万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

毛沢東批判―中国の立憲主義の試金石

2010年05月12日 15時36分24秒 | アジア
毛沢東を痛烈批判 “中国最高の歴史教師”ネット講義(産経新聞) - goo ニュース
 信じられないかもしれませんが、中国の憲法の第35条には、「中華人民共和国の公民には、言論、出版、集会、結社、行進、示威の自由を有する」という条文があります。これまでの中国では、憲法は、”あってなきが如し”の状態にあったのですが、痛烈な毛沢東批判を行った歴史教師の方に対する中国政府の対応は、中国が、近代国家であるか否かを測る試金石になると思うのです。

 近代国家では、憲法は、国の基本的な仕組みを定めるとともに、国民の自由、権利、義務をも定めています。立憲主義とは、公権力は憲法に従うべきことを意味する原則であり、政府が、憲法に違反することは許されてはいません。憲法に保障された言論の自由を盾として毛沢東批判を行った歴史教師の方は、過去にむかって毛沢東を批判をするとともに、現代にむかっては、中国の立憲主義と権力分立をも問うていることになるのです(第126条では、司法の独立を定めている)。もちろん、中国でも国民の自由と権利の濫用は制限されていますが(第51条)、事実に基づく批判を当局が取り締まるとなりますと、中国は、言論弾圧国家として姿を晒し、国際的にも非難を浴びることになりかねません。共産主義を守れば立憲主義を捨てることになるという、ジレンマに陥ることになるのです。

 歴史教師の方の毛沢東批判を支持する中国人も少なくなかったはずです。身の危険を顧みずに、毛沢東批判を行った歴史教師の方の勇気が、中国の将来にほのかな光を照らすことを願うばかりです。


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コメント (13)
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