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113番目の原子 ニホニウムNhに決定

2016-12-15 10:42:14 | 化学
半年ほど前にこのブログでも、113番原子の命名権が理化学研究所に与えられたという記事を書きました。

これが国際純正・応用化学連合(IUPAC)によりこの原子をニホニウムで原子記号Nhが正式決定されました。これで周期律表の113番目にNhが入り、高校の教科書などにも掲載されることになります。

周期律表など一般にはなじみのないものですが、化学の最も基本となるもので、このなかに日本人が発見し命名したものが入るということは、歴史的な偉業といえます。

日本はノーベル賞の湯川秀樹先生をはじめとして、世界の物理学をリードしてきました。しかし日本の物理学は理論物理という分野だけで、これは机上の計算で済むものしか手を出せなかったのです。特に核物理学は、実験するのに驚くほど巨額の研究費が必要で、最近まで日本とは無縁の世界でした。

それが私が研究者の現役最後のころですので、1990年代後半だと思いますが、理研に超巨大加速器が設置され、「ジャポニウム計画」という物が発足したのです。この時理研の先生から加速器の見学に誘われたのですが、何かの理由で実現しませんでした。

この加速器が何千億円かかったのかわかりませんが、これを使った実験を1回やるだけで億円近い金がかかるようで、日本も豊かになったものだと感じました。

実際に研究グループは、分子量30の亜鉛の原子核を分子量83のビスマスの原子核に、光の10%という速度で衝突させると、核融合が生じ113の原子ができたようです。しかしこの新しい元素はミリ秒単位しか存在せず、自然崩壊を起こしてしまいます。

従ってこの新しい元素ができたかどうかは、崩壊過程を詳しく調べ、既知の元素となることを確認して証明するわけです。しかしこの時間もミリ秒という、どうやって測定するのかわからない程の短時間ですので、私の感覚では理解できない手法が使われるようです。

結局このニホニウムはα崩壊といわれる陽子2個ずつの崩壊を6回繰り返し、既知の確認できる元素であるMd(メンデレビウム)に到達したことが確認されました。この研究結果がIUPACに承認され、今回の正式決定となりました。

余談ですがこのIUPACというのは化学世界で最も権威ある組織で、我々が作った化合物の正式名称は、この組織の基準によりつけることになっています。この化合物の命名法というのは分厚い2冊の本になっており、特許出願時はそれが必要になり、非常に苦労した記憶があります。

結局この113番目の元素は、ジャポニウムではなく日本語を優先してニホニウムになったようです。これは今年度の科学分野での重大ニュースに入る、大きなことでした。

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