万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

暴力主義がタイを蝕む

2010年05月16日 16時03分33秒 | アジア
休業1か月以上、タイ経済損失1080億円?(読売新聞) - goo ニュース
 かつてタイには、国民の多数が敬虔な仏教徒であり、暴力主義とは最も遠いところにあるというイメージがありました。しかしながら、ここにきて、政府とタクシン元首相派との対立は、民間人をも巻き込んだ激しい暴力による闘争に発展しているようです。

 この事件の背景については、詳しくは分からないのですが、立憲主義と民主主義の原則に照らしますと、第一義的には、タクシン元首相派の方に非があると考えられます。

 第1に、タクシン元首相派は、「反独裁民主戦線」という名の組織を擁しているようですが、この組織の名称は、民主主義と暴力主義との結合、つまり、革命主義を示唆しています。戦線とは、闘いの前線を意味するのですから。

 第2に、たとえ政府に不満があったとしても、それを暴力で解決することは、自由主義国の民主主義のあり方ではありません。タイの憲法も、こうした暴力主義を許してはいないはずです。

 第3に、タクシン派は、治安の悪化がタイ経済に深刻な打撃を与え、自らが起こした混乱が、国民生活を悪化させていることに対して責任を感じていないことです。タクシン氏が、真の民主主義者であれば、まずは、国民の暮らしを最優先にするはずです。

 暴力主義の根絶こそ、タイが、安定を取り戻すために必要なことなのではないかと思うのです。

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