少しばかり自意識過剰なタイトルだと思うのは私だけだろうか。三菱一号館美術館で開催中の開館記念展第二弾は岩崎家と三菱ゆかりのコレクションの展示だ。それほど大きくもない展示スペースに、絵画、古書、屏風、茶道具、ポスターと脈絡無く並べたら、ただの野暮だ。オフィス街に採算度外視の美術館を建てようと企画しながら果たせなかった「夢」が今ようやく実現しました、というが、だから何なのだろう。三菱グループの創始者たる岩崎家の人々はそういう文化人だったのですよ、と強調したいのは司馬遼太郎の「竜馬がゆく」に描かれている岩崎弥太郎のイメージをひっくり返したいから、と思うのは穿ちすぎだろうか。
ひとつひとつの作品はどれも一見の価値のあるものばかりである。いわゆるコレクターのお宅にお邪魔をして、こんな雰囲気で蒐集品を拝見させていただくというのなら、これで十分だろう。しかし、「美術館」と名乗って客から木戸銭を取るのなら、もう少し頭を使った展示をしないと、ちょっと寂しい。今回の展示は静嘉堂や東洋文庫の収蔵品が目立つのだが、三菱グループのなかで複数の文化施設を運営するからには、それらの役割分担というものがあってしかるべきだろう。今回の企画は何を見せたいのか、何を語りたいのか、というところが感じられない。日本を代表する企業グループの美術館がただの成金趣味というのでは、景気低迷が長期化して日本経済の地盤沈下をひしひしと感じているなかであるだけに、一層がっかりさせられる。
開館記念第一弾のマネ展が良かっただけに、第二弾でいきなりこけてしまっては残念だ。岩崎と言えば、上野の岩崎邸も悪趣味だ。金をかけているのはよくわかるが、美意識が感じられない。こうしたものを見ると、「竜馬がゆく」は歴史小説であってノンフィクションではないのだが、岩崎という人はほんとうにああいう人だったのではないかと、妙に納得ししてしまう。
今回の展示のなかで面白いと思ったのは日本郵船とキリンビールのポスターのコーナーだ。どちらの会社のポスターも、作られた当時において世界のどこに出しても恥ずかしくない出来映えだったと思う。下手に中途半端な絵画や骨董を並べるよりも、会場全部を使って三菱グループのポスターの秀作ばかりを集めたほうが余程面白いものになったのではないだろうか。明治維新のどさくさのなかで生れた企業はいくらもあるが、今日に至る巨大企業グループを成したのは三菱と安田くらいのものだろう。他は三井や住友のような明治以前からのエスタブリッシュメントか、自動車や電機のようなコアとなる製品を元に勃興した企業グループ群が現在のこの国の中核を担っている。明治というたかだか45年ほどの時代に一気に急成長を遂げたというのは、やはり経営者の尋常ではない才覚があったということだろう。その才気の片鱗が商売道具である商業ポスターに表れているように思う。
帰りにミュージアムショップでポスター集でも買おうと思ったのだが、そういうものは売っていなかった。何故無いのだろうかと不思議に思う。是非出版して欲しいと思う。できれば大判で、カラーで、細々とした背景説明やデータも盛り込んで、売価1万円以内で、なんとかならないものだろうか。
ひとつひとつの作品はどれも一見の価値のあるものばかりである。いわゆるコレクターのお宅にお邪魔をして、こんな雰囲気で蒐集品を拝見させていただくというのなら、これで十分だろう。しかし、「美術館」と名乗って客から木戸銭を取るのなら、もう少し頭を使った展示をしないと、ちょっと寂しい。今回の展示は静嘉堂や東洋文庫の収蔵品が目立つのだが、三菱グループのなかで複数の文化施設を運営するからには、それらの役割分担というものがあってしかるべきだろう。今回の企画は何を見せたいのか、何を語りたいのか、というところが感じられない。日本を代表する企業グループの美術館がただの成金趣味というのでは、景気低迷が長期化して日本経済の地盤沈下をひしひしと感じているなかであるだけに、一層がっかりさせられる。
開館記念第一弾のマネ展が良かっただけに、第二弾でいきなりこけてしまっては残念だ。岩崎と言えば、上野の岩崎邸も悪趣味だ。金をかけているのはよくわかるが、美意識が感じられない。こうしたものを見ると、「竜馬がゆく」は歴史小説であってノンフィクションではないのだが、岩崎という人はほんとうにああいう人だったのではないかと、妙に納得ししてしまう。
今回の展示のなかで面白いと思ったのは日本郵船とキリンビールのポスターのコーナーだ。どちらの会社のポスターも、作られた当時において世界のどこに出しても恥ずかしくない出来映えだったと思う。下手に中途半端な絵画や骨董を並べるよりも、会場全部を使って三菱グループのポスターの秀作ばかりを集めたほうが余程面白いものになったのではないだろうか。明治維新のどさくさのなかで生れた企業はいくらもあるが、今日に至る巨大企業グループを成したのは三菱と安田くらいのものだろう。他は三井や住友のような明治以前からのエスタブリッシュメントか、自動車や電機のようなコアとなる製品を元に勃興した企業グループ群が現在のこの国の中核を担っている。明治というたかだか45年ほどの時代に一気に急成長を遂げたというのは、やはり経営者の尋常ではない才覚があったということだろう。その才気の片鱗が商売道具である商業ポスターに表れているように思う。
帰りにミュージアムショップでポスター集でも買おうと思ったのだが、そういうものは売っていなかった。何故無いのだろうかと不思議に思う。是非出版して欲しいと思う。できれば大判で、カラーで、細々とした背景説明やデータも盛り込んで、売価1万円以内で、なんとかならないものだろうか。