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電気を通さずに電気分解を起こす手法を開発

2022-07-09 08:21:35 | 化学
私が専門とする有機化学の中の電気分解のはなしですが、もっとも有名な反応は水を電解して水素と酸素を発生させるというものです。

これは中学生の実験でもやりそうなことですが、有機化学中でもかなり難しい反応となっています。

東京工業大学の研究グループが、電気の供給無しに電気分解反応を起こして高分子化合物を合成する手法を開発したと発表しました。

電解質を含む溶液を高圧で流すと生じるエネルギーを利用するのが特徴で、宇宙や深海など電力がない環境での化合物合成などに活用できるようです。

化学反応には物質同士が電子のやりとりすることで進行するものが多いのですが、工業利用には有害で危険な試薬を使う必要があり、廃棄物をなるべく減らしたいという課題がありました。

試薬不要の化学反応である電解反応も電気エネルギーが必要で、棒状や板状の電極に給電するための煩雑な電気装置や配線が不可欠です。

研究グループはこれらの課題を解決できる新たな電解反応の開発に着手し、電解液を微小な流路に流すと、流路の上流と下流で電位差が生じてエネルギーが生まれることに着目しました。しかしこの電位差は数十ミリボルトで、反応に利用するためには電位差を高める必要がありました。

研究グループは特定の有機溶媒と電解質を組み合わせることによって電位差が高まることを確認し、電解反応に必要な3ボルト程度の電位差を実現させました。

ある種の電解質とピロールという芳香族化合物を溶かした電解液を、中に綿が詰まった直径0.5ミリの微小な管に流すと給電なしに電解反応が起き、上流側の電極に電気を流す性質がある高分子化合物(ポリピロール)の膜を作ることに成功しました。

現在電解反応はアルミニウムや塩素などさまざまな物質の生産や有機物合成の他、多様な生産や処理工程に活用されています。今回の研究成果は、適当な有機溶媒に電解質を溶かした電解液を送るだけで、電解反応を起こせる可能性を実証したものです。

研究グループによると、現段階では100気圧程度の高圧下で電解液を流す必要がありますが、より低圧下でも同様の反応を起こすよう改良することにより、例えばファインケミカルの合成や有機物質の分解など幅広い分野での活用も可能としています。

この手法は電気不要で有害物質を生まない「環境にやさしい手法」として期待できるようです。

私の感覚としては、この手法がどの程度応用できるかはやや疑問のような気がしますが、新しい電気を使わない電気分解の方法というのは、非常に面白い発見といえる気がします。


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