっかけに血中で産生されます。

吸血を続けると蚊の体内でも濃度が次第に高まり、これを検知して吸血を止めることが分りました。研究チームは、FPAを取り込ませることができれば、人為的に吸血を阻害できるのではないかと述べています。

どうもこの研究の意義がよく分かりませんが、蚊にもなかなか面白い習性があるという事かもしれません。今回の結果と蚊に刺されにくいことの関連はないのかもしれませんが、蚊に刺されないための予防につながる成果といえるのかもしれません。

ただこのFPAのような物質が安価にできるとは思えませんので、何らかの工夫が必要であるのは確かなようです。 

冬眠中のハムスターの爪は伸びなくても綺麗

2024-07-03 10:37:55 | 自然
このブログでもギターの話は時々書いていますが、学生時代から始めたクラシックギターを今でもたまに弾いています。

このための爪の手入れをかなりやっていました。左手は弦を抑えるためギリギリまで短くし、右手は良い音を出すために少し長めになっています。これを長年続けていたため、現在でも右手と左手の爪の長さが少し異なっています。

さて爪の話ですが、北海道大学などの研究グループが、冬眠中のシリアンハムスターは爪の伸びが止まる一方、爪自体に異常は生じず綺麗に保たれていることを発見しました。哺乳類の爪は根元にある幹細胞が分裂と分化を繰り返すことで伸びていきます。

冬眠の極端な体温変化では細胞分裂が停止するにもかかわらず組織構造を維持する仕組みを調べることで、ヒトの爪の健康にもつながる知見が得られる可能性があるようです。哺乳類の爪は、病期や栄養不足といった過度のストレスがかかると変色や変形が起きることが多いようです。

冬眠をする小動物は、体温が外気温近くに下がります。研究グループは、この低体温というストレス下で、爪に何か変化が起こるかどうかを調べることにしました。

シリアンハムスターの飼育環境を気温23〜25度、光で昼の時間を長くして夏を模した条件から、気温5度、夜が長い冬のような条件に切り替え、冬眠を促しました。

実際に冬眠したハムスターと冬眠しなかったハムスター共に爪の根元に青い色で線を引き、一定時間後にまた線を引いてどれだけ爪が伸びたかを計測しました。その結果、冬眠していないシリアンハムスターの爪は1日当たり約70マイクロメートル伸びていたが、冬眠中だと10マイクロしか伸びませんでした。

爪の幹細胞集団の分裂能力を表わす指標を調べると、冬眠のハムスターでは細胞分裂する細胞数が減少していました。またシリアンハムスターでは、何日かおきに冬眠中に体温が上がって餌を食べるなどの活動をする中途覚醒が起きるが、中途覚醒時には爪が伸びることも分かりました。

冬眠中に爪の幹細胞の分裂が止まって爪が伸びなくなると、横縞が入ったり、爪の一部がへこんだりする異常が起きる可能性がありますが、ハムスターの爪に異常はなく、冬眠後も冬眠中と同様に伸びるようになっていました。

理由は不明ですが、中途覚醒の際の活動時に爪が正常に維持されているのは利点がありそうだとしています。

どうもこの研究の意義が分かりませんが、自然の動物にとっては爪はかなり重要な部位なのかもしれません。

競争に負けるミジンコは休眠卵で生き残る

2024-06-26 10:31:20 | 自然
動物性プランクトンであるミジンコは面白い生き残り戦略を持っているようです。

東北大学などの研究グループが、異なるミジンコが共存している場合、飼育下では負けて絶滅する側の集団が、休眠卵を早めに産むことで長期に生き残る戦略をとっていることを明らかにしました。

9年にわたる観測で休眠卵が不適な環境を乗り越えるだけでなく、競争による絶滅の回避や共存にも重要であることが分りました。ミジンコ類は湖沼に生息する代表的な動物プランクトンで、日本にいるミジンコは北米大陸からの侵入種です。

オスとメスが交尾して子供ができることはなく、単為生殖によってクローンを生産し続けます。水温20度下では約3日のペースで全く同じ遺伝子を持つ卵を育房に産み、脱皮時にクローンである子供が外に出ます。

子供は約1週間で成熟して卵を産むようになります。温度が低く餌となる植物プランクトンが取れない冬は、体外に産み出した乾燥にも耐えることができる休眠卵が湖沼の底に沈んだまま春を待ちます。

