廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

紛らわしいジャケットだけど

2019年05月12日 | jazz LP (Atlantic)

Sonny Stitt / Stitt Plays Bird  ( 米 Atlantic 1418 )


コルトレーンのレコードも随分安くなったんだなあ、と手に取ってよく見たらソニー・スティットのレコードだった。 紛らわしいジャケットだ。
アルトのワンホーンでパーカー集を作っているというのは何となく知ってはいたけれど、これのことだったんだなと今更ながらに納得した。

聴けば聴く程パーカーには似ておらず、この手の話はもういいんじゃないかと思う。 この逸話がスティットの実像への理解をどれほど邪魔してきたか。
作品数がとにかく多くてとても全部には手が回らないし、プレス枚数も多くて中古も豊富に出回っているから大体がいつも後回しにされる。 本来であれば
日本のコアなジャズマニアが積極的に聴いて評価していくべきなんだろうけど、レコードが簡単に手に入る人というのはどうも有難がられない。

50年代初頭からこの64年の録音に至るまで、スティットという人は基本的には何も変わっていない。 テナーやバリトンも頻繁に吹くけれど、主軸はやはり
アルトで、それが一番魅力的に聴こえる。 快活で明るく、適度なキレとスピード感があり、何でも吹ける。 このアルバムも何のギミックもなく、ただ
ひたすらパーカー・ブルースを吹いている。 テナーと持ち替えしているアルバムが多い中で、このようにアルト1本で通しているものは少なく、そういう
意味では彼の持ち味が一番シンプルに堪能できるとてもいいアルバムだと思う。 ジェイ・マクシャンの "Hootie Blues" なんてシブい選曲もイケてる。

バックの演奏も良く、リチャード・デイヴィスの重たいベース、時折登場するジム・ホールのいつものいぶし銀的ソロが聴けるのも嬉しい。 録音も良くて、
気持ち良く最後まで聴くことができる。 ジャケットで損をしているような気がするけど、きっとこれからもふっと聴きたくなる類いのアルバムだろう。


コメント
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