●JASM(堀田祐一代表・熊本県菊陽町原水4106−1)は、台湾の半導体メーカーであるTSMCが過半数を出資して熊本県に設立した子会社で、国境を跨ぐ誘致企業だが、誘致したとされるのは尽力した国ではなく熊本県(蒲島前知事談)。
●そのJASMで、外部の半導体関係者から「旧式の40ナノの製造」と酷評された第一工場に続いて、「期待の6ナノ」と注目される第二工場の計画がスタートした途端、「羊たちの沈黙」と情弱な資質を冷評される熊本県野党地方議員の真ん前で、「18億円の損失」という自治行政の大失態が浮上。
●その国民1人当たり1万円の損失に換算される失態の中身については、その実態を背景と経緯を添えて5回の既報で述べたが、ここではこの30年間、執行部のチェック役を何ら果たさず、不似合な議員バッヂを着けた愚かな羊らに向けて、大失態とする理由を基本から述べる事にした。
●そもそもJASMには国からの約1兆2000億円という超巨額の助成金もあるが、該当工場の用地収用は企業誘致として『公共事業』に該当。よって土地収用は認定庁(国交相・都道府県知事)が付与し、実務は大方が認定庁の代行として該当市町村が担う。即ち、企業誘致の用地収用において『投機を目的とした民間事業者の参入は認められない』とされる(所有者の意思に反して強制的に土地を取得する土地収用法の対象となる場合は、民間事業者の参入が認められる)。
●ところが該当の第二工場計画と同時にスタートした菊陽町の藤本寿新町政は、それこそ情弱で疑問符の打たれる自治能力により東築建設(甲斐浩二代表)、アスク工業(上村信敏代表)、坂本建設(坂本俊正代表)の地元3業者による工場用地収用を許し、加えて自らが代表を務めるサンケイ地所と一緒に地方公務員特別職を棚に上げた福島知雄同町議長(デレクト・奥村正史代表代行)、山口組元直参組長の同収用への参入までを放置。
●またJASMを誘致したとする熊本県は、山口組元直参組長の介入にはさすがに慌てて対策会を開いたものの、出て来た回答は「民と民との処理に任せた」(脇坂真智子企業立地課長)と奇想天外な責任転嫁論。
●県内の臨海工業団地、大津町の工業団地、ましては該当企業の第一工場用地収用の通り町(後藤前町政)が地権者との説明会を開き、坪単価の上限を決めての法、条例通りの執行を執っていたとすると問題など何ら浮上しなかった訳だが今回、仮登記抹消代を含む仲介料で約18億円(複数の関係者談)の支出が発生。
●裏を返せば同18億円は公益事業とする誘致企業への損失であり、助成金絡みと注視する側には国民1人当たり1万円の無駄金。
●誘致企業の用地収用には特例を除き、投機目的の民間事業者の参入は認められない訳だが、それでも浮上した「元暴5年条項」を上げての自由市場という主張に応えると、「元暴5年条項」は民と民との取引でもコンプライアンス上で中身が問われ、まして公共事業では一般的にアウトの状態。しかも大開発、農地転用を事前に承知し、その上で農地法第三条の仮登記(農地の耕作継続を目的とした売買約束)など通用する訳がなく、それに加えて坪25万での販売広告、また仮登記抹消での1億円からの商談を考えると目的が投機に在ったのは事実で、明らかに公益事業所の土地収用ではアウト。
●町議長の同参入にしても地方公務員法から問う声も一部にはあるが、約18億円の損失、無駄を発生させた元々は、法のルール通りの執行を怠った菊陽町、熊本県の責任。その責任が未だ出て来ないのは熊本県の風土、「羊たちの沈黙」という特異性にあるのか。
●週刊誌やテレビは「バブルで潤う菊陽町」というタイトルを好んで使うが、同町の農家が町外に耕作地を求めたり、また店舗と一緒に熊本市へ引っ越す飲食店の話題が出ると、JASMの「共存共栄」は何処へ飛んだかと考えさせられる。これは、明らかに貧しき自治能力の原因。
●仮に県外の関係機関により該当問題が明るみになるとか、同じく県外から告発でも出ると、「政権交代こそ最大の政治改革」とか「憲法こそ希望」など叫んで走れ回れなくなる日がいずれ来る…。