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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

移民・難民問題が人類社会を崩壊させる?

2015年08月27日 15時04分17秒 | 国際政治
 現在、ヨーロッパ諸国は、中東やアフリカ等から押し寄せる移民・難民に悲鳴を上げております。ゲルマン民族の大移動で知られるように、人の移動は、時にして大帝国を滅亡に導くほどの破壊力となります。とは申しますものの、人道上の問題もありますし、また、EUでは、”人の自由移動”を原則に掲げている手前、なかなか移民制限に踏み切れないのが現状のようです。

 ところで、マスコミ等では、移民推進はあたかも国際社会で合意された既定路線の如くに報じており、移民制限を主張しようものなら、差別主義者のレッテルを貼られそうです。また、移民を推進力として大国に発展したアメリカの歴史は、移民が経済に与える好影響を証明もしております。しかしながら、今日の移民、並びに、受け入れ国側には、20世紀とは異なる質的な変化を見出すことができます。第一に移民の側の変化を見ますと、必ずしも新天地を求めて故郷を後にした進取の精神に富んだ人々ではなく、受け入れ国側の手厚い社会保障制度を目的として移住を決めた人々が見られることです。この場合、移民は、経済発展に貢献することはなく、逆に、移民受け入れ国の財政負担を増加させるのみとなります。第二に、受け入れ国側の変化としては、低成長時代を迎えたことによる雇用の飽和状態があります。開拓時代、あるいは、高度成長期には、人手不足の状態ですので、無制限に移民を受け入れても雇用問題を引き起こすことはありません。しかしながら、雇用が飽和状態、もしくは、失業率が高レベルにあるにも拘わらず、移民政策を継続、あるいは、拡大しますと、当然に、国内で職をめぐる対立が引き起こされます。また、受け入れ国側の第二の変化としては、移民国家と雖も成熟期を迎えますと、社会全体が硬直化することです。かつては、移民に対しても、世の中で成功者となる公平なチャンスがありましたが、最近の様子を見ておりますと、どの国も社会的な流動性を失い、否、中間層に関しては没落さえ見られます。つまり、移民は、貧困層となる可能性が高くなっているのです。この状態で、移民政策を推進しますと、受け入れ国では、宗教・民族対立のみならず、雇用問題、社会的分裂、治安の悪化、財政問題、経済の停滞…が同時発生し、移民の側も、失業、生活不安、社会的不適合、低所得…の問題を抱えることになります。また、職のない移民、あるいは、移民に職を奪われた人々が、犯罪集団に取り込まれる可能性もあります。しかも、ISILに見られるように、政治活動を開始したのでは、目も当てられない状況となります。もちろん、政策的な措置を講じることでこれらの問題を緩和することはできますが、数十万単位の人数の移民を受け入れ続けますと、社会そのものの崩壊を招きかねません。

 移民・難民問題は、ヨーロッパに限ったことではなく、受け入れ国であれ、送出し国であれ、全世界共通の問題です。”自由の最大化はリスクの最大化”であることを考慮しますと、自由化一辺倒の政策はあまりにも危険、かつ、無責任であり、現実を見据えた移民制限への大胆な方針転換こそ、人類社会を救う道であるかもしれないと思うのです。

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コメント (4)
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