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統合失調症治療薬候補

2019-07-17 10:27:16 | 
理化学研究所脳神経科学研究センターの研究チームは、体内で合成される物質「ベタイン」が、精神疾患の一種「統合失調症」の治療に有効であることを示しました。

統合失調症を再現したマウスにベタインを投与すると、症状が抑制され新たな治療薬として応用が期待されます。

余計なことかもしれませんが、ここに出てくるベタインという名前は、正電荷(プラス)と負電荷(マイナス)を同一分子内の隣り合わない位置に持ち、分子全体としては電荷をもたない化合物(分子内塩)の総称です。

この記事ではなんでベタインという名称を出したのかわかりませんが、ベタイン構造を持つものなら何でも良いというわけではなく、何か特定の化合物を指していると思われます。生体内にはベタインは数多く存在し、代表的なものがトリメチルグリシンやカルニチンですが、最も簡単な構造であるトリメチルグリシンを指しているのかもしれません。

さて研究チームは統合失調症に特徴的な運動量が増加する症状を再現したマウスを作製してベタインを投与したところ、症状を抑えることができました。この症状抑制効果は、マウスの遺伝的な背景により差があったようです。

またマウスに幻覚剤を使うと認知機能が低下しますが、ベタインも同時に投与すると認知機能の低下を防ぐことができました。

ヒトの患者の脳を解析したところ、脳内のベタイン濃度が低下して酸化ストレスが進んでおり、細胞に有害な物質が蓄積していました。

実際に酸化ストレスを解消する酵素を作る遺伝子を破壊したヒトiPS細胞を作製して調べたところ、酸化ストレスが高まりベタインの濃度が低下していました。この細胞にベタインを加えると、ストレス状態は改善しました。

患者の全遺伝情報(ゲノム)を調べると、ベタイン合成酵素の遺伝子のタイプにより、ベタイン投与による治療効果を予測できることも分かりました。

このベタインは天然に存在しますが、一般に合成も簡単であり安価な薬物となりますし、全ての生物が持っているものですので、安全性も問題ないと思われます。

統合失調症は人口の約1%が発症するといわれ、幻覚や妄想、認知機能の低感度が現れます。治療には神経伝達物質の作用を抑える薬剤を使いますが、効果が十分ではなく重篤化することもあったようです。

ベタインのような生体成分で治療できるのであれば、新たな治療法として期待できると思われます。この記事では臨床試験などについては全く触れられていませんが、早期の展開を期待できそうな気がします。


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