政府の掛け声の下で、どの国も国民へのワクチン接種が進んでいます。この動きに合わせるかのように、海外への渡航条件のみならず、「ワクチン・パスポート」を国内においても積極的に同制度を活用すべしとする声も聞こえるようになりました。「ワクチン・パスポート」の仕組みは、デジタル・データであれ、紙面であれ、過去におけるワクチン接種を証明し得る人のみ、あらゆる施設を利用したり、官民が提供する各種サービスを受けられるというものです。果たしてこの制度の真の目的は、どこにあるのでしょうか。
政府の説明によれば、同制度の導入の狙いは、経済や社会の正常化にあります。特に、ロックダウンを実施した諸国では、「ワクチン・パスポート」は、部分的であれ、営業停止を余儀なくされていた事業者の営業再開を意味します。コロナ禍以前と凡そ同様の状態に戻れますので、小売業、観光業、サービス業、イベント業などからは歓迎する声も少なくないのです。
経済並びに社会の正常化を第1の目的としますと、第2の目的は、非接種者に対する接種圧力です。同調圧力が集団心理的な圧力としますと、「ワクチン・パスポート」は、利益誘導型の物質的な圧力です。非接種者は、公共の場におけるあらゆる公共サービスや民間サービスを利用できませんので、日常生活にも不便を来しますし、従来の交友関係からも排除されてしまいます。友人や知人と会食したり、一緒にイベントに参加することもできなくなりますので、「ワクチン・パスポート」は、ワクチン接種に向けた強い動機となるのです。そして、この目的は、同時に、集団免疫の実現でもあるとも言えましょう。同圧力が行きわたれば、最終的には、凡そ全員がワクチンを接種することとなるのですから。
もっとも、これらの目的の達成は、同時に、「ワクチン・パスポート」の存在意義を消滅させることとなります。何故ならば、理論上にあっては、集団免疫が成立すれば、感染リスクが著しく低下し、とりたてて感染防止策を講じなくとも、誰もが平常の生活を送ることができるようになるからです。言い換えますと、「ワクチン・パスポート」とは、集団免疫が成立するまでの過渡的な措置に過ぎないのです。
政府やマスコミの基本的なスタンスは以上に述べた通りなのですが、現実を観察しますと、第1の目的も第2の目的も達成できそうにはありません。その理由は、先ずもって、ワクチン忌避者が多く出現している現状があるからです。本ブログでも再三指摘しておりますように、遺伝子ワクチンは、治験段階にあるために未知のリスクに満ちています。医科学的な根拠のあるリスクも少なく、ワクチンとの関連性が疑われる死亡件数も無視できない数に上っています(日本国内では751件…)。激しい副反応に襲われた接種者も数限りなく、ワクチン接種率を引き下げる要因となっているのです。ワクチン・リスクは、目に見える現象として現れていますので、今後とも、言葉による説明によって国民が安心して接種し得る状況に転じるとは思えません。
となりますと、ワクチン非接種者の割合の方が高くなるケースも大いにあり得るのですが、この状態で「ワクチン・パスポート」を導入しますと、どのような状況が出現するのでしょうか。
新型コロナウイルス感染症のパンデミック化によって最も利益を受けたのは、治療や予防に必要な製品を製造・販売する医療機器や医薬品、並びに、ワクチンを製造する事業者のみではありません。今日、IT大手は、軒並み過去最大の営業利益を上げていますが、テレワークや遠隔授業などの拡大を背景として、IT大手もまた莫大な利益を得ているのです。このことは、「ワクチン・パスポート」によって経済・社会から弾き出されてしまった人々は、テレワークを続け、通販等によって生活必需品等も購入せざる得なくなることを意味します。現状にあって、マスク着用や手先の消毒などの対策を講じれば誰でも利用できた各種施設や店舗なども、「ワクチン・パスポート」が導入された途端、非接種者は、入り口でシャットアウトされてしまうからです。
このように考えますと、ワクチン接種率が頭打ちの今日、「ワクチン・パスポート」の導入に新たな目的が加わるとすれば、それは、IT大手が、公共の施設や店舗などを利用できなくなったワクチン非接種者を、自らの固定客として囲い込むことなのかもしれません。ワクチン非接種者は、対面ではなく、ネットなどを介してしか経済・社会活動を行うことができなくなるからです。もっとも、ワクチン接種によって感染が予防できない事実が凡そ判明した今日、「ワクチン・パスポート」自体が消えてしまい、上述した目的に関する議論も無意味となりつつあるのかもしれません。