ごっとさんのブログ

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多数意見の形成の法則

2020-08-26 10:29:04 | 時事
現在は意見が割れた場合は、多数決で決めることが普通になっています。この多数意見はどのようにして生まれてくるのか、何か法則があるのか興味が持たれるところです。

実際身の回りでも、時間の大きな割合が職場や家庭の各人の考えをどう集約していくか、という問題に費やされています。

社会の多数意見の形成の過程に、何か数学的な法則のようなものはないかということで、「世論力学」というものを考案した、ガラム理論について紹介します。

ガラム理論では、賛否の意見を持った個々人がたくさん集まって多数決に参加する状況を想定し、その際全ての個人が2つのタイプにのいずれかに属すると考えます。

定まった意見があって常に賛成または反対の意見を持ち続ける「固定票タイプ」と、他人の意見を絶えず参考勘案して賛成反対を決める「浮動票タイプ」です。

浮動票タイプの個人は、最終的な判断に至るまで自分の意見を何度か変えますが、そのたびに数人の意見を参考にすると想定されます。何かの賛否を決める際、新聞やテレビやネット、友人同僚の意見を聞きますが、通常そんなに熱心に調べて回るわけではありません。

ガラム理論では、この数人の参考意見を「ランダムに集まった自分も含めた3人による多数決」に従った意見の変更とみなすことにしました。このような各人の意見の調整、変更が繰り返し断続的に起きて、集団全体の賛否の比率が安定になるまで続くと考えます。

ガラム理論では、この過程を確率分布の時間発展を記述する方程式で表しました。それによると浮動票タイプだけの社会では、意見の調整が進むにつれて、賛否いずれかが優位になって最後は全員賛成、もしくは全員反対になります。

この時どちらに傾くかは、最初の意見の分で決まります。固定票タイプが少し混じっただけで、賛否の分布に与える影響は大きいようです。

たとえば「常に賛成」の固定票タイプが5%いるとき、たとえ最初に70%反対があっても、意見調整を経ると最終的には全員が賛成派となってしまいます。固定型の人が17%以上いると、彼は無敵となります。

つまり17%賛成派の固定票タイプがいれば、残りの浮動票タイプが全員反対から始めても、時とともに全員が賛成派になるというものです。

つまり周りと意見交換をしながら社会全体の意見を調整するという「民主的な手続き」を踏んだ多数決を行う場合、2割にも満たない確信を持った少数派の意見が、残りの一般の人の意見に優先することが起こるとしています。

この辺りが民主制の元での少数者独裁が立ち現れる理由としています。現在の日本が、この理論に当てはまるのか微妙ですが、考えてみると面白いような気もしています。

機械へ意識を移転し不死となるか

2020-08-24 10:26:17 | その他
人類の「寿命」をめぐる常識を塗り替える可能性のある日本初の研究が発表されました。

そのひとつは、Q神経を刺激することによる「人工冬眠」ですが、これは死や病気を遠ざける技術として期待はかかるものの、不老不死を実現するものではありません。

そこで登場するのが「機械への意識のアップロード」の研究で、東京大学の研究グループが発表しました。この研究は身体的な不老不死ではなく、意識を機械にアップロードし、その中で生き続けるという技術です。

実現のカギを握るのは、意識のアップロードの対象となる機械とそれを脳とを結ぶ装置、ブレーン・マシン・インターフェイス(BMI)の開発です。今年5月に「神経束断面計測型BMI」の特許が東京大学から申請されました。

このアップロードの方法は大きく分けて3ステップからなります。まず初めに意識の宿る機械を用意しますが、人の意識をアップロードする前から、その機械は意識を備えておく必要があります。

脳をコピーするには神経同士の接続の有無だけでなく、接続の強さまで読み取る必要があります。これを読み取るには非常に高い精度が求められるため、あらかじめ意識を持たせておくというものです。

そこにステップ2として自身の意識を一体化し、さらにそれを「自分色」に染めていくというステップ3となるわけです。まず赤ちゃんの機械をつくり、意識にまつわる様々な仮説をもとに学習の仕組みを加え、様々な体験をさせます。

視覚的な意識の構築なら、何万時間もの動画を見せて、必要とあらば仮想的な身体を加えても良いようです。そしてステップ2として、超高密度の情報の読み書きがが可能なBMIを右脳と左脳の間に挟み込み、人間の右脳と機械の左脳、人間の左脳と機械の右脳を接続します。

