万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

政党政治が民主主義を損ねる?

2022年06月22日 17時08分48秒 | その他
 7月10日に予定されている参議院選挙は、本日、6月22日に公示されます。530人が立候補すると報じられておりますが、近年、’政党政治が、むしろ民主主義を損ねているのではないか?’とする疑いが濃くなってきているように思えます。

 これまで、政党政治、あるいは、複数政党制は、議会制民主主義を具現化する基礎的な制度として理解されてきました。複数の政党が議席、さらには、政権を競う複数政党制では、有権者である国民による自由かつ民主的な選挙の実施を前提としているため、一党独裁体制や独裁体制に対する’反対語’としても解されてきたのです。’複数の政党が存在しているのだから、自分の国は民主的国家である’とする安心感を国民に与えていたかもしれません。しかしながら、今日、この固定概念を覆すような現象が頻発しているのです。

 先ずもって、前回のアメリカ大統領選挙にあって、政権の正当性まで問われる選挙不正疑惑が起きました。たとえ複数政党制の下で民主的選挙が実施されたとしても、裏にあって巧妙な選挙不正が行われていたのでは、民主主義は一瞬にして消えてしまいます。デジタル投票制度の導入が進むほど、外部からのサイバー攻撃のみならず、内部者による数値改竄といった新手の手口も登場しますので、不正が行われやすい状況となるのです。

 第二に、政党という存在自体がマイノリティー化している点です。与党の支持団体として統一教会や創価学会などの新興宗教団体が指摘される一方で、野党側には、共産主義者やリベラル活動家が集っています。これでは、政治は民意や国民の一般的常識から遠のくばかりであり、政治は、人口比において数パーセントにも満たない少数派の人々によって凡そ独占されてしまうのです。しかも、グローバル化に伴って与野党ともに海外勢力のコントロール下に置かれるともなれば、民主主義国家にあっても、政治は、ますます国民の手から離れてゆきます。

第三に、与野党間における二頭作戦の疑われる現象もみられます。政党政治とは、国民の各自が、政治信条に基づくものであれ、何であれ、自らが支持する政策を掲げた政党を自由に選ぶことを前提としています。ところが、近年、与野党間の政策的違いが希薄化する一方で、どの政党を選んでも、国民が何らかの形で不利益を受ける結果を招きかねない事態が生じています。例えば、現政権に対して国民が不満であったとしても、野党側の公約にあってより望ましくない、あるいは、同様の政策が含まれている場合には、国民は、何れにしても’悪い選択’しかできないのです。このため、棄権も増えてしまうのですが、無党派層の拡大は、民意に沿った政党が存在しない現状の表れであると言えましょう。

第四に懸念すべきは、一党優位体制による歪です。報道によりますと、今般の選挙にあっては、32の一人区全てにおいて、野党側は候補の一本化を見送ったそうです。政党支持率からしますと、自民党が40%弱で他の政党を大きく引き離しています。この状態であれば、32区はすべて自民党が獲得するものと予測されます。参議院の一人区、並びに、衆議院の小選挙区では大政党が有利となりますので、日本国のような一党優位体制では過半数以上の票が死票となり、民主主義を歪めてしまうのです。

第五に問題とすべきは、政党間の談合です。上述した一人区における与野党の選挙方針にも談合が疑われるのですが、与党間の’談合’も深刻です。例えば、衆議院の小選挙区では、自民党が公明党に議席を譲るために、自らは候補者を擁立するのを控えている選挙区もあります。自民党と公明党との間には、政策的な相違点のみならず、宗教的な立場の違いもありますので、政党間談合は国民の選択肢並びに自由を奪っているに等しくなります。

そして、第六に指摘すべきは、政党政治、並びに、それを支える政党中心の選挙制度では、候補者の個人的な資質や能力が問われていない点です。議会において法案を可決させる要件は、過半数の賛成を得ることです。このため、’政治は数’となる傾向が強く、知名度の高さが候補者の選定基準となりがちなのです。タレント候補が乱立するのも、各政党とも、個々の議員に対して政治家としての仕事を期待していないからなのでしょう。

以上に、主要な忌々しき現象について述べてきましたが、果たして、今般の選挙において、政治制度そのものの改革を訴える候補者は登場するのでしょうか。船底の板が壊されそうな船にあって、甲板では乗客に沈没の危機に気が付かれぬように、船長をはじめ船員たちが政治劇を演じているようでは、乗客となる国民は心配でいたたまれないのではないかと思うのです。

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