熊本熊的日常

日常生活についての雑記

「休む」ということ

2016年05月03日 | Weblog

今では「休む」ことが当然の権利のように語られている感を受けるのだが、本当にそれは「権利」なのだろうか?例えば職人に休日というものはない、と言われる。農業だって自然相手なのだから、人間の都合で勝手に休むわけにはいかないだろう。一方で、昨今しばしば話題になるバスやトラックの運転手のように十分休養を取って体調を整えて仕事に臨んでもらわないと深刻な不都合が生じる類の職業もある。当然といえば当然だが、生活のサイクルは人それぞれの状況によって様々で、一律に日に三食とか、週休ン日とか、労働時間の規制とか、敷かれるものではないはずだ。

妻が連休に普段の週末よりも少し遠くに遊びにでかけたいという。一昨年の5月の連休には遠山記念館を訪れ、昨年は鎌倉にでかけてきた。ささやかな遊びである。今日は益子に出かけてきた。当初は静岡に行って、県立美術館と芹沢介美術館を見てこようというような会話をしていたのだが、天気予報が芳しくなく直前までぐずぐずしていたら新幹線の切符を取り損なってしまったので、在来線を乗り継いで行ける範囲でということで益子になった。何か目的があっての益子ではないので、経路などは特に考えていなかった。

後段に益子までの往復について記載するが、道中の車窓に広がる田畑ではどこも農作業の真っ最中であった。田圃には綺麗に苗が植えられ、田植機を操作する人の姿がぽつぽつと見える。畑も手入れがされていて、ところどころに作業中と思しき人影が見える。そういうなかをいかにも行楽客という風情の人々で混み合った列車が走り抜けるのである。そういう風景をなんとなく面白いと感じた。

別に休日だからといって遊びにでかけなければならないわけではないのだが、そうしないと家庭人としての義務不履行であるかのような空気が漂う家庭というのはあるだろう。遊びたい人は事情の許す範囲内で遊べばいいだけのことで、働きたい人は誰に気兼ねすることなく働けばいいだけのことだと思うのだが、世間では何事も「管理」しないと気が済まない人たちが要所要所にいて、労働時間の管理だとか休日取得を強制するかのような仕組みを作りたがる。私の職場も主に不正行為防止という観点から、職種によって連続5乃至10営業日の休暇取得が義務付けられている。

休みというのは心身を休めることだと思うのだが、義務付けられたり強制されたりする「休み」は果たして「休み」なのだろうか?そういう「休み」があることが生活の豊かさなのだろうか?

益子では陶器市の真っ最中で、たいへん賑わっていた。自分が陶芸をやっているのに、陶器市に並ぶ作品には全くと言っていいほど興味を覚えなかった。ところどころで営業中の店や屋台をひやかしながら、そういう雑踏を通り抜け、益子参考館を訪れた。陶器市の賑わいが嘘のように静かな空間が広がっていた。この空間に出会うことができただけで、今日は益子まで出かけてきて本当によかったと思えた。

ところで、今日の道中だが、自宅から益子までの経路をネットで検索をしてみたら、秋葉原から高速バスがあるというので、それに乗れたら乗ろうということになった。そのバスは予約を受けるということはせずに先着順で乗車するとのことなので、普段よりも早起きをして出かけた。満員で乗れなれけば、そのとき別の手段を考えることにした。

自宅最寄りの駅を7時31分に出る電車に乗って市ヶ谷に行く。
市ヶ谷から8時04分発のJR総武線各駅停車に乗り、秋葉原には8時13分に着いた。ホームから地上階へ降りる途中、高速バス乗り場に長蛇の列ができているのが見えた。念のため、その列が益子行きのバスの列であることを確かめ、列の後ろに並んでみた。程なくバス会社の人が臨時でバスの手配中であること、そのバスが到着するのが9時過ぎになる見込みであることを、大きな声で説明して回ってきた。ちょうど秋葉原なので、つくばエクスプレスに乗ってみることにした。以前、仕事でつくばへ出かけて帰社する際に利用して、その「エクスプレス」感に感心したので、妻にそのことを話して乗ることにしたのである。

秋葉原発8時30分の快速に乗り、守谷に9時03分到着。
守谷からは関東鉄道常総線に乗り換え、9時11分発の水海道行き(2両編成)に乗る。
水海道で9時23分発の列車(1両編成)に乗り、下館に10時13分到着。

関東鉄道に乗るのは何年ぶりだろうか。昔、仕事でキヤノンを担当していたことがあり、水海道にあったキヤノンアプテックスに何度かお邪魔した。当時の勤務先を辞めたのが1998年9月で、キヤノンアプテックスのほうも2003年に同じキヤノンの子会社であったコピアと合併してキヤノンファインテックになっている。常総線は車体のカラーリングは変更されていたが、車体自体は当時と変わっていない気がした。相変わらずのディーゼルカーで、しかも水海道で乗り換えた列車は1両編成で、なんだか妙に嬉しかった。

下館からは真岡鐵道に乗り換える。蒸気機関車が牽引する特別列車があり、ホームには長蛇の列ができていたが、入線していた10時17分発の茂木行きに乗る。乗客が多くて発車が遅れているようだったが、単線で途中2回すれ違いのための待ち合わせがあったので、益子に着く頃には定刻になったのではないだろうか。11時過ぎに益子に着いたが、料金の支払いの順番待ちもあり、初めて下車する駅の物珍しさもあり、駅構内でしばらく時間を費やす。関東鉄道はスイカやパスモが使えるのだが、真岡鐵道のほうはそういうものが使えず現金決済で下車の際に支払うので、今日のように乗客が集中すると臨時の窓口を設けても多少時間がかかることになる。これは仕方がないと思う。

益子からの帰りはバスで宇都宮に出ることも考えないではなかったが、道路の渋滞が酷かったので真岡鐵道を利用することにした。益子駅には15時少し前に着いた。ちょうど15時01分発の下館行きSL列車がある。出札の人に尋ねたところ、500円の追加料金で乗車可能とのことだったので思いがけなく蒸気機関車が牽引する3両編成の列車に乗車することになった。この列車は一部の駅を通過して15時56分に下館に到着した。下館からは以下の経路だ。

下館発15時59分発JR水戸線普通列車小山行きに乗り、小山に16時20分到着。
小山発16時33分発JR上野東京ライナー熱海行きに乗り、赤羽に17時39分到着。
赤羽発17時42分発JR埼京線新木場行きに乗り、新宿に17時57分到着。
新宿発18時07分発京王線準特急高尾山口行きに乗り、途中各駅停車に乗り換えて18時半過ぎに自宅最寄駅に到着。