現在のデジカメに搭載されている程度のセンサーで、生体脳同士のもともとの神経接続をすべて再現できるといいます。

ステップ3は言い換えると「記憶の転送」となり、脳の意識と機械の意識が一体化しても、この時点での機械の意識はいわばニュートラルな状態で、本人の過去の記憶は脳の中にしか存在しません。

機械の中で目覚めたとき、無事に移植されたと実感するためには、記憶の転送が不可欠になります。これは脳の海馬から大脳皮質に転写されるという記憶の仕組みを機械に組み込むことで可能となるようです。

こうして人間の脳を完全に機械に転写できたとして、機械の中で生き続けることになるのかどうもよく分かりません。単に自分の脳と同じ記憶を持つ機械が出来上がるだけのような気もしますが、その機械も自己を持つのかもしれません。

ただこの操作は現在の最大能力のコンピュータでも不足のようですので、実現はかなり先になりそうな気もします。

ガンを発症の4年前に発見する血液検査

2020-08-23 10:26:20 | 健康・医療
4年以内に特定のガンを発症するかどうかを、予測できる血液検査が開発されたとする研究論文が公開されました。

「PanSeer」と呼ばれるこの検査では、よく見られる5種類のガン(胃ガン、食道ガン、大腸ガン、肺ガン、肝臓ガン)を、既に診断された患者の88%で検出でき、精度は96%でした。後にガンと診断された無症候性患者でも95%でガンを検出しました。

ただしこの結果を裏付けるためには更なる研究が必要だと、論文を発表した著者らは述べています。PanSeerは、ガンと関係のあるメチル化を見つけ出すことで機能しています。

炭化水素で構成される化合物である「メチル基」はDNAと結びつき、遺伝子のスイッチのオンオフを切り替えるシグナルとして機能しますが、その際の異常を探すものです。

研究には、2007年から2014年までに研究に参加した25歳から90歳までの12万3115人の血液試料が使われました。研究チームはこれら保存された試料から、ガンの症状がなかった605人の試料を調べました。

このうち191人は、採血から4年以内に胃ガン、食道ガン、大腸ガン、肺ガン、肝臓ガンのいずれかを発症しました。研究チームは、血液試料に含まれるDNA中の「CpGアイランド」と呼ばれる特定の配列における化学変化を調べることで、症状のない人におけるガンを見つけ出しました。

研究チームは論文の中で特に強調したいこととして、PanSeerはガンになる人を予測するためのものではなく、既にガンができているが、現在の検査方法ではその兆候をとらえられない患者を特定するためのものだと述べています。

多くのガンは病気の進行が後期になるまで症状が現れないと研究チームは述べています。この検査の対象となる5種のガンは、アメリカだけで毎年26万人以上の死者を出しています。この血液検査で早期発見により、死者数を大幅に減らせる可能性があると期待されているようです。

この論文の共著者であるカリフォルニア大学サンディエゴ校の教授は、さしあたりの目標は家族歴、年齢、その他の既知のリスク因子に基づいて、リスクの高い人を検査したいと述べています。

現在は今回の研究チーム以外の多数の研究チームが、ガン発症のリスクが高い患者を特定する方法を見つけようと試みています。今回の検査方法では、遺伝子中のメチル化の異常とガン発症の関連性がどの程度科学的・理論的に裏付けられているのかやや疑問です。

またそういった変異した遺伝子が、初期の段階から血液中に出るのかといった疑問点もありますが、発症前の早期にガンが発見できる可能性はこれからも追及してほしいものです。

「病は気から」の解明が進展

2020-08-22 10:28:52 | 健康・医療
前向きの気持ちが花粉症などのアレルギー症状を改善させるという研究結果を、山梨大学の研究グループが発表しました。

「病は気から」の化学的根拠をめぐっては、ストレスが体調不良につながるメカニズムは解明されつつありますが、逆にポジティブな思考が体にいいという結果は注目されています。

花粉症や気管支喘息、アトピー性皮膚炎などの新薬の臨床試験では、患者が偽薬が効いたと信じ込む「プラセボ効果」が他の疾患の薬より高く出ることが知られており、患者の気持ちがある程度影響するとみられていました。

そこで研究グループはマウスを使い、前向きな感情を脳内でつかさどるドーパミン報酬系と呼ばれる神経をさまざまな方法で活性化し、アレルギー反応の影響を解析しました。その結果いずれも通常より2,3割程度症状が軽くなったようです。

