Kenny Burrell, Pepper Adams / Jazz Men Detroit ( Savoy MG-12083 )
何とも言いようのないジャケットセンスのせいで、名盤としてはマニアはともかく一般的には認知されてこなかったし、これからもされることは
なさそうなレコードですが、1956年春の演奏として考えた場合にここまで洗練されたハードバップになっているのは驚異的なことです。
ポール・チェンバースは当然まだマイルスのバンドにいたし、トミー・フラナガンはサキソフォン・コロッサス録音の直前。 アメリカでは既に
ハードバップが完成していて、革新的な音楽家ではない普通の演奏家たちがこういうレコードを量産できるくらいに当たり前に演奏していた、
ある意味で幸せな時期の一コマを切り取ったかのようなとてもいい内容です。
ドラムがケニー・クラークだったおかげでリズムセクションが趣味の良さを保てたこと、やかましいトランペットがいないこと、ペッパー・アダムス
が控えめに全体を誘導するかのような演奏に終始していることなどが幸いして、非常に調和がとれて高い質感の演奏を聴くことができます。
サヴォイは保守的なレーベルで革新的なことは嫌ったし、ミュージシャンに無理強いもしなかったので、このアルバムのメンバー達のような
保守主流系の受け皿としては最適でした。 だから、時代を変えるようなアルバムは1枚もない代わりに、愛好家の心にじんわりと響くような
作品には事欠かないし、パーカーの遺産もあって一流レーベルの地位を維持できたのはよかった。
これ以降、アメリカのジャズはシーン全体を大きく動かすような人たちとジャズそのものを下支えする保守系の人たちとに分かれていきますが、
後者の人たちが残したアルバムの原風景とも言えるような音楽をこのレコードから聴くことができるように思います。
ただ、ジャケットがなあ・・・・