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最悪の脳腫瘍は「ミトコンドリア泥棒」だった

2023-08-17 10:31:30 | 健康・医療
知人が脳腫瘍で手術したという話しは聞きますが、いずれも良性の腫瘍のようでした。

膠芽腫は急速に成長する最も悪性度の高い脳腫瘍で、診断から1年以内に死亡する患者も多いようです。膠芽腫はアストロサイトと呼ばれるグリア細胞から始まります。

最近の研究で、膠芽腫細胞は周囲の健康なアストロサイトからエネルギーの生産工場であるミトコンドリアを取り込むことによって、急激に増殖していることが明らかになりました。この「ミトコンドリア泥棒」を阻止することができれば、膠芽腫の新しい治療法につながるかもしれません。

病気の細胞と健康な細胞の間でミトコンドリアが移動することは以前から知られていましたが、この移動がガンの広がりを助ける仕組みは不明でした。

アメリカの研究グループは、2016年に発表した研究で、脳卒中の後、アストロサイトのミトコンドリアが損傷したニューロンに移動することを明らかにしています。ミトコンドリアは、細胞内でのあらゆるプロセスのエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)のほとんどを作っています。

またATP以外にも細胞にとって重要なさまざまな物質を作る場でもあります。さらにミトコンドリアは、局所環境の重要なセンサーにもなっており、細胞が成長するのに十分なエネルギー源があるかどうか、局所環境に危険がないか、運動のためのエネルギーを供給する必要があるかどうか、細胞がアポトーシスする必要があるかどうかを感知します。

実験室で一緒に培養された細胞の間でミトコンドリアが移動することが初めて発見されたのは2006年でした。

2014年の論文では、網膜のニューロンがミトコンドリアを排出することが明らかにされましたが、ニューロンは損傷した古いミトコンドリアを周囲のアストロサイトに捨ててリサイクルさせているのだろうと解釈されていました。

ところが2016年に脳卒中の後に逆方向、つまり健康なアストロサイトのミトコンドリアが損傷したニューロンに移動する場合があることを発見しました。2015年に膠芽腫のような脳腫瘍では、ガン細胞の間に微小な管ができて、ネットワークを形成していることを発見しました。

そこでガン化したアストロサイトが健康な細胞からミトコンドリアを移動させるのではないかと推測しました。その他の実験から腫瘍細胞が周囲の環境から健康なミトコンドリアを取り込んでいることが確認されました。

こういったメカニズムはまだよく分かっていませんが、ミトコンドリアの移動を阻害する治療薬が考えられるようです。

こういった手法により治療が困難な膠芽腫のような腫瘍の、治療法の可能性が出てきたと言えるのかもしれません。


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