昨年の12月にみんぱく友の会の体験ツアーで九州を訪れたとき、村岡総本舗の村岡安廣社長から『男はつらいよ』のロケ地だったという小城の須賀神社前で当地の説明とか小城羊羹の話を伺った。もちろん村岡総本舗本店と羊羹資料館にもお邪魔させていただいた。そのときのことはこのブログの2015年12月3日付「羊羹」に書いた。その『男はつらいよ』が観てみたくて東京に帰ってすぐにBook Offで入荷のお知らせメールを設定した。それから1年近くなって一昨日メールが届いた。それだけでは送料が無料にならないので、小城が登場する42作に加えて第1作を併せて購入、本日午前中に手元に着いた。
第1作も第42作も観てみたが、改めてすごい作品だと思う。悪人がいない世界だ。それは落語の世界に通じるものがある。悪人なくして作品を成立させることができるのは世界観の根底に人間というものに対する全幅の信頼があるからだろう。リアリティに拘る向きには評価されないのかもしれない。現象の表層に注目するのであれば、この作品に限らず映像作品、もっと言えば作為の結果というものは遍く非現実的であり夢物語ということになるのだろうが、深層というものは結局のところは誰にもわからないのである。娯楽作品は夢でよいのであり、また、夢でなければならないのだと思う。
『男はつらいよ』という映画シリーズが48作を重ね、主人公役が生きていればさらに回を重ねる可能性があったこの社会、この時代、この国に生きたことを素朴に嬉しいと思う。