通販の買い物の受取で職場近くのコンビニを訪れたとき、私の後から隣のレジに前の職場でご一緒させていただいた方がやってきた。先方は気付いているのかいないのか知らないが、特に声をかけられるようなこともなかったので、そのままやりすごした。私の方はその方のお名前が思い出せなかったので、こちらからも声をかけるというようなことはしなかった。たまたま、そのコンビニを出た直後、前の職場でご一緒させていただいた別の人を見かけた。先方はこちらに気付いていない様子だったので、やはりこちらからは声をかけなかった。この人の名前も思い出せなかった。この方々に個別具体的な思いは全くないのだが、前職関係の記憶だけが特に薄くなっていく気がする。先日、知り合いの職業斡旋業者の方からお電話を頂戴し、前職でご一緒させていただいた方のことをあれこれと尋ねられた。最初、彼が誰の話をしているのかわからなくて、噛み合ないやりとりになってしまった。電話を置いてから漸く思い出して、こちらから電話をかけ直してお話しをさせていただいた。その尋ねられた方とは在職中比較的良好な関係を維持していたにもかかわらず、咄嗟に思い出せなかった。私の加齢による記憶力の低下は当然あるにしても、前職の1年ほどのことだけが、なぜか記憶のなかから急速に失われているのである。その同時期の仕事以外のことは鮮明なので、おそらく自己防衛本能によって不快なものが除去されているのだろう。人の名前を思い出せない、というと、よく老化現象や病気と捉えられたりするのだが、こういう物忘れは身体が健康である証拠なのではないだろうか。