熊本熊的日常

日常生活についての雑記

塔影能

2015年10月03日 | Weblog

夜、興福寺で塔影能を鑑賞する。塔影能というのは、東金堂に奉納する能狂言だそうだ。東金堂前に能舞台が設えられ、観客も含めて総礼、それに続く僧侶による読経で会が始まった。能狂言について知見があるわけではなく、たまにこうして鑑賞するだけなので舞台のことについては何も語ることができないのだが、演者がマイクを付け、音声が舞台脇のスピーカーから轟くことには違和感を覚えた。能というのは、そもそもが神事のようなものであろう。だからこそ、主役はあの世から戻ってきた人々であり、現世とあの世をつなぐかのような物語が展開するのではないのか。つまり、儀式であるのだから、そこで執り行われる一挙手一投足・発声発話には全て意味があり、またそれらの組み合わせや展開にも理屈があるはずだろう。もちろん、時代の変化に応じて手直しされたところもあるだろうが、基本は同じはずだ。音声にしても、地謡と台詞や楽器の音と重なることでその場の空気が意味のある変化をするはずだろう。音は空気の振動なのだから、生の音曲を前提に能はできあがっているはずだ。それを特定の音だけ取り出して増幅したり、発せられる場所とは異なるところから流れ出してしまっては、本来できあがるはずものが破綻してしまうのではないか。仏様もさぞかし驚かれたことだろう。

演目は以下の通り。

舞囃子 天鼓
 大鼓 高野彰
 小鼓 成田達志
 笛  藤田六郎兵衛
 地謡 澤田宏司、山内崇生、和久荘太郎、辰巳大二郎

狂言 寝音曲
 茂山茂、丸石やすし
 後見 島田洋海

能 葛城
 辰巳満次郎、福王茂十郎
 大鼓 高野彰
 太鼓 上田悟
 小鼓 成田達志
 笛  藤田六郎兵衛
 間  網谷正美
 地謡 木下善國、山内崇生、渡辺珪助、武田尚史、植田竜二、佐野登、辰巳大二郎、和久荘太郎
 後見 澤田宏司、辰巳和麿