カンパネルラがいなくなる、というのは知ってました。そりゃもう、何十年の付き合いがあるので、ちゃんとは読んでないけど、だいたいのことは知っています。
ジョバンニとカンパネルラは一緒に銀河鉄道に乗っています。空を走っているから、太陽の光ですべてがピカピカというのはありません。ずっと暗い世界の中に、明るい星が見えたり、汽車のあかりが照らす周辺の風景が見えたりするだけです。
鳥捕りという変なキャラも出てきますが、これはもう一度読んだ時に注意することにして、とにかく最後まで読まなきゃと、睡魔と戦いながら読んでいます。たいていは数ページでダウンします。
ジョバンニが言いました。
「僕、もうあんな大きな闇の中だってこわくない。きっとみんなほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕たちいっしょに進んでいこう。」
「ああきっと行くよ。ああ、あすこの野原はなんてきれいだろう。みんな集まってるねえ。あすこがほんとうの天上なんだ。あっ、あすこにいるのはぼくのおっかさんだよ。」
カムパネルラはにわかに窓の遠くに見えるきれいな野原を指さして叫びました。
ああ、カンパネルラ、そんなこと口に出してしまった! なんか、危ないという気はしたんです。ジョバンニをどうするつもりなんです? そもそも、カンバネルラは一緒に乗ったわけではなかったけれど……。
ジョバンニもそっちを見ましたけれども、そこはぼんやり白くけむっているばかり、どうしてもカムパネルラが言ったように思われませんでした。
なんとも言えずさびしい気がして、ぼんやりそっちを見ていましたら、向こうの川岸に二本の電信柱がちょうど両方から腕を組んだように赤い腕木をつらねて立っていました。
「カムパネルラ、僕たちいっしょに行こうねえ。」ジョバンニがこう言いながらふりかえって見ましたら、そのいままでカムパネルラのすわっていた席に、もうカムパネルラの形は見えずただ黒いびろうどばかりひかっていました。
ジョバンニはまるで鉄砲玉のように立ち上がりました。そしてだれにも聞こえないように、窓の外へからだを乗り出して、力いっぱいはげしく胸を打って叫び、それからもう咽喉(のど)いっぱい泣き出しました。
さっきまでカムパネルラのすわっていた席に、黒い大きな帽子をかぶった青白い顔のやせたおとなが、やさしくわらって大きな一冊の本を持っていました。
「おまえのともだちがどこかへ行ったのだろう。あのひとはね、ほんとうにこんや遠くへ行ったのだ。おまえはもうカムパネルラをさがしてもむだだ。」
「ああ、どうしてなんですか。ぼくはカムパネルラといっしょにまっすぐ行こうと言ったんです。」
「ああ、そうだ。みんながそう考える。けれどもいっしょに行けない。そしてみんながカムパネルラだ。
おまえが会うどんな人でも、みんななんべんもおまえといっしょにりんごを食べたり、汽車に乗ったりしたのだ。
だからやっぱりおまえはさっき考えたように、あらゆる人のいちばんの幸福をさがし、みんなといっしょに早くそこへ行くがいい。そこでばかりおまえはほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょにいけるのだ。」
その理屈、私には分からないです。説明してもらっていいですか? と、質問したいです。でも、これは質問を許してくれる相手ではないと、ジョバンニは気づいたし、これも何かの教えだと受け止めたのでしょう。
このあと、この青白い顔の大人は、ジョバンニに説明はしないけど、方針というのか指針は教えてくれます。
昨日は、ああ、なかなかいいこと書いてあるなあと感心したんですけど、また続きは明日書きます。毎日シミジミしながら、「銀河鉄道」読んでますね。あと三回くらいは読み直さなくちゃいけないかも!
私なりに、勝手に解釈してみますと、いろんな人と一緒に生活するし、気の合う仲間、一緒にいたい友だち、お互いにお互いを認め合う関係、いろいろあると思うんですけど、一緒にいたいのはヤマヤマなんだけど、それは無理なのです。自分はその人ではないからです。
その人だって、私のことを認めてくれたかもしれない。でも、すべての人生を一緒に歩くことはできないみたいです。家族であっても、親子であっても、兄弟でも、友だちでも、恋人同士でも、ずっと一緒というのはあり得ないのです。
だから、すべてがムダというんではなくて、めざしている方向が同じなら、たとえはぐれたって、またどこかで出会えるし、心は同じところにある、そういう気持ちなんじゃないかな。
これは、亡くなった妹さんへのメッセージにもなっています。
はぐれることはある。でも、どう生きればいいのか。それは明日、もう一度読み直してみます。どうぞ、よろしくお願いします。