ポジティブな精神状態を生み出す特定の脳内のネットワークが、アレルギーを生じさせる免疫の仕組みと密接にリンクしていることを直接的に証明できたとしています。

研究グループは、アレルギーの治療はもちろん薬を適切に使うことが第一だが、患者が前向きな気持ちを保ち続けることも大事であることが研究で示されたと述べています。

「病は気から」の研究では、2014年大阪大学のグループがストレスが免疫力を低下させるメカニズムを交感神経の働きから証明しました。

これはかなり専門的になりますが、交感神経からのノルアドレナリンがリンパ球に発現するある受容体を介して、リンパ球のリンパ節からの脱出を抑えることを見出し、交感神経がリンパ球の体内動体の恒常性を保つ役割を果たしていることを明らかにしました。

またアレルギー性皮膚炎のマウスモデルに於いて、この受容体からの刺激が炎症を引き起こすリンパ球のリンパ節からの脱出を抑制し、それらが炎症部位に到達するのを妨げることが分かりました。

このことから交感神経によるリンパ球の動体制御が炎症性疾患の病態にも関わり、「病は気から」の分子メカニズムの一部が明らかになりました。

また2017年には北海道大学のグループが、ストレスで起こる脳内の炎症が胃腸の病気や突然死につながる仕組みを解明しています。ストレスの反対である前向きな気持ちが体にいいという考えは、書店に並ぶ健康本や自己啓発本に目立っています。

古くは平成7年にはプラス思考で出る脳内ホルモンが心身の最良の薬だとする本がベストセラーになりましたが、学術的な研究はほとんどありませんでした。

ここで示した研究が病は気からにどうつながるのかよく分かりませんが、脳がからむとなかなか理解し難い内容となるのかもしれません。

ダイヤモンドより軽くて強い炭素結晶

2020-08-21 10:27:56 | 化学
極めて硬い物質として知られるダイヤモンドより軽くて強い炭素結晶の存在を予測したと、筑波大学の研究グループが発表しました。

5つの炭素原子が環状に結合した構造を立体的に組み合わせたもので、「ペンタダイヤモンド」と命名しました。便利な材料として利用できる可能性があるようです。

研究グループは幾何学的な考察に基づき、炭素原子が5つつながった五角形の五員環の各辺同士を共有させると立体的な結合のつながりができ、結晶として存在できることを発見しました。命名したペンタダイヤモンドの「ペンタ」はギリシャ語で5つを意味します。

炭素原子だけからなる物質には、原子の結合の仕方によって性質の異なる4種の同素体が知られています。ダイヤモンドのほか、鉛筆の芯などの黒鉛(グラファイト)、球状分子のフラーレン、黒鉛が筒状になったカーボンナノチューブがあります。

一般的に冷蔵庫の脱臭剤や、着色した高分子を除去するのに使用する活性炭はグラファイトの仲間のようです。ペンタダイヤモンドが実際に合成できればここに加わり、化学の教科書が書き換わることになります。

次にペンタダイヤモンドの性質をシミュレーションで調べ、安定した物質の候補であることを明らかにしました。物質を全方向から圧する力に対してはダイヤモンドの8割とやや劣るものの、一方向に引っ張る力には1.3倍、斜めにゆがめる力には1.8倍と、様々な向きの力の罹り方に対してきわめて強靭であることが分かりました。

密度はダイヤモンドの6割しかなく、中がスカスカで極めて軽い構造となるようです。実際に合成できればこうした性質を利用し、硬さが求められる材料や高性能の電極など、幅広い分野で利用できる可能性があります。

炭素原子というのは、生物の体の骨格の基本となっているだけではなく、エネルギーの生産など生命を維持する上で必須の元素となっています。

もちろんこの炭素は水素や窒素、酸素などと結びついた有機化合物ですが、炭素のみでも面白い性質が引き出せるというのは興味深いものです。今回の成果はまだ具体的な物質を作り出したわけではなく、その存在の可能性を証明したにすぎません。

ただ現在の科学技術によれば、ダイヤモンドの合成さえ可能になっていますので、ペンタダイヤモンドも比較的簡単に合成できるのかもしれません。

さまざまな炭素単体が身近なところでも有用なものになっていますので、早くこのペンタダイヤモンドが実際に合成され、どんな用途になるのか興味が持たれます。