今日、ようやく黒潮町役場から黒砂糖の契約書が送られてきた。ここ数年、毎年買っている黒砂糖である。例年は9月中に契約を完了していたのだが、今年はこれまでの担当部署が廃止になったとかで、こちらから問い合わせの手紙を出してもなしのつぶてだった。9月初旬に一釜オーナーの募集案内が届き、同封されていた葉書に必要事項を記入して投函、そこからさらに無音期間が続いて後、今日を迎えたのである。案内状によれば昨年まで本件を担当していた黒潮町特産品開発推進協議会が今年3月末で業務を停止したのだそうだ。おそらく、業務の引き継ぎがなかったのだろう。引き継ぐほどの業務がなかったから業務を停止したということなのかもしれない。勝手な想像だが、私のような変わり者がここの黒砂糖を愛用していて、今年はどうなっているのかと問い合わせが入るようになり、仕方なく似たような名称の黒潮町産業推進室が少なくとも黒砂糖の件については引き継ぐことになったというようなことなのだろう。去年の案内状には精製設備を増設したと書かれていたので、生産者の側からも何がしかのことがあったのかもしれない。今だから言うわけではないのだが、このようなニッチな商品の生産設備を増強したという時点で何か妙なことが起こっていると感じた。
平均的な所帯が砂糖にどれほどの消費支出を振り向けているのか知らないが、600gの包みが1,337円で地元の道の駅などで販売されているそうだ。一釜単位だと約21kgで43,200円なので単価は多少下がるが、それでもスーパーなどで当たり前に販売されている白砂糖とは比較にならない。その上、この黒砂糖は固形なので使うときには削るなり砕くなりしないといけない使い勝手の悪さがある。それでもこの砂糖が気に入って毎年注文している人がいる。何年か前に自分の陶芸作品をギャラリーカフェで販売したことがあるが、出品した50近い作品をほぼ完売した。いわゆるマスの世界から外れているが根強い需要のある世界というものが確かに存在しているのである。マスのほうは放っておいても大型資本が需要を満たす。役所が敢えて「産業推進」を謳うなら、マスから外れたところに焦点を当てずに何をしようというのだろうか。
誰もが思いつくようなことを「推進」するのは民間に任せておけばよいのである。目先の結果ではなく大所高所に立ったことをするのが公務員だからこそ、公務員の雇用は保証されていて、雇用保険に入っていないのではないのか。目先の価値を生むことなどなにもしてこなくとも退職後も手厚い手当てをもらえるのは、目先のことではないことで価値の芽くらいは生むという大前提があるからなのではないのか。きちんと継続できないような「産業推進」しかできないなら、町丸ごとなくなってしまえばよいのである。