32【迷える者は( )を問わず】……物事に迷うような者は、他人の意見を聞かず、自分の能力を過信して、かえって破滅を招くものである。《晏子春秋》
33【難に臨んで( )を鋳(い)る】……困難に出会ってから、あわてて対応策を準備するたとえ。《晏子春秋》 ★空欄に適切なことばを漢字一字でこたえてください。
32番、他人の意見を聞くとは? そもそも、どんな時に他人の意見が必要になるのでしょう? そりゃ、素朴な疑問や、つまらない質問というのもあるでしょう。でも、困ったとき・迷ったときというのは、人生の節目節目で、どう進んだらいいのかわからないときです。人生、○に迷うといえば、答えは見つかります。
そして、このことばはセットになっているものが面白いので、引用してみると、
「愚者は悔い多く(おろかな人というのは後悔することが多く)、不肖(ふしょう)なる者は自ら賢とし(できの悪い者は自分に能力があるのだと思い込み)、おぼれる者は墜(お)つるを問わず(おぼれるような人間は、危険なところを教えてもらおうとはしない)、迷う者は○を問わず。」
という文章で、たくさんの失敗者のパターンを教えてくれています。
ああ、それなのに、私たちは、相変わらず向こう見ずで、すぐいい気になり、危ないところへ足や頭を出し、変な自信を持っていて、自分には何の不安もないのだと強がり、失敗した後で悔やんでいるようです。どうして「すみませんが……」「失礼ですけど……」と人にたずねることができないのでしようね。反省します。
33番、魯(ろ)の昭公(しょうこう)という人が斉に亡命してきました。斉の王様の景公さんは、昭公が亡命せざるを得なかった事情を自らで分析し、巧みな弁舌で話す様子にふれ、とても感心したそうです。そして、気に入ったので、彼を押し立てて隣国の魯を攻める口実ができたり、または国内で取り立てて、それなりの処遇をするかなど、特別の待遇を考えたのかもしれません。
そんなことは晏子さんはお見通しで、このまま国内に彼をとどめ置けば、国内の微妙なバランスが崩れ、新たな問題のタネを抱えることになるとすぐに予測しました。先見の明がある人なんですね、晏子さんという人は! まあ、単純に昭公の人間性が気に入らなかったのかもしれません。口先だけが巧みで、一見すごくがんばるいい人のように見えるけれど、心の中でどんなたくらみを抱えているのかわからない、そういう感じだったんでしょうか。
「たとえて言うなら、争いになってから急いで武器を鋳造(ちゅうぞう)したり、メシがノドにつまってから、あわてて井戸を掘るようなもので、いくら手際が良くても、もはや手遅れなのです。」そんなつまらないヤツを相手にしてはいけません! と、忠告したそうです。
晏子さんの人を見る目・観察眼というのか、ものすごいです。私たちが、どんなに理論武装し、あれこれと着飾って、つまらない売り込みをしたとしても、すぐに見透かされそうな感じです。
さて、「武器」という意味で漢字一字を考えてみましょうか!
答え 32・道 33・兵