Stan Getz / And The Oscar Peterson Trio ( Verve MG V-8251 )
スタン・ゲッツの愛聴盤の中でも、特に好きな1枚です。 オスカー・ピーターソン、レイ・ブラウン、ハーブ・エリスのトリオをバックに
流れるようなゲッツのアドリブともメロディーともつかないようなフレーズが延々と紡ぎ出されるワンホーンの傑作。
ドラムレスでハーブ・エリスのリズムギターがその代役をしていますが、このおかげでバックのサウンドがうるさくならず、とてもいいです。
ピーターソンも音数を少なくして余裕たっぷりの伴奏をしており、一流の大人のリズムセクションを形成しています。
このレーベルでは初期の "Plays" が人気ですが、テナーのプレイはこの盤あたりのほうが遥かに成熟しており、長めの演奏時間のおかげで
ゲッツのテナーの魅力が爆発、コルトレーンも憧れた素晴らしいフレーズがしっかりと聴けます。
プレイだけではなく高い音楽性を常に望んだ人なので、大編成のオケをバックにつけたり、サントラをやったり、といろんなことに手を出して
どれも素晴らしいとは思いますが、こういうシンプルな構成でやられるとジャズ好きとしては完全に参ってしまいます。
"I'm Glad There Is You" の落ち着いた佇まいが素晴らしい。 インストではなかなかうまく魅力が伝わらないこの曲をここまで魅力的に吹いた
例は他にないんじゃないでしょうか。
この人が吹くと、スタンダードがまったく別の魅力ある楽曲に化けるようなところがあって、そういう重層的な音楽をいとも簡単に創り出す
ところに我々は惹かれるのだと思います。 ただ演奏が闊達なだけではここまで人気が出ることはなかっただろうし、大成もしなかった。
優れた音楽家だったということです。
録音もバックの音を抑えてテナーの生々しい音を前面に押し出したマスタリングになっており、音楽の快楽を倍増させています。
とてもいいレコードです。