万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

戦後70年談話報告書-懸念される東南アジア諸国への反日波及

2015年08月07日 15時25分10秒 | 国際政治
【21世紀懇報告書】民主・枝野氏「いろいろな意見足し算」 谷垣氏「良く分析してある」
 戦後70年談話のために設けられた有識者会議「21世紀構想懇話会」の報告書が纏まり、昨日、西室座長から安倍首相に手渡されました。報告書の要旨は、各紙とも紙面を大きく割いて報じており、国民の関心の高さが伺えます。

 当報告書においては「侵略」という言葉が使われており、この点が議論ともなっておりますが、もう一つ、この報告書には、重大な問題点が含まれております。それは、アジア諸国の独立に触れた後で、「多くの意思決定は、自存自衛の名の下で行われたのであって、アジア解放のために決断したことはほとんどない」と言い切り、続けて「アジア解放のために戦った人はいたし、結果としてアジアにおける植民地の独立は進んだが、国策として日本がアジア解放のために戦ったと主張することは正確ではない」と綴っております。残されている史料に照らしてみましても、この記述は、史実と合致しているようには思えません。昭和天皇の開戦の詔では、「列国との交誼を篤くし万邦共栄」を願っているにも拘らず、中国大陸では中華民国が平和を攪乱し、それを支援する米英がアジアを征服しようとしているため、やむを得ず、「東亜の永遠の平和を確立し以て帝国の光栄を保全」することが戦争の目的であると述べています。また、1943年11月6日に発せられた「大東亜共同宣言」では、米英に対して「大東亞隷属化の野望を逞しうし、遂には大東亞の安定を根柢より覆さんとせり。大東亞戦争の原因ここに存す。大東亞各国は相提携して大東亞戦争を完遂し、大東亞を米英の桎梏より解放して、其の自存自衛を全うし…」と明記し、戦争の目的が植民地解放であることを宣言しています。これらの史料は、植民地解放が日本国の国策であったことの証ですし、市丸中将のルーズベルト大統領の手紙からも、当時の日本国軍人が植民地解放の使命に燃えていたことが分かります(戦後、インドネシアでは、旧日本兵が独立戦争に義勇兵として参加…)。そして、昭和天皇の終戦の詔には、「朕は帝国と共に終始東亜の解放に協力せる諸盟邦に対し、遺憾の意を表せざるを得ず。」とあり、植民地解放のために共に戦ったアジア諸国に対し、申し訳ないとするお気持ちを表わされておられるのです。実際に、日本軍が、東南アジア諸国において独立を目指す民族解放勢力の協力を得て占領し、独立を支援したことも歴史の事実です。

 ところが、報告書が述べる内容が事実であるとしますと、日本国は、東南アジアの諸国を騙したことにもなります。日本国は、”独立を援けると見せかけて、実は侵略しました”と認めることになるのですから(報告書の記述が事実であるならば、皆を納得させる根拠や証拠の提示を…)。当時の日本国が自らの国益のために戦った側面は否定はしませんし、報告書の表現には戦勝国への配慮もあるのでしょうが、史実から離れた記述は、新たな問題を抱え込む要因ともなります。アジア解放否定論を基盤に70年談話が作成されますと、中韓のみならず、友好国であった東南アジア諸国まで反日国家に転じさせてしまう怖れがあると思うのです。

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コメント (2)
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