内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

「結ぶ」、「繋がる」、そして死者と生者の共生 ―『君の名は。』『ちはやふる』『僕だけがいない街』などをめぐって(下)

2018-10-13 09:11:25 | 講義の余白から

 一方、「繋がる」の方は、完結編「結び」のDVDとブルーレイが10月3日に発売された『ちはやふる』(私が購入したのは同時発売の完全版の方。予約注文しておいたら、なんと発売二日後の5日にストラスブールに届いた)を「教材」として取り上げた。実写版は、三作ともフランスでは未公開(漫画とアニメはフランスでも一部入手可能だが、例えばアマゾンだとすべてドイツからの輸入版である)で、「上の句」も「下の句」もDVD・ブルーレイはフランス国内では発売されていない。日本版はリージョンフリーだからフランスでも視聴できる。
 『君の名は。』と『ちはやふる』の場合、「結び」「繋がる」(「繋がれ!」と千早が叫ぶ場面が「下の句」にある)という言葉がそれぞれの作品の中で実際に使われているわけであるから誰にとってもわかりやすい。
 他方、言葉としては出てこないが、何らかの仕方で、「死者と生者の共生」、「生者における死者の生命の持続」「死者による生者の再生あるいは変容」などがテーマあるいは通奏低音になっている作品も少なくない。
 授業では、時間の都合上、『僕だけがいない街』しか取り上げられなかったが、『君の膵臓を食べたい』にも当てはまる。映画ではないが、今年の第三クールでもっとも視聴率が高かったテレビドラマ『義母と娘のブルース』(ちなみに、私の個人的選考による2018年度テレビドラマ最優秀主演女優賞は、この一作だけで、綾瀬はるかに「満場一致で」決定済みである)も該当する。
 それぞれの作品をどう鑑賞しようと各人の自由だが、ある言葉に注目することで、それこそ作品間の「繋がり」が見えてくるし、一見異なったテーマを扱っているように見える作品を「結び」つけて見ることができるようになり、そのような見方によって日本の現在の姿がある観点から浮かび上がってくる。これが昨日の授業の結論であった。