世の中には自分ではどうしようもないことが多過ぎて…想い、悩み、惑い、
苦しみ、哀しみ、心憂いことが、次々と押し寄せてくるものです。
自分自身や家族の健康問題、経済問題、その上に自然災害やら社会不安
やら何やら、自分では解決不可能な大小さまざまな心配ごとが山積みです。
我が友人たちも、向老期を迎えて心身の不調に見舞われたり、配偶者や
老親の介護と向き合ったりで、落ち着かない日々を嘆じています。
しかし考えてみると人は年老いて衰え、やがてその生を閉じるのは当然の
道理で、受け止めるしか無いのです。『不老不死』が幸福かと言えば、浦島
太郎のおとぎ話に見る通り、はなはだなところでしょう。
『信仰』や『宗教』に馴染めない現代人は、心の拠り所とするものを持ち得ず
我が身を責めたり、問題から逃避したり、ただ右往左往してしまいます。
そのような時に心慰めてくれるものがあると、どんなに救われるでしょう。
それは人それぞれですが、ひとつに絵画、彫刻、音楽、文学、映画のような
先人たちが残した優れた芸術作品があるでしょう。
ただ観て聴いて感じるだけで、心を癒され励まされる力が在るように思います。
『輪廻転生』を持ち出すまでもなく、大昔から人々はこうして生を繋いできました。
従容として現実を受け止め、その中でも希望を忘れず努力することが、大切
なのでしょう。悩み多き我が友にも、そして自分自身にも、優しいアートの力を
届けたいと願う、春3月の雪の日でした。