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寄生虫が宿主を「操作」するはなし

2021-08-01 10:25:03 | 自然
トキソプラズマという寄生虫の話は時々聴きますが、ここではこの寄生虫が宿主(ここではハイエナが中心)を操作して、ライオンに捕食されやすくするという記事が出ていました。

この研究は、ケニアのマサイマラ国立保護区で数十年にわたって集められたデータを分析した結果ですが、トキソプラズマに感染したハイエナは、感染していない個体と比べると約4倍ライオンに殺されやすくなっています。

特に感染した1歳未満のハイエナは、ライオンに近づきやすくなり、死因が分かる子供はすべてライオンに捕食されていました。

トキソプラズマは単細胞の寄生性原虫で、ネコ科動物を終宿主としますが、ヒトを含む哺乳類や鳥類を中間宿主として、世界人口の少なくとも3分の1が感染しているといわれています。

この寄生虫はネズミなどの宿主を操り、イエネコなどのネコ科の動物の近くで大胆な行動をとらせて、ネコに寄生することが知られています。今回初めてハイエナのような大型哺乳類に同じような効果を及ぼすことが確認されました。

トキソプラズマはネズミや鳥類などの多くの宿主にも寄生し無性生殖をしますが、有性生殖はネコ科動物の腸内でしかできません。そこでネズミに寄生したトキソプラズマは、ネズミがネコの尿の匂いに強く引き付けられるようにするとされています。

有性生殖をするとゲノムがシャッフルして変化させることが可能になるだけでなく、安定な胞子を形成してさらに多くの宿主に寄生できるようになるためです。今回の研究者は、数十年にわたって続けられているマラ・ハイエナプロジェクトに注目しました。

このプロジェクトでは、ここのハイエナのいる場所やほかの動物との距離、子の年齢、性別、血液サンプルなどのデータが記録されており、トキソプラズマに感染しているかどうかも分かります。

分析の結果調査対象となったハイエナのうち、1歳未満の子供の35%、1歳から2歳の成熟間近の71%、2歳を過ぎた大人の80%がトキソプラズマに感染していました。感染していない子ハイエナがライオンに近づく距離が平均91mだったのに対し、感染した子ハイエナは平均44mという危険な距離まで近づいていました。

この様に寄生虫が宿主を操ることは確かなようですが、この詳細なメカニズムについてはまだ分かっていません。

果たして人間ではどうなのか興味がありますが、感染した人は危険な運転をしたり、リスクの高い行動をするといった証拠があるとしていますが、科学的な検証はできていないようです。

寄生虫が我々の行動に影響を与えている可能性があるというのは、やや気もち悪い事と言えそうです。


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