万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の賃金上昇は貿易不均衡を是正する

2010年05月29日 15時52分53秒 | 国際政治
日本人駐在員との給与格差「50倍」やり玉 中国ホンダ系工場スト(産経新聞) - goo ニュース
 ギリシャ危機の余波を受けて、アメリカ政府の中国政府に対する元安是正要求も、トーン・ダウンしているとの報道があります。中国が、貿易黒字と外貨準備を積み上げる構図は、貿易不均衡として非難されていますが、もう一つ、対外通貨政策以外に貿易不均衡を是正する方法があるとしますと、それは、中国における賃金の上昇ではないかと思うのです。

 中国製品の競争力の源泉は、元安のみならず、労働賃金の低さにもあります。多国籍企業が、こぞって中国に工場を建設するのも、人件費を大幅に削減できるからです。ストが起きている中国ホンダ系工場では、女性従業員の手取りの給与が日本円で1万3500円程度とのことですので、先進国との間の給与水準の差は歴然としています。もし、伝えられるように、”同一労働同一賃金”の原則の下で、中国人従業員の給与がアップするとしますと、製造拠点の中国移転にブレーキがかかる可能性があります。また、給与のアップ分は、商品価格に上乗せされますので、中国製品の輸出価格も上昇し、グローバル市場における輸出競争力も低下します。

 中国国民にとっては、給与が上がることは喜ばしいことですし、貿易不均衡と雇用流出に苦しむ他の諸国にとっても、朗報となります。歪んだ構図は、どこかで調整されなければならないと思うのです。

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