万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

危ない中越関係改善―”虎を野に放つ”ことに

2014年08月28日 15時22分11秒 | アジア
 報じられるところによりますと、南シナ海における中国側の一方的な石油採掘をめぐって火花を散らしてきた中越関係が、ベトナム特使が今月27日に、習主席と会談したことで和らぐ兆しがあるそうです。しかしながら、この関係改善、アジアの将来に暗い影を落としています。

 ベトナムが中国に特使を派遣した理由は、中国側が、中国資本の撤退を仄めかしたからとされております。ベトナム側は、同国で発生した反中暴動で被害を受けた中国企業に対する賠償を約束したそうですので(暴動発生後の5月16日に中国商務省報道官が賠償請求を表明…)、中国の要求を丸呑みした感があります。その一方で、中国で起きた反日暴動に際しては、日本側、特に民間企業の被害にはほとんど賠償金が支払われていないそうですので、ダブルスタンダードにもほどがあります。傲慢な対日姿勢はここでは置くとしても、武力を以って既成事実を積み上げる中国の手法は、明らかに国際法に反しています。ベトナムが中国の行動を追認しては、今後とも、石油採掘事業をはじめ、中国の強引な行動が収まることはないでしょう(脅しが有効であると分かれば、何度でも、同様の脅迫が繰り返されることに…)。中国としては、開催国としてホスト役を務めるAPECが閉幕するまでは波風を立てず、宥和的な態度で周辺諸国に接するのでしょうが、おそらく、その後は、手のひらを返すように豹変することが予測されます(石油採掘事業の停止も再開へ…)。中国とは、人治の国ですので、今日の約束は明日には反故にされかねないのです。

 短期的に見ますと、中国への譲歩は、一時しのぎに過ぎず、中国の違法行為を認めた”つけ”は、アジアにおける法秩序の崩壊という最悪のシナリオを招きかねません。ベトナムは、あくまでも、国際法の遵守を中国に求めるべきですし、主権平等の原則を貫くべきなのではないでしょうか。中国を法という縛りから解き放つことは、”虎を野に放つ”と同じく極めて危険なことであると思うのです。

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コメント (4)
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