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多発性骨髄腫の診断と治療

2020-08-29 10:05:37 | 健康・医療
多発性骨髄腫は血液のガンのひとつで、症状が多様なため診断に時間がかかるケースもある一方、近年は人間ドックで見つかる人も増えています。

血液のガンは白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫に大別されます。多発性骨髄腫は全体の1割程度ですが、近年患者数は増加傾向にあります。

国立がん研究センターの統計などによると「MGUS」と呼ばれるタイプを除き、年間約7500人が発症しています。患者の大半は60歳以上で、5年生存率は約50%とされています。骨髄は血液の元になる造血幹細胞から、赤血球や血小板、白血球を作り出します。

多発性骨髄腫は、白血球のひとつである「形質細胞」がガン化し、「骨髄腫細胞」となることで発症します。形質細胞には細菌やウイルスを撃退する抗体を作る役割がありますが、骨髄腫細胞は「Mタンパク質」という抗体を大量に作ります。

骨髄腫細胞やMタンパク質が体内をめぐると様々な悪影響を及ぼし、骨髄が正常に機能しないと貧血になり、動悸や息切れなどの症状が現れます。

Mタンパク質が増えると免疫機能が低下し、感染症の原因となります。血液循環を悪化させ、局所的に蓄積すると腎臓などの機能が低下し、むくみや頭痛、神経障害などを起こします。また骨髄腫細胞が増えると、骨を壊す細胞が増殖し骨が弱り骨折しやすくなります。

血中にカルシウムが溶け出す「高カルシウム血症」になり、口の渇きや腰痛などが出ることもあります。骨粗しょう症などの別の病気に間違われ、診断の遅れにつながることも少なくありません。

多発性骨髄腫は主に3タイプに分かれ、血液や尿の検査、腰椎に針を刺す骨髄検査、CTなどの画像検査で診断します。MGUSは骨髄腫細胞とMタンパク質が少量検出される段階で、自覚症状はなく定期検査で経過を見ます。

骨髄腫細胞などが一定量まで増えると、「無症状性骨髄腫」となり、ほぼ無症状で原則として治療はしません。次の段階に進む危険性が高いと判断された場合は薬剤の使用も検討します。

病気が進行し、貧血や腎障害などの典型的な症状が出るようになると、「症候性骨髄腫」と診断されます。65歳以下で持病がなければ、大量の抗ガン剤で骨髄腫細胞をたたいた後、患者本人の造血幹細胞を移植する「自家移植」を検討します。

66歳以上か持病がある人には、自家移植はせずステロイド剤や分子標的薬から複数の薬剤を組み合わせます。MGUSは10年間で10%の患者が、無症候性骨髄腫は65%の患者が、それぞれ症候性骨髄腫に進行します。

症候性の場合は完治が難しく、再発を繰り返すごとに薬剤の変更などで対処します。近年は新しい薬が次々と登場し、治療成績の向上が期待されています。こうした薬の組み合わせに迷ったときは、セカンドオピニオンで別の医師の意見を聞くことが良いようです。