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脳の治療に革命をもたらす「集束超音波治療」

2022-07-08 10:35:59 | 健康・医療
脳の薬の開発で大きな壁となっているのが「脳血管関門(BBB)」の存在です。

脳の血管の入り口には有害なものを脳に入れないようにするために、いわば細胞の網のようなものがあり、これを脳血管関門と呼んでいます。この異物を通さないメカニズムはよく分かっていませんが、物質の大きさではありません。

例えば脳の神経伝達物質であるドーパミンは通りませんが、その類似物質であるDOPAは通るといったように、何が通るかは予測が難しくなっています。

脳内の酵素などを活性化するような物質を作っても、脳内に入らなければ何の意味もないわけです。この脳血管関門を物理的に開く技術として、「集束超音波治療」が注目されています。

専門家はこの治療技術がいずれ、脳腫瘍からアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症に至るまで、治療が不可能あるいは困難なさまざまな脳の疾患の医療に革命を起こすと考えているようです。

集束超音波は最近考案されたものではなく、15年前から子宮筋腫や前立腺ガンの破壊、前立腺肥大の治療に使われています。

2015年にカナダの研究グループが、集束超音波を使って固く結びついた細胞を解きほぐし、頭蓋骨に穴を開けなくても完全に脳血管関門を開くことを見出しました。

この技術によって薬を脳内に入れるのに十分な時間を確保でき、この処置は完全に可逆的であり関門は処置後24時間以内に自然に閉じられます。またこのグループは2021年に、放射性タグをつけた治療用抗体が、乳房から脳に転移したガン細胞に関門を超えて届くまでを追跡しています。

集束超音波によるアルツハイマー病の治療に関する前臨床試験でも有望な結果が得られています。この脳血管関門を開くだけでも、記憶機能が改善されるといった認知面でのプラスの効果がみられています。

コロンビア大学のチームは、関門が開くとアルツハイマーの特徴のひとつであるアミロイド斑の残骸が脳内から排除されることを発見しました。これまで何百種類というアルツハイマー病の治療薬が膨大なコスト欠けて臨床試験にかけられ、失敗に終わっています。

この大きな理由が薬がしっかり脳に届かないためと考えられるようです。集束超音波治療の明らかな利点として、脳内に直接薬を投与できるため、より少ない投与量でも効果が期待できる可能性があります。

現在はまだMRI画像などによって超音波の部位を決定していますが、より簡単なヘルメットなどを使って正確に超音波を当てる工夫もされているようです。

この集束超音波療法によって、確実に薬剤が投入できるようになれば、脳血管関門という大きな壁を超えることになりそうです。


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