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心臓・血管修復用の頑丈なパッチを製品化

2024-08-24 10:32:04 | 健康・医療
大阪医科薬科大学と企業の帝人などが、心臓や血管を修復する際に用いる、劣化しにくく頑丈なパッチを製品化しました。

これまで化学合成品や生体組織を使う方法がありましたが、成長のたびに手術が必要にとなったり、使用可能な量に限界があったりと欠点が多くありました。

今回製品化した「シンフォリウム」は、日本で古くから伝わる編み物の要領で、隙間に細胞がうまくフィットするような形状にしました。従来用いてきたフッ素系工業製品や牛の心膜などを使うと、癒着で再手術の難易度が上がったり、心臓の表面が分厚くなったりします。

さらに素材の劣化や成長に伴い、再手術が必須となっていました。新素材にできそうな丈夫で伸びる布の形態を考えてみましたが、着物や帯のようにタテヨコの糸が直角に交わる織物の形状では、強度があって組織が入り込めません。

ストッキングに見られるような、ふわふわの編み物では組織が入り込めるのですが強度不足になります。これらを解決するハイブリッドな素材を作るため研究チームは産学連携で取り組むことにしました。

福井市の生地製造業が絹の編み物を作っているというニュースを見て、連絡を取り「心臓や血管に使える劣化しない布を作って欲しい」と伝えたところ、快諾し多くの試作品を作りました。

試行錯誤の末、1年かけて結晶性高分子のポリ乳酸を使った吸収糸と、ペットボトルの素材であるポリエチレンテレフタレートを使った非吸収糸を編み、そこをゼラチン膜が覆うような柔らかい素材のパッチに仕立てました。厚みは0.4ミリメートル以下となっています。

研究チームが試しに実際の手術に使用している針と糸で縫ってみると、スムーズに縫い合わせができました。体内に入れると3か月でゼラチン膜が分解されて、組織がそこに入りこみます。

2年経つと吸収性糸が溶け、それ以上の年月が経つと非吸収性糸が伸びて組織になじむ仕組みとなりました。このパッチを心室中隔欠損症の赤ちゃん3人に実際に使ったところ、5年経過後も異常はありませんでした。

帝人と組むことで医療品としての承認が得られ、保険適用となりました。今年6月から全国の医療機関への販売を始めました。今後は幅広い世代の心疾患がある患者に、パッチを使った全国31施設の150症例を追跡調査し、経年での問題が生じないか精査するとしています。

これからは心臓の人工弁といった常に動く素材についても考えていきたいとしています。今回の承認にどのくらいの時間がかかったか分かりませんが、こういった有効な医療品は一刻も早く実用化すべきと考えられます。


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