フルール・ダンテルディ

管理人の日常から萌えまで、風の吹くまま気の向くまま

Dグレ「クロスXラビ」小説『wish』③

2009年04月19日 | Dグレイマン関連
注意!!
①これはいわゆるボーイズラブというジャンルの女性向け小説であり、同性間の恋愛を扱っており、性的表現を含みます。このジャンルに興味のない方、そのような内容を苦手とする方はお読みにならないよう願います。
②Dグレ「クロスXラビ」甘々ラブラブで、ややショタ気味です。基本設定は完全ショタです。このカップリングやラビ受けやショタが苦手な方はご遠慮ください。
③原作の設定は完全無視、また多数捏造しております。くれぐれも信じないように!(笑)また、前回の小説とは全く別設定で(一部同一設定あり)、続きではありません。
④文章の一部は、うっかり目に入らないように反転させることがあります。

  
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 ぱたぱたと廊下を行き交う音、女たちの甲高い声……薄暗い中で目覚めたラビは、自分が廻し部屋にひとり眠っていたことに気づいて、がば、と起き上がった。
 クロスの姿はなく、ラビは一瞬自分が夢を見ていたのかと思った。ただ灰皿に数本吸い殻が残っているのだけが、夢ではない証拠だった。
(眠りこんじゃうなんて……またいつ会えるかわからないのに……オレの大ばかやろー……)
 帰る気力もないほど落ち込んだが、そういうわけにもいかないので、のろのろと振袖を着付けて袂にイノセンスを放り込み、すっかり日も昇って女たちが襦袢と腰巻というあられもない姿でうろうろしていたり、男たちが部屋の片付けで忙しく往復している廊下へ、そっと出た。
「ちょいと、もみじ!」
 引付座敷から顔をのぞかせたのは、遣手の女だった。
「あんた、お客を見送らなかったわね。だらしなく寝こけてちゃだめじゃないの!」
「……すみません……」
 ラビはしおしおと洗面所へ向かった。
 すれ違う女たちの様子はいつもと変わりなく、幸い昨夜は何も起こらなかったようだ。これで奇怪現象が起こっていたら、とんだまぬけだ。
 ほっとしながらもまだ落ち込んでうつむいて歩いていると、向かいからやって来た女に肩を叩かれた。長いブロンドに派手な目鼻立ちの、確かロシアから出稼ぎで来ている女性だった。
「昨日の男、あんたの恋人なんでしょ?国から追っかけてきてくれたの?」
「え……」
 英語で話しかけてきた彼女は、廊下の端にラビを引っぱっていった。
「わたし、あんたたちの隣りの部屋だったのよ。言葉はわからなかったけど、最初けんかしてたじゃない。もしかしてここで働くこと、彼、納得してないの?あんただって嫌なんでしょ。事情は知らないけど、やめるなら今のうちよ?こんなに可愛がられてるんだから」
 彼女はラビの頬を指で突つくと、一方的にしゃべって行ってしまった。
 洗面所の鏡の前に立ったとき、ラビは彼女が最後に言ったことの意味がわかった。口の周りから頬にかけて、赤いものがべたべたとついていた。触って指についたそれを見て、口紅だと気づく。自分がつけていた口紅だが、自分の口にはほとんど残っていない。
 ラビはかっと頬を染めた。口づけでクロスの口に移ったそれが、逆に自分の顔についたのだ。たぶん、クロスにもついていただろう。ちゃんと気づいて拭いてから帰っただろうかと考えたが、彼は女とのキスなど慣れているだろう……。
 他の女たちがいなくなったのを見計って頭の布と眼帯をはずし、顔を洗いながら、先程の女の言葉を思い出す。
(恋人……だなんて、口に出したらあの人にいやがられそうだけど……そう思うだけなら、いいよな……?愛人の1人じゃないって……オレに惚れてるって、言ってくれたんだから……。そんなこと、オレに嘘つく必要なんかないもんな……?)
 以前のように一緒にいられなくても、昨日までのように二度と会えないと絶望する必要はない。いつかは会えると、そう思って生きていける。…それに、わかっていた。自分はブックマンで、彼はエクソシストで、いつまでも一緒にいられるわけではないことを。それが思ったよりも早かっただけのことだ。
 ぐっすり眠ったせいか、昨日よりずっと気分も軽い。会えないことを思い悩むより、会えたことを幸せに思おう、とラビは自分に言い聞かせた。
 帰ろうと玄関へ行き、草履を出したところで、番頭に呼び止められた。
「もみじ、花代忘れてるぞ」
 一瞬何のことかと思ったが、夕べはクロスが客として来たことを思い出す。払ったんだ、と驚いたが、考えてみればラビは身分を隠して潜入しているのだから当然だった。自分はもしかしたら、あのクロス・マリアンに、初めて花代を払わせたのだろうかと、複雑な気分になる。彼が実際に払った金額には全然足りないだろうが、これはいつか返そう、と帯にはさみこんだ。
「今朝帰った客、今夜6時から予約入れていったからな。休んだり遅れたりするなよ」
 え、と顔を上げると、番頭がにやにやと笑っていた。
「お前のことが気に入ったみたいだぞ。1人で降りてきたからお前を起こしに行こうとしたら、疲れているようだから寝かせておいてやってくれ、だとよ。あのガタイ相手にがんばったようだな?」
 ラビは顔に血を昇らせた。体温が急上昇し、全身から汗が噴き出す。
「そんな……あの……」
 しどろもどろになって、慌ててその場から逃げ出した。女たちのあけすけな会話を聞くのには慣れたつもりだったが、自分がその当事者になるのは恥ずかしくていたたまれなかった。それに……
(今夜も…来るって……。どうして……)
 ブックマンに頼まれたのか、という問いに答えてはくれなかったが、そうでなかったとしても、心配はされてしまったのかもしれない。調査を始めてから4日間は何の収穫もなく、これ以上居づらくなってもいた。昨日クロスが来てくれて、客も取らず何のためにいるのかとあやしまれる可能性もなくなって、実際のところとても助かった。もっとも、貴重な一夜を寝て過ごしてしまって、何の調査もできなかったのだが。
(今夜こそ…ちゃんと探さないと。とはいえ、奇怪現象が起きてくれないことには見当もつかないんだよな。現象が起き始めたのが3、4か月前だというんだから、この場所に昔からあるものじゃなくて、そのころ外から持ち込まれたものだとは思うんだけど)
「ただいまー…」
「おかえり」
 ブックマンは読んでいた本からちらりと目を上げ、また視線を戻した。草履を脱いで上がりこむ間にラビは全部脱ぎ捨て、長襦袢1枚になって畳の上に座り込んだ。小さな台の上の皿には、大きなおむすびが2つ載っていた。
「ありがと、じじい。いただきます」
 片手で頬張りながら、腰紐も解いてしまう。そうすると締めつけるものがなくなって、やっと解放された気分になる。1個目を平らげて空腹が落ち着いたところで、ラビはそっとブックマンの背中に声をかけた。
「……じじい……もしかして、クロスと会った……?」
「ああ。お前のところにも行ったか?」
「う、うん……」
 頷いてから、昨夜のことを思い出し、赤くなりながら慌ててつけ加える。
「来てくれて、助かったさ。やっぱ逃げ続けるのは苦しくなっててさー」
「ワシは何も言っとらんぞ。お前の任務と、店の名前は教えたが、行ってくれとは頼んどらん」
「……ああ……そう……」
「言えば、行くとは思っとったがな」
「へ……」
 ラビは口の端からこぼれかけた塊を、指で押し込んだ。
「なんでさ…?」
「あいつはお前を甘やかしているからな」
「………」
 ブックマンはまた読書に戻った。ラビはもぐもぐと最後の一口を食べ終えた。
「……でもさ、じじい」
「なんだ」
 指についた米粒を舐め取る。
「クロスが行くと思って言ったってことは、じじいはそれ以上にオレを甘やかしているってことじゃねえ?」
 ブックマンの跳び蹴りが、ラビの頬に決まった。吹っ飛んだラビの手前に着地すると、何ごともなかったように彼は席に戻った。
「お前が未熟者だからだ。馬鹿者が」
 畳の上に倒れたまま、ラビは頬をさすりつつ、声を出さずに笑い転げた。

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 こっちの甘々設定では、ラビのことをじじいとクロスがめちゃくちゃ甘やかして育てたっつーのがワタクシの妄想です・・・けど、原作読んだって、じじいはラビのことめっちゃかわいがってますよね~~。マイ設定ではブックマンはクロス10歳から15歳までを後継者として育てたことになっておりますが、10歳のときすでに自分を見下ろすようなガタイで、くそ生意気で、11歳で娼婦のおねーさんと筆おろしするような(もちろん、気に入られてだからタダで!おねーさん、あとで年齢知って驚愕!16、7のハンサムな坊やだと思っていたという・・・←言うまでもなく、幸田の勝手設定)かわいくないガキだったクロスと違い、まだちっちゃくて、うるうるしたでっかい目で「じーちゃん」(人前ではそう呼ばせている)などと呼ぶ素直なラビに、めろめろになったわけですな!修行は厳しく、しかしそれ以外はただの「じじばか」だったというのが、ワタクシの萌え萌え妄想でございます・・・

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