

Walter Perkins' MJT + Ⅲ ( 米 Vee Jay VJLP - 1013 )
ウォルター・パーキンスと言えば、まずはアーマッド・ジャマル・トリオを思い出すことになるけど、あまり知られていないながらも
この "MJT+Ⅲ" というレギュラー・グループを一時期率いていた。ベースのボブ・クランショウと彼が双頭リーダーとなり、ハロルド・メイバーンの
ピアノ、フランク・ストロージャーのアルト、ウィリー・トーマスのトランペットという2管編成で上質なハードバップを演奏した。
アルバムは4枚残していて、最初のアルバムはメンバーが違っていて演奏が地味だが、2枚目となるこのアルバムからはメンバーが固定されて
管楽器演奏のレベルが格段に跳ね上がる。演奏がしっかりとしていてどれも聴き応えがあるが、音楽的にはこのアルバムが一番出来がいい。
フランク・ストロージャーはリーダー作を作る機会にあまり恵まれなかったせいで過小評価されているが、抜群に上手いアルト奏者で定番の
ビッグ・ネームたちと比べても何も遜色がない人。このグループの演奏でも中核的存在を担っていて、彼の演奏を聴くにはうってつけの内容だ。
コロンビア時代のセロニアス・モンクやキース・ジャレットのスタンダーズのように、アルバムをたくさん残してもマンネリだとか金太郎飴だとか
言われたりすることもあるけれど、それでも音楽家はできるだけたくさんアルバムを残すべきだと思う。アーティストというのは、結局のところ、
作品を通じてでしかその実像を知りようがないからだ。それが満足できるものであっても、そうでなくても、作品があって初めて話がスタートする
のであって、それがなければどうにもならない。
そういう意味ではこのMJT+Ⅲのアルバムはストロージャーを聴くためのものと言っていいけれど、他では聴けないウィリー・トーマスという
なかなかしっかりとした演奏を聴かせるトランペッターを知ることができるという点でもありがたいものだ。ストロージャー同様、楽器がよく
なっており、フレーズもしっかりとしていて、バンド・サウンドを強固なものするのに大きく貢献している。彼らの演奏を聴いていると、どことなく
アート・ファーマーとジジ・グライスのユニットの演奏を思い出す。音楽の傾向は少し似ている。
アルトとトランペットの2管編成というのはパーカー&ガレスピーを起源にして脈々と流れる系譜の1つであるけど、このグループの演奏も
その中にしっかりと足跡を残しているといっていい。このアルバムも名盤の風格はないかもしれないけど、聴けば印象に残るいい出来である。