廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

モンク・トリビュート ~その6~

2017年08月19日 | Jazz LP (Riverside)

Thelonious Monk / Thelonious Alone In San Francisco  ( 米 Riverside RLP 12-312 )


セロニアス・モンクのソロ・ピアノ集は4枚あるけれど、このアルバムがいろんな意味で1番バランスがとれている。

ここでのモンクは楽曲のメロディーをあまりいじらずに、非常にストレートに弾いている。 装飾的に手癖を使っているけれど、あくまでも控えめにであって、
どの曲もメロディーを前面に押し出して、というかほぼメロディーだけを無心に繰り返し繰り返し弾いている。 このアプローチはモンクとしてはかなり珍しい。
だから、聴いていて難しいという印象が全くなく、音楽が素直に心の中に入って来る。 

次に、アルバムに収録された曲の選び方がとてもいい。 自作のオリジナル曲の中からメロディーが判りやすく美しいものを取り上げている。 そして、それらの
合間に1930年代にヒットした旧いメロディアスな歌を何気なく入れている。 ここのところの塩梅は絶妙だと思う。 おかげでアルバム全体の印象がほんのりと
甘くノスタルジーな雰囲気に包まれている。 辛口の作風が多いモンクには異例の内容だ。

更に、リヴァーサイドのモノラル録音が自然な感じでいい。 個性の強いエンジニアの音ではなく、ピアノの音を何も手を加えずに録って、何もいじらずに
そのままカッティングしたような素朴な音作りが好ましい。 その音を通してモンクの心情までもがこちらに直に伝わってくるような気がするのも、あながち
錯覚ではないだろうと思う。

最後のおまけとして、このレコードは初版であっても入手は難しくなく割と簡単に手に入るし、値段も高くない。 気に入っている盤なのでステレオプレスも
聴いてみたいと思っているけど、どちらかというとそっちのほうがあまり見かけない気がする。

もし、普段ジャズを聴かない誰かからセロニアス・モンクのお薦めは? と訊かれたら、私なら迷わずこのアルバムを推したい。 カラッと晴れた日の青空のような
空気感の中でモンクのおだやかな旋律が流れるこのレコードなら、間違いなく気に入ってもらえると思う。


コメント
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