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結局、香川県ではうどんを3回食べました。
1つめは、こんぴらさんの参道を下りきって、うどん学校とかいうアカデミックなのをあえてパスして、古めかしい旅館だったところの食堂。ここは五百円でしたが、あとから考えてみれば、失敗したと思いました。
ご立派な建物を避けて、わざと古めかしい旅館、そこに呼び込みのオバサンがいて、たまたま冷やしぶっかけ五百円というのが目に入りました。ああ、それが運の尽きです。中に入るとお客はおらず、かわいらしいお姉さん、たぶん、高校生のバイトかな。それともう1人オバチャンがいました。一番奥の通りをにらむことのできる座席でおばあさんがうどんを食べていた。
お客かなと思ったら、「そこが一番冷房がきいてるよ」とえらそうです。
あれこれ店の人に指示を出したり、「客が来ないねえ」と嘆いているところを見ると、どうやら大女将というところなのかな。何だかモニョモニョしゃべっているけど、何となく不景気な感じのしゃべりでした。
これでは、せっかくの店構えも台無しです。せっかく立派な外観なのに、入ってみたら何となく雰囲気は重い。私は、なんともいえないぶっかけうどんを、あまり感動もなく、淡々と食べて、早く店を出たい気分になりました。
サラッと食べて、外に出るとき、今度はおばあさんが店頭に座り込み、呼び込みを始めましたが、なおさら不景気な感じとご大層な感じで、みんな入りたくないだろうなと気の毒になりました。おばあさんもきっとこんなに重い雰囲気ではなかったはずなのに、いつのまにやら重いものを背負っておられた。
ああ、参道のお店にも栄枯盛衰はあるようです。階段を上る前、立派な店構えだから、あとで写真でも撮ろうと思ったんですけど、撮らなくて正解だったような気になりました。
数年後、このお店はあるのかどうか。それはわからないけど、今回は重い感じ、1回目のうどんは敗北です。
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2つめは、友人が案内してくれたお店で、道沿いにありました。お客はどんどん来るし、待ち望んでいたセルフ形式。これだこれ! と思いつつ、写真も撮りました。
こういう時に、おでんのこんにゃくも食べるのが香川県スタイル、というので私もマネてこんにゃくを食べました。うどんは、麺もおつゆもおいしくて、さすがたくさんのお客さんが来るだけのことはあるなあと感心しました。
でも、友人は、「久しぶりに来てみたけど、思っていたような硬さがなかった」ということでした。もっとしっかりしたかみごたえがあったということですけど、初心者の私にはおいしいとしか感じませんでした。
こんぴらさんの土産物やさんのうどんの数十倍も上だったように思います。
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3番目は、ホテルの夕食で、コースのごはんとうどんバイキングということで、この日3回目のうどんタイムになりました。
もうこのころは酔っぱらってますから、もうお酒に合うものなら何でも良くて、ムシャムシャ食べました。ビールとうどんもOKだった。
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猪熊玄一郎さんの美術館にも行き、瀬戸内の夕日を眺め、十数年ぶりに友にも再会し、お腹いっぱいの香川の旅は終わったのでした。
ザンネンだったのは、友人に久しぶりに会うというのに、手ぶらで行ったことでした。まあ、三重県って、現地でおもちを食べるのはなかなかオツなんだけど、それを県外には持って行けなくて、県外でも売っているなんとか福餅は、厳密にいえばお餅的なものであって、お餅ではありませんし、よその人に持って行くモノがないので苦労するんですけどね。
それが失敗だった。あとから、友人には何か送ったんですけど、それは私がそのとき食べたかったもので、奥さんは、「今どき、それはないんじゃないの!」とか言ってましたけど、自分本位で決めてしまった。ああ、何と言うことか……。