東北大学の研究グループは、山形県にある広さ約19ヘクタール、最深部約8メートルの畑谷大沼に、見た目や住む場所、食べる餌はほぼ同じだが遺伝子型は異なるミジンコ2集団(JPN1とJPN2)がいることに気づきました。

研究グループは2009年から2018年まで1カ月に1度調査に通い、2集団の個体数を記録しました。調査時にはミジンコを捕まえて1匹ごとにDNAを取り出して遺伝子配列を読み取り、JNP1かJNP2を特定しました。

それぞれの個体密度と割合を求めると、おおむねJNP1の方がJNP2より多くなっていました。室内で水層に同じ数のJNP1とJNP2を入れて育てる実験をすると、JNP1が競争に勝って数を増やし、JNP2は絶滅することから2集団ではJNP1が競争優位集団でJNP2は劣位集団となります。

室内飼育だとJNP2は絶滅しますが、野外では毎年生き残っています。これは休眠卵の数自体が多いためではないかと考え、湖底にある休眠卵を数えると差はありませんでした。

個体数はJNP2の方が少ないのにもかかわらず、休眠卵数に差がないのは、JNP2の個体あたりの休眠卵数が多いことを示しています。

JNP1とJNP2をべつべつの水槽に入れて高密度で飼育してから、この飼育水を用意して実験を行うと、JNP1を高密度で育てた飼育水に入れられたJNP2は即座に休眠卵を産み始めました。一方JNP1では同様の環境で休眠卵の増加はみられませんでした。

野外観察と室内実験の結果から、競争では劣位なJNP2集団が優位なJNP1集団と長期にわたって共存しているのは、JNP2が競争者の増加を察知し、排除される前に休眠卵を産むことで翌年以後の個体群を形成できるからだと分かりました。

この休眠卵を用いた自然の生き残り戦略は、なかなか優れたものと感じました。 

ヒトiPS細胞から卵子と精子のもとを作製

2024-06-16 10:32:12 | 自然
ヒトの命の誕生を巡る研究が、基礎研究から生殖医療研究に向けてさらに踏み出しました。

京都大学の研究グループが、ヒトのiPS細胞を利用して卵子と精子のもとになる生殖細胞を大量に作製することに成功したと発表しました。このニュースは色々なメディアで取り上げられていますが、iPS細胞の性質から見るとそれほど難しいことではないような気がします。

ただしヒトの卵子や精子を実際につくって生殖に使う段階までには、技術的、倫理的に重要な課題が多くあり、生殖医療応用までにはまだ距離があるようです。現在iPS細胞を使った受精卵操作は国の指針で禁止されています。

iPS細胞は皮膚や血液などの体細胞に人工的に遺伝子を導入するなどして、さまざまな細胞に変化できる能力を持たせた細胞です。iPS細胞はケガや病気などで失われるなどした組織や臓器を修復する、再生医療に応用されて注目されてきました。

研究グループによると、卵子や精子はできる前にまずそれらのもとになる「始原生殖細胞」が受精2週間ごろにでき、6〜10週後に胎児の中の精巣や卵巣で精子の手前の「前精原細胞」と卵子の手前の「卵原細胞」に分化します。

研究グループは、2012年にマウスのiPS細胞を利用して卵子を作り、通常の精子と体外受精させてマウスを誕生させることに成功しています。その後2015年にはヒトiPS細胞に薬剤などを加えて「初期中胚葉細胞」と呼ばれる細胞を作製しました。

さらにこの細胞にある種のタンパク質を作用させて始原生殖細胞を高い効率で作ることに成功し発表しました。卵原細胞もヒトのiPS細胞から作ることに成功しましたが、できた卵原細胞は少ないものでした。

研究グループは今回、ヒトiPS細胞から始原生殖細胞に似た細胞を独自の方法で作製しました。ヒトの体内にあって骨形成にも関わるとされるタンパク質の一種をこの人の細胞に投与して培養しました。その結果約2か月で卵原細胞と前精原細胞を作り出すことに成功しました。

さらに染色体数を安定させ続けるなどの条件下で約4か月培養を続けると細胞数は100億倍に増えたとしています。今回の研究成果で、大量に前精原細胞や卵原細胞を作製できる手法が確立しました。

大量にできることで実験が飛躍的にしやすくなり、生殖細胞研究が進展すると期待されています。研究グループは卵原細胞などの形成過程で、エピゲノムリプログラミングも再現できたとし、今回の一連の研究により「ヒト生殖細胞の発生機構を解明できた」としています。