ワクチン接種率においてトップランナーであったイスラエルの現状は、遺伝子ワクチンの有効性並びに安全性に対して疑問を投げかけています。接種者の感染者数の増加はアメリカ等の高接種国にも共通して見られる現象ですので、原因はADE(抗体依存性免疫増強)ではないかとする指摘もあります。かくして人々は、ワクチンに対して疑心暗鬼に陥っているのですが、ワクチン推進の立場にあるメディア側は、’モグラたたき’のようにリスク説を打ち消そうと必死です。
ワクチンに対する疑問が渦巻く中、遺伝子ワクチンの安全性を医科学的な立場から説明する試みの一つとして、しばしば紹介されるのがmRNA技術です。もとより、同技術は、ワクチン向けではなく、遺伝病などの新たな治療法として1980年代に開発が始まったそうです。しかしながら、人工的に造られたmRNAは、極めて壊れやすく不安定である上に、細胞に投入すると異物として認識されるために激しい炎症反応が起こしてしまいます。このため、暫くの間、足踏み状態が続いていたのですが、2005年に至り、これらの問題を克服する画期的な技術が登場します。それは、mRNA鎖に含まれる全てのウリジンをメチル・シュード・ウリジンに置き換えるというものです。同手法の出現により、人工的に修飾されたmRNAは、体内にあって核酸分解酵素では分解できない上に、RNAの翻訳効率を10から数十倍に劇的に上昇させることができるようになったのです。
同手法を開発したビオンテック社のカタリン・カリコ博士、並びに、米ペンシルベニア大学教授のドリュー・ワイスマン博士は、2021年のノーベル医学・生理学賞の有力候補者としてその名が挙がっておりますが、ここで一つの素朴な疑問が浮かんできます(非専門家の疑問ですので、見当違いであればごめんなさい…)。それは、同技術が、人工mRNAが体内にあって炎症を起こさない、即ち、免疫反応を逃れるために開発されたのであるならば、同技術を使ったワクチンにあっては、mRNAによって細胞内において作られるようになったスパイク・タンパクが、免疫細胞によって異物として認識され、免疫反応を引き起こすのは何故なのか?という疑問です。
遺伝子の欠損や異常によって引き起こされる遺伝病などであれば、体内に投与された人工mRNA、あるいは、その生成タンパク質が免疫反応によって異物として排除されてしまうのでは百害あって一利なしとなりましょう。治療効果はゼロどころか、健康被害を招きかねないからです。そこで、免疫反応を起こさずに安定的に正常なたんぱく質を造る技術としてmRNAが開発されたことは理解に難くありません。生まれながらにして遺伝病に苦しんできた人々にとりましては、後天的に遺伝子を正常化できるのですから、完治の可能性も見えてきます。この文脈においてこそ、同技術は高く評価されるべきかもしれません。
しかしながら、その一方で、同技術をワクチンに応用するとしますと、投与された人工mRNAが、異物として見なされない可能性も否定はできないように思えます(なお、TLR3の内在性リガンドがどのように反応するのか、そして、マクロファージやT細胞等を含む免疫細胞が直接に人工mRNAを飲み込んだ場合、並びに、同細胞がスパイク蛋白質を生成した場合についても不明…)。仮に、人工mRNAが異物ではなく自己のmRNAとして体内の細胞に取り込まれた場合、一体、何が起きるのでしょうか。
可能性としては、(1)人工mRNAもその翻訳により生じたスパイク蛋白質も共に自己成分とみなされる、(2)人工mRNAは自己成分と認識される一方で、生成されたスパイク蛋白質は異物とみなされる、という二つの反応が推測されます。(1)であれば、ワクチン効果は全く期待できないどころか、ウイルスに実際に感染した場合には、重症化のリスクが格段に高まります(免疫寛容も成立?)。もっとも、遺伝子ワクチンの効果に関する報告を観る限り、殆どの接種者にあって抗体の生成が確認されていますので、(2)となるケースが最も多いようにも思えます。
とは申しますものの、(2)であったとしても安心はできず、人工mRNAが自己成分と認識されている場合には、スパイク蛋白質に対しては異物として反応しても(ヘルパーT細胞⇒B細胞の活性化⇒抗体産生)、細胞内に居座ってしまった人工mRNAに対しては、キラーT細胞がスルーしてしまう可能性があります。この状態ですと、人工mRNAが侵入した細胞は、体内にあってスパイク蛋白質を造り続けてしまうかもしれません(もっとも、スパイク部分が形質として細胞表面に出現している場合は、抗体の攻撃対象となる?)。スパイク蛋白質はそれ自体が血栓を形成するなど有害であるとする説が有力ですので、この問題は深刻です。残された希望は、感染ストレスがかかってNKG2Dリガンドが発現した細胞を破壊するナチュラル・キラー細胞となりましょうが、最終的には自然免疫頼りというのも心もとありません。
政府は、若年層をはじめ12歳以下の子供たちや妊婦さんへの接種を積極的に呼びかけております。しかしながら、上述したように、修飾された人工mRNAの問題一つを取り上げましても、遺伝子ワクチンには不明な点が多すぎます(もちろん、副反応や有害事象のばらつきからすると、個人によって自他の識別や反応が違うとも考えられる…)。そしてmRNAの技術による説明は、むしろ、同ワクチンに対する懐疑心を強めてしまっているように思えるのです。