万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本の捕鯨・イルカ追い込み漁問題-近代科学による”魚”から”知的哺乳類”への転換

2015年05月29日 09時57分45秒 | 国際政治
イルカ追い込み漁利用禁止規定、JAZA策定へ
 古来、日本国が漁業として営んできたクジラやイルカの捕獲は、近年、残酷であるとする国際的な批判を浴びております。世界水族館動物園協会からのイルカ追い込み漁のみならず、鯨もまた、シー・シェパードなどの攻撃の対象となってきました。

 こうした問題が発生した要因の一つは、近代科学によって、クジラやイルカが動物、しかも、かなり知能の高い哺乳類であることが判明したことにもよります。近代科学の知識が導入される以前の日本国では、クジラやイルカは、海を泳ぐ他の魚達と区別されておららず、一般的には、”魚類”として扱われておりました(仏教でも魚や鳥は食してもよい…)。江戸時代には、殺生を忌避する仏教の影響から、牛や豚と言った動物を食することは禁じられていましたが、捕鯨や追い込み漁は、伝統的な漁法として受け継がれてきたのです(日本国の伝統文化とされる理由…)。ところが、近代科学によってクジラとイルカが哺乳類に分類されますと、日本国は、認識の転換を迫られることになりました。そしてそれは、心理的な衝撃のみならず、今日では、国際的な批判として日本国を苛めることになったのです。日本人は、知的な海の哺乳類を残酷に殺害する人々であると…。しかしながら、生類憐みの令を発した犬公方が登場したり、肉食が禁じられるなど、歴史全体から見ますと、日本人は、動物達にやさしく接してきました。生命を尊ぶ感覚は、あらゆる命あるものを供養し、感謝する風習にも表れております。

 この点、国際社会は、日本国の事情に無理解ですし、日本国もまた、この問題に適切な対応を見いだせない状態にあります。そしてこの問題は、人間と動物の区別、そして、生命の価値の違いを含むあまりに多くの論点を、日本国のみならず、国際社会に対して提起していると思うのです。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2015-05-29 17:40:35
こんにちは。自然保護や人権・平等を殊更言い立てる連中ほど胡散臭いものはありません。
イルカ・鯨の追い込み漁や捕獲、食料にするなど残酷と大騒ぎし、イルカや鯨は哺乳類で知能も高いのだから保護をといえば海の食物連鎖や個体数の増加など全体に及ぼす影響を考えず、目先の小さな正義だけに取らわれ多額の寄付をする人間もいるのです。
シーチワワかシースピッツか、キャンキャン吠え立ててうるさい、他国の文化や伝統を認めない己の主張だけが絶対に正しいとする、オーストラリアでは増えすぎたカンガルーやコアラの殺処分が行われていても何も言わない。
牛や豚、コアラやカンガルーは知能が劣るから殺してもいいと言うのでしょうか。
此のような二枚舌を偽善と言うのです。
己の正義に酔って何が真実なのか、何が正しいのか考えようともしない、其のような連中に多額の寄付をして肩入れする連中。
鯨やイルカは個体数が増えすぎると餌となる小魚が激減し、小魚が減ることでプランクトンの増殖を招き食物連鎖の崩壊、自然破壊に繋がるのです。
増え過ぎたらゲームのように殺して捨てる事の方が残酷です。
このようえに自然との調和を考えず盲目的な運動に走る・・
花粉症にかかる人が急激に増え社会問題となっている背景に、熱帯雨林の乱伐と森林資源の保護の為の適切な間伐を混同した結果です。
この問題は、近年増えている集中豪雨による洪水被害の原因の一つでもあるのです。
自然のサイクルに対する知識も無いままに外国で森林保護を言ってるのだから、と安易に外国の真似をする愚かさ。
イルカの追い込み漁や捕鯨の問題は、明らかに狙いを我が国に絞っています。
某、侵略が大好きで現在も侵略をしている国や侵略だ、植民地支配だ、強制連行だ、と大騒ぎしている国や、某、抗日を叫んでいる団体が資金提供している・・解りやすい構図ですね。
鯨・イルカの次はマグロで大騒ぎをして糾弾すると・・
伝統や文化を破壊する行為、これも侵略の一環です。
鯨やイルカの代わりに牛・豚の肉を売りつけようとする国との利害が一致しますので国際世論のように見えるだけ。
某国から魚類を輸入する事が引き起す深刻な問題。
金になれば後先も資源保護も考えない。
ソマリア沖での海賊騒ぎ・・某国の漁船が底引き網漁で稚魚まで根こそぎ乱獲した結果、漁業資源が枯渇し漁民が生活できなくなった結果なのです。
感情的な反論だけではなく、漁業資源の保護や海洋資源の保護には調査と適切な間引きも必要である事を今まで蓄積されたデーターを基に論理的に説明するべきなのです。
また学会等の狭い範囲ではなく、国際的にも発信し国際世論の理解を得る事が必要です。

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ねむ太さま (kuranishi masako)
2015-05-29 20:54:19
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 この件につきましては、突き詰めて考えてみますと、何故、海洋哺乳類は保護されるべきで、陸上の一般的な哺乳類は食用として許されるのか、動物の間にも命の価値に違いがあるのか、また、より根本的には、人間もまた、生物の一種であり、食物連鎖の中にありながら、他の生物に保護の選択を行う特別な存在である理由は何なのか…、といった極めて根本的な問題が横たわっております。中国などは、日本国よりも野生動物を食用に用いておりますので、他国を動物保護の観点から批判できる立場にはないはずです。この問題は、自然保護の政治利用なのか、それとも、純粋に自然保護の問題なのか、見極める必要もありそうです。
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