チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

技術の伝承

2011年06月08日 11時21分19秒 | 日記
ここのところきもの業界は後継者の不足におびえている
きものに限らず
日本の手仕事の後継者は何処も同じだ

輪島や唐津に取材に行っても
最後の質問は必ずこの技術の存続の危機を訴えられる

我が秋櫻舎の関係者である
帯仕立ての加藤さん
悉皆屋の高橋さん
あとを継ぐ人はいない

お二人とも70歳を超えているので
「どうするんですか?」
「終わりだね」
とサッパリといわれると
「そうなんだ」と変に納得してしまう

帯の仕立ては相性がある
名古屋帯など特にプカプカ布に袋が出来たらお終い
袋帯はまあまあ合格点をあげられても
名古屋帯はなかなかーーー
40年以上きものを着てきて
帯の仕立て職人に中々めぐりあえなかった

普通の人に仕立ててもらうと帯姿がピシッと来ない
そういう不満をだれかれかまわず訴えていたら
「加藤さん」を紹介していただいた
苗字がチャコちゃん先生の旧姓であることも気に入って
もう20年のお付き合い

「この人ミシンで仕立てているの?」
「なぜ?」
「あまりにも糸目が小さくて揃っているから」
「其れが名人芸よ」

帯の命は締め易さはもちろんだが
後ろに収まったときどれだけその人の体に添っているかだ

加藤さんは締める人の体型を知っているわけはないのに
帯がその人の後姿をその人らしく見せてしまう

帯の仕立てをお願いするとき
締める人の寸法をお知らせすることもある
細い人は手先をちゃんと加減して締め易くしてくださるし
胴回りに肉のある人は幅を微妙に広げたり
長さをちゃんと計算してくれる

帯を結ぶ時間がトウゼン短縮されていく
無駄な布の遊びがないからダガーー

擦り切れたけど気にいっている帯は
まだ使えるように知恵を出してくれる

今月の「つれづれ」フリーペーパーは
ヨシダが加藤さんを取材してその感激を書いてくれる

高橋さんも
「絹なんてあんまり洗わないほうがいいよ、自ら綺麗にする能力持ってるからね」
絹の能力をしっかりと信じている人たちが少なくなっていくことが哀しい

こういう土台をしっかりと生きている人たちが多くなる社会にしたい

「きもので日本の国づくり」
コメント
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