万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

プロパガンダ映画の時代に幕を下ろしては?

2009年05月24日 15時16分55秒 | 国際政治
「南京!南京!」上海で日本人向け上映会 賛否分かれる(朝日新聞) - goo ニュース
 ナチスやソ連邦を始めとして、全体主義国家では、国民の思想コントロールの手段として、国家がかりでプロパガンダ映画が作成されてきました。21世紀に入ってもこの手法が完全に放棄されたわけではなく、「南京!南京!」もまた、中国共産党の国策映画の一面があることを否定することはできません。

 しかもこの作品は、グローバル化の波に乗って海外での放映をも意図しているらしく、国内向けに留まらず、対外的なプロパガンダの手段ともなりそうです。監督の弁によりますと、”南京”を描くことで”反戦を訴えたい”とのことですが、伝えられる内容を読む限りでは、日本軍の虐殺行為を広報しようとする意図は明らかです。あるいは、”南京”をテーマとすれば、当局の許可が容易におりますので、アジアの軍事的な脅威となった自国の行動を暗に戒めるために作成された、とする高等戦術説も成り立つかもしれません。対外的な批判が、実は自国の体制批判であることが中国ではよくあることだからです。

 少なくとも、今日では、プロパガンダ映画を作成しましても、観衆の側も最初からプロパガンダであると分かっていますので、政府が目論むほどの宣伝効果はないはずです。むしろ、作品の解釈をめぐっては、国際的な摩擦を高める可能性もありますし、また、自国においても物議を醸すことになりますので、そろそろプロパガンダ映画の時代に幕を下ろすべきとも思うのです。

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