万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

陰謀論をめぐるリベラルと保守

2022年11月04日 11時56分51秒 | 国際政治
 本日、11月4日のダイアモンド・オンラインに「陰謀論者の増加と「リベラル政党離れ」が世界中でつながる根深い事情」というタイトルの記事が掲載されておりました。その内容は、と申しますと、アメリカでは、これまで盤石な支持基盤であった労働者層や農民層が、急速なリベラル政党離れを起こしているというものです。その理由は、リベラル政党が推進してきたグローバリズムがこれらの層の利益を蝕んでいるからと説明されています。

トランプ前政権も反グローバリズムのうねりの中から誕生していますので、グローバリズム批判は、今に始まったことではありません。今般は、反グローバリズムは、民主党離れという目に見える現象となって現れてきたのでしょう(もっとも、先の大統領選挙における民主党のバイデン大統領の当選については払拭しがたい不正選挙疑惑がある・・・)。四日後の11月8日に予定されている中間選挙については民主党の苦戦が伝えられていますが、おそらく、民主党の支持率低下は、同現象が影響しているものと考えられます。

それでは、民主党から離れた労働者や農民の支持はどこに向かっているのでしょうか。本記事では、それは、‘陰謀論’であると述べています。‘陰謀論’という間接的な表現ではありますが、トランプ前大統領は、前例を覆して大統領として初めて‘ディープステート’という言葉を用いて、全世界の諸国を裏からコントロールしてきた陰謀の首謀者、即ち、世界権力の存在を明らかにしています。ディープステートこそ、国家を超えた金融・経済財閥のコンソーシアムであり、グローバリズムの推進者である点からしますと、従来の民主党支持者は、共和党へと支持政党を変えているのでしょう。

アメリカで起きている一連の現象は、外部から忍び寄るグローバリズムの脅威に対して保守党である共和党が立ち向かい、国民を保護するという構図となります。一方、民主党は、国内に脅威を招き入れる存在となりますので、一般の国民から危険視されかねない立場に置かれていると言えましょう。アメリカにおいては、グローバリズム及びそれに付随する陰謀をめぐるリベラルと保守の立ち位置は、ある意味において一貫性を保っているのです。もっとも、過去の共和党の政治家の顔ぶれをみますと、ブッシュ両大統領やキッシンジャー元国務長官など、ディープステートの重鎮も揃っているのですが・・・。

その一方で、日本国の現状を見ますと、事態はより複雑となります。グローバリズムや陰謀論は、保守政権との間に密接な関係があるからです。実際に、新自由主義の名の下で左派以上に積極的にグローバリズムを推進してきたのは自民・公明政権でしたし、陰謀論についても、世界平和統一家庭連合(元統一教会)や創価学会との関係から強く国民から疑われているのは自民党であり、公明党です。全国各地に設けられているこれらの新興宗教団体の施設は閉鎖的ですし、そのメンバーも表からは見えませんので‘秘密結社’の観があります。しかも、その思想傾向は独裁容認、かつ、全体主義志向でもあり、信者の動員力も含めて、世界権力の実行部隊としての利用されている節があるのです。

このため、日本国にあっては、アメリカのようにグローバリズムや陰謀に対する国民の批判や懐疑が保守政党に大量に流れ込む事態は想像できません。また、逆に、保守層の信頼喪失が左派政党への支持を激増させるのかと申しますと、この可能性もそれほどには高くはないように思えます。日本国の左派は、中国や韓国・北朝鮮といった国策として長期にわたり反日政策を行なってきた諸国との関係が深く、そもそも信頼に乏しいからです(かつての民主党政権に国民が懲りている側面も・・・)。もっとも、自公政権への批判票を集める展開もあり得るのですが、積極的な支持とは言いがたく、むしろ、相当数の保守層の人々が行き場を失い、支持政党なしの人々が増加するものと推測されるのです。

陰謀の実在性は、全世界諸国の政界に対して、これまでの政治のあり方を根本的に問い直しているように思えます。この側面は、自由主義国であっても、全体主義国であっても大きくは変わらないのかもしれません。民主的選挙制度を備えている国であっても、世界権力が上部から仕掛けた両頭作戦によって一定の方向に向けて国民が追い込まれているならば、左派も右派も信頼できない、ということなのですから。右派への不信感から左派の方向に向かっても、その先には罠が待っており、左派を離れて右派へと走れば、そこにも罠が待ち構えているかもしれないのです(トランプ前大統領の‘保守’についても疑いが・・・)。

今日、グローバリズムが、思わぬ形で隠されてきた陰謀を表面化させたとすれば、その最大の功績は、人類に民主的制度の脆弱性や欠陥を痛感させると共に、立て直しの機会を与えたことにあるのではないかと思うのです